ロシア日記

~ペルミより愛を込めて~
日本語教師と雪のダローガと足跡

~サンクトペテルブルグ~
雪の上の足跡

朝の光

2012年12月03日 | 日記
 成田を午後1時半の飛行機で経ち、ペルミに着いたのは翌午前5時35分、一番心配だったのは、迎えが来ているかどうかです。ロシアは当然、儀礼、正確さ、効率、約束を重んじる世界でもスーパーエクストリームな位置を占める信用国、日本ではないので、この辺も踏まえ最悪のパターンも予想していなくてはなりません。前日に、もし会えなかった場合のプランBも考えておきましょう、とメールを送ったら、「必ず迎えにいきます。信じてください」という返信が返ってきたました。かくして私の道は信じる道のみ残されたわけです。信じる者は救われる!?
小さなプロペラ機がペルミの飛行場に降り立ち、タラップを出ると、乗客はバスでペルミの小さなエアポートまで運ばれました。飛行機のドアが開いた途端、冷気が舞い込んできました。あーこれがロシアの12月の寒さかぁと肌で感じ、確かに寒いけど、耐えられないということはない、東京の冬用のダウンで大丈夫です。
 東京から無事に運ばれてきたスーツケースを受け取り、ドアをくぐると「サヤ?」という声が聞こえてきました。かくして信じる者は救われたわけです。迎えに来てくれていたのは校長先生のルドミーラ先生です。ロシアの女の人特有のあのふさふさのゴージャスな毛皮を全身にまとっています。「ズゥラゥストビーチェ」本場の挨拶を交わし、飛行場の外へ出たら、辺り一面真っ白な世界が広がっていました。言うまでもなく雪が降り積もっています。
ルドミーラ校長先生付きの車に乗り込みます。
運転手は、イーゴリ。ワオ、イーゴリ!!ロシアの名前の響きって大好き。ロマンチシズムを感じます。けれどイーゴリは例によってニコリともしません。来た来た、全くもって愛想がない、これもロシアの特色です。
車はロシアの真っ暗な夜明けの中を30分ほどひた走り、ルドミーラ校長先生のお家へ到着しました。真四角なそっけない外壁の何棟もの大きな棟が立つ一角です。日本の団地を想像したら一番近いかな、おそらくソビエト時代に大量に建てられた安普請と呼ばれる建物です。壊れそうなエレベーターを昇った先に、ルドミーラ先生の住む部屋があります。大きな表彰されるほどの学校の長の割には、ずいぶんと質素なお家です。家の中へ入る前に、ブーツを脱ぐように言われました。どうやらロシアでは部屋に入る前に、靴を脱いで家へ上がるようです。ブーツについた雪を払い落とすためのようです。日本のような段違いの玄関はなく、靴を脱ぎ、所定の場所へ置くと、そのままスリッパを履き家の中へ入ります。入ってすぐの左脇にトイレとお風呂が別に別に分かれてあり、その先に台所付きの居間があります。せいぜい6畳ぐらいの小さな居間です。その隣の部屋が今夜の私の宿にあてがわれました。昔、子供部屋だったのか木馬模様の淡いブルーの壁紙のこじんまりした部屋です。ルドミーラ先生と旦那様の寝室とちょっとしたリビングルームは玄関の右奥にあります。壁には中国のお皿が飾られ、さすが中国語も取り扱っている学校の校長先生宅だと思いました。
 私はその日、ロシア特有の赤い紅茶をいただきそのままお昼まで寝させてもらいました。1時過ぎに起きるとルドミーラ先生はすでに学校へ行った後で、旦那様が簡単な黒パンにハムとサワークリームの朝食を出してくれました。どうやらここの過程は奥様のルドミーラ先生が外で働き、旦那様が家事全般を受け持っているみたいです。2時にイーゴリが迎えにくるからと言われ、私も今後自分の職場になる学校がどんなところなのかドキドキしながら向かいました。10分ほど走ると、あったあった、『ギムナジウム2』の大きな文字が躍る看板の学校が見えてきました。
中に入ると思ったよりぜんぜん大きい、薄い緑色の壁のとってもきれいな学校です。そのまま校長室に通されしばらく待つように言われました。秘書のナターシャは、丸顔の童顔で、ロシア人にしてはとっても小柄な可愛いひとです。8歳の子供がいるようにはとっても見えません。ペルミ出身ではないのだけど、結婚してここに住むことになったのだと言いました。
キビキビとルドミーラ校長先生が現れ、そのまま2階の日本語教室へ案内されました。6畳もないような縦長の細長い部屋で窓は障子のモチーフ、壁には掛け軸、棚には日本のお人形、折紙で折られた鶴が飾ってあります。机はせいぜい10個、こじんまりとしたとてもいい教室です。ちょうど前任者の先生が授業を行っている最中で、小学生の生徒たちは熱心に聞いている様子でした。私を一目見て、新任の先生だと悟った生徒たちの間から「ジェーボシュカだ」というコソコソ声が聞こえました。「ジューボシュカ」とは、ロシア語で若い女の人という意味です。そりゃあ、新しい先生には興味あるよね、と思い、「明日からの先生です」と紹介されると、さすがに内心ビビりましたが、そこはニコニコ(;´∀`)笑って涼しい顔で切り抜けました。
この日はそうそうと切り上げ、ルドミーラ先生宅へ戻ると、疲れていたのか、夕飯も少量で済ませ、ぐっすり眠りました。明日は記念すべき第一回目の授業です。ジューボシュカはがんばらなくてはなりません。