【法廷から】元マラソン女王はなぜ万引を繰り返したのか
2018年4月30日 12時6分
産経新聞
「間違いありません」。
前橋地裁太田支部で4月24日に開かれた初公判に黒いパンツスーツで出廷した元マラソン女王、原裕美子被告(36)=栃木県足利市=は、か細い声で答えた。数々の輝かしい経歴がありながら昨年8月に続いて今年2月、再び万引に走った。昨年の万引で執行猶予付きの有罪判決を受けながら、いったい何が元アスリートを“盗み”に駆り立てたのか。
原被告は群馬県太田市内のスーパーで今年2月、菓子を万引したとして現行犯逮捕され、窃盗の罪に問われた。検察側冒頭陳述によると、原被告は同月9日夜、同市内のスーパーで、いったん買い物かごに入れたキャンディーの袋など3点を、着用していたジャンパーの中に入れてファスナーを閉め、万引した。
検察側によると、原被告は平成26年ごろから摂食障害の治療のため通院生活を送っていた。しかし昨年8月、栃木県足利市内のコンビニエンスストアで化粧水やパン、菓子などを盗んだとして逮捕された。9月に保釈許可が下りてからは千葉県内の病院に入院、12月に退院している。
その後、スーパーなどへ買い物に行く際は両親が万引しないように同行していた。太田市での犯行当日、原被告は「レンタルDVDを返却する」と言って外出しようとし、母親は「DVDだけだよね」と念を押して送り出したという。
公判後、原被告の主任弁護士は原被告が現在も摂食障害治療のため入院していると明かした。再犯の原因として、退院後の環境調整に失敗し、治療がうまくいかなかった可能性についても言及。原被告は犯行時、一度服の中に商品を入れたものの「返すつもりはあった」と話しているという。
原被告は平成12年、宇都宮文星女子高を卒業後、実業団トップの京セラに入り17年、初マラソンの名古屋国際女子マラソンで優勝、彗星(すいせい)のごときデビューで同年の世界陸上ヘルシンキ大会に出場、日本勢最高の6位入賞を果たし、19年の大阪国際女子マラソンでも優勝。同年の世界陸上大阪大会にも出場している。
一方で、チーム加入後、過食と嘔吐(おうと)を繰り返す摂食障害に苦しみ始めた。原被告は前回犯行後の宇都宮地裁足利支部公判で、厳しい体重制限により過食と嘔吐を繰り返すようになったと告白。「食べては吐いてストレスを解消していた」と語っている。
22年には京セラから名伯楽、小出義雄代表率いるユニバーサルエンターテインメント(佐倉アスリート倶楽部)に移籍するが、けがなどに悩み25年に退社、故郷の足利市に戻る。28年10月末に地元の男性と結婚式を挙げたが、入籍せずに破局したという。
太田市での犯行当時、原被告は2万円以上の現金を所持していたといい、金銭的に困窮して万引したとは考えにくい。
クレプトマニア(窃盗症)の鑑定などを手がける精神科医でクレプトマニア医学研究所の福井裕輝所長(48)は、摂食障害と窃盗症は「非常に合併しやすい病気」と指摘する。福井所長によると、いずれも行動制御の障害という点で似通っており、「双方の患者とも善悪の判断はできるが、行動のコントロールができない。実際、併発している患者は多い」と指摘。主任弁護士も、その点は把握している。
いずれにしろ、前回公判で執行猶予を与えられながら再犯に及んだ原被告。今回、厳しい視線にさらされるのは間違いない。
2018年4月30日 12時6分
産経新聞
「間違いありません」。
前橋地裁太田支部で4月24日に開かれた初公判に黒いパンツスーツで出廷した元マラソン女王、原裕美子被告(36)=栃木県足利市=は、か細い声で答えた。数々の輝かしい経歴がありながら昨年8月に続いて今年2月、再び万引に走った。昨年の万引で執行猶予付きの有罪判決を受けながら、いったい何が元アスリートを“盗み”に駆り立てたのか。
原被告は群馬県太田市内のスーパーで今年2月、菓子を万引したとして現行犯逮捕され、窃盗の罪に問われた。検察側冒頭陳述によると、原被告は同月9日夜、同市内のスーパーで、いったん買い物かごに入れたキャンディーの袋など3点を、着用していたジャンパーの中に入れてファスナーを閉め、万引した。
検察側によると、原被告は平成26年ごろから摂食障害の治療のため通院生活を送っていた。しかし昨年8月、栃木県足利市内のコンビニエンスストアで化粧水やパン、菓子などを盗んだとして逮捕された。9月に保釈許可が下りてからは千葉県内の病院に入院、12月に退院している。
その後、スーパーなどへ買い物に行く際は両親が万引しないように同行していた。太田市での犯行当日、原被告は「レンタルDVDを返却する」と言って外出しようとし、母親は「DVDだけだよね」と念を押して送り出したという。
公判後、原被告の主任弁護士は原被告が現在も摂食障害治療のため入院していると明かした。再犯の原因として、退院後の環境調整に失敗し、治療がうまくいかなかった可能性についても言及。原被告は犯行時、一度服の中に商品を入れたものの「返すつもりはあった」と話しているという。
原被告は平成12年、宇都宮文星女子高を卒業後、実業団トップの京セラに入り17年、初マラソンの名古屋国際女子マラソンで優勝、彗星(すいせい)のごときデビューで同年の世界陸上ヘルシンキ大会に出場、日本勢最高の6位入賞を果たし、19年の大阪国際女子マラソンでも優勝。同年の世界陸上大阪大会にも出場している。
一方で、チーム加入後、過食と嘔吐(おうと)を繰り返す摂食障害に苦しみ始めた。原被告は前回犯行後の宇都宮地裁足利支部公判で、厳しい体重制限により過食と嘔吐を繰り返すようになったと告白。「食べては吐いてストレスを解消していた」と語っている。
22年には京セラから名伯楽、小出義雄代表率いるユニバーサルエンターテインメント(佐倉アスリート倶楽部)に移籍するが、けがなどに悩み25年に退社、故郷の足利市に戻る。28年10月末に地元の男性と結婚式を挙げたが、入籍せずに破局したという。
太田市での犯行当時、原被告は2万円以上の現金を所持していたといい、金銭的に困窮して万引したとは考えにくい。
クレプトマニア(窃盗症)の鑑定などを手がける精神科医でクレプトマニア医学研究所の福井裕輝所長(48)は、摂食障害と窃盗症は「非常に合併しやすい病気」と指摘する。福井所長によると、いずれも行動制御の障害という点で似通っており、「双方の患者とも善悪の判断はできるが、行動のコントロールができない。実際、併発している患者は多い」と指摘。主任弁護士も、その点は把握している。
いずれにしろ、前回公判で執行猶予を与えられながら再犯に及んだ原被告。今回、厳しい視線にさらされるのは間違いない。
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