新潟知事選と補欠選に見る蓮舫民進党のお粗末
JBpress 10月25日(火)6時45分配信
■ 与野党対決の構図に入れなかった民進党
新潟知事選挙では、事前の「接戦」という予想に反して、無所属新人の米山隆一氏が自民、公明推薦候補に6万票以上の差をつけて勝利した。
この選挙は、東電柏崎刈羽原発の再稼働が争点となっていた。米山氏は、泉田前知事の姿勢を継承するとして、再稼働に慎重な態度を表明していた。これが県民多数に受け入れられたということだ。
米山氏を推薦していたのは、共産、自由、社民の3野党である。原発容認の電力総連、連合の顔色を窺う民進党は、推薦できず“自主投票”という中途半端な対応をとらざるを得なかった。選挙終盤になって米山氏が勝ちそうな戦況になって、あわてて蓮舫代表が駆け付け応援演説を行ったが、これでは勝ち馬に乗っただけである。
米山氏の当選を報じるテレビや新聞は、米山氏に「共産、自由、社民推薦」という説明を必ず付けていたが、野党第一党の民進党の名はなかった。情けない話ではないか。
自由党の小沢一郎代表が「勝ちそうになったから応援に行くのは、野党第一党(の党首)として主体性がなさすぎる」「最大野党の民進党は何のために政党を構成しているのか。政権を取る気がないなら、それは国民への背信行為、民主主義を否定する行為だ。そんなのは解散したほうがいい」(10月18日記者会見)と厳しく批判したのも当然であろう。
この選挙は、民進党が推薦せずとも「自公」対「共産、自由、社民」の与野党対決の構図となっていた。この構図の中に入ることができなかったのが蓮舫民進党なのである。
この選挙では自民党も相当に力を入れ、二階幹事長も応援に駆けつけたが、自公陣営もお粗末だった。この陣営が撒いた法定ビラには、「赤旗を県庁に立てさせてもいいのですか?」というのがあった。ところが新潟県の県旗はすでに真っ赤なものだったというのだから笑うしかない。おそらくそれを知らない東京で作ったビラなのであろう。そもそもこんな攻撃の仕方は数十年前に流行ったもので、あまりにも時代錯誤というしかない。
■ 補欠選挙で惨敗、蓮舫氏の二重国籍問題も影響か
10月23日に投票が行われた東京10区と福岡6区の補欠選挙では、民進党は完敗した。
東京10区で小池氏が前回の選挙で得た得票率は50.7%だった。今回、自民党公認の若狭勝氏は60%を超える得票率である。福岡6区では、民主党が候補を立てた前々回の総選挙で鳩山邦夫氏の得票率は42%だった。それが今回、次男の鳩山二郎氏(自民党新人)が獲得したのは67%の得票率であった。
今年の参議院選挙では1人区32選挙区のうち、11選挙区で野党統一候補が当選を果たした(民進党7人、無所属4人)。3年前の参院選では、当時民主党は19の1人区に候補者を立てたが全敗であった。それと比較すれば、11選挙区で野党候補が当選を果たしたことは奇跡的と言っても良いものであった。
なぜ、これほどの善戦をすることができたのか。答えは明瞭だ。野党が共闘し、統一候補を立てたからである。
それにもかかわらず、なぜ今回の補欠選で民進党候補は惨敗したのか。
もちろんそこには、東京10区が小池百合子現都知事の地盤であり、自民党候補がその小池氏を知事選で支えた若狭氏だったということや、福岡6区では鳩山邦夫氏の死去に伴う選挙で、候補者がその子息だったということもある。
だが民進党候補の惨敗ぶりは、それだけでは説明できないものがある。蓮舫氏自身の二重国籍問題も影響したことは間違いないだろう。
蓮舫氏は10月15日、都内の区役所に提出した台湾籍の離脱証明書が受理されなかったとして、戸籍法に基づき「(日本国籍の)選択宣言をした」と語り、戸籍法の義務である「22歳までの国籍選択」を、最近までしてこなかったことを明らかにした。違法状態だったという指摘さえなされている。いずれにしてもこのような重要問題で、説明が二転三転どころか、何度も変わり、いまだにすっきりした説明がなされていないというのは、政党の党首として、国会議員として許されることではない。
■ 野党共同への腰が据わっていない民進党
今回の補欠選挙では、参議院選挙の時ほど野党が一体とはなっていなかった。そもそも民進党は、共産党の推薦を断っていたのである。
そのせいだろう。共産党の志位委員長が東京10区にも、福岡6区にも応援に入り街頭演説を行っているが、そこには蓮舫代表や野田佳彦幹事長の姿はなかった。それどころか候補者の姿すらなかったのである。東京10区の候補には、他のどの野党の推薦もなされていなかった。福岡6区の場合には、社民党の推薦だけがなされていた。
要するに共産党が候補者を降ろしたというだけのことである。志位委員長は、いずれの応援演説でも「野党統一候補」ととってつけたように強調していたが、実態はそんなものではなかった。
普通なら候補者を降ろした政党の党首が応援演説に入るときには、それ相応の扱いというものがあるはずだ。共産党から見れば、無礼千万な話なのである。だが、どんなことがあっても野党統一を続けたい共産党は、怒りをぐっと我慢して民進党に付き合っているということである。
それにしても蓮舫執行部になってから、民進党の野党共同への腰が据わっていない。社民党の又吉征治幹事長が10月18日の記者会見で「野党共闘を積み上げてきた岡田執行部とその枠外にいた人々との思惑の違いがある。依然として共産党が入るのはけしからんという人や、脱原発を主張する候補者はイヤだという組合がある」「そういうはざまで、執行部がグラグラしている」と解説しているが、そういうことだろう。
■ 今後の野党共闘はどうなるのか
安保法制では、野党の共闘が実現した。それが参院選での野党統一候補へとつながっていった。では、来年早々にも予想されている衆院の解散総選挙では、野党共闘はどうなるのか。
行方を決めるカギとなっているのがTPP(環太平洋パートナーシップ協定)である。
民進党の国会での対応を見る限り反対の意向が強いようだが、もともとTPPの交渉が開始されたのは2010年3月からであり、当時は民主党菅直人政権であった。その後を継いだ野田政権も前向きであった。自民党に政権を奪取された2012年12月の総選挙での民主党のマニフェストには、「アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指し、その道筋となっている環太平洋パートナーシップ、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携を同時並行的にすすめ」と書かれている。
これに対して共産党は、はじめからTPPに反対してきた。仮に、民進党がTPP反対を貫けば、安保法制同様に、野党の共闘の機運を大きく高めることになるだろう。
いまのところは「強行採決反対」ということで民共の共闘体制が構築されているが、もし自公が強行採決を回避すれば、TPPは民共共闘のテーマではなくなる可能性もある。ただ民進党がこの問題でも党内の意見が一致していなので、動揺を繰り返すことになるだろう。
これは原発でも同様だ。民進党は、もともと脱原発の立場ではなかった。だが福島第一原発の事故もあって、菅直人氏らが「原発ゼロ」と言い出しただけである。ただ蓮舫氏も福島第一原発を視察した後、「再稼働ありきでは絶対国民の理解は得られない」と語っている。ここに共産党から、国の原発政策の見直しを次期衆院選での共通政策にしようという球も投げられているようである。
いずれにしろ安保法制だけではない共通政策を野党が持つことができるか否かが、今後の野党共闘の帰趨を決めていくことになるだろう。
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