「生理でプール見学の子は校庭10周」指導が女子生徒を壊す 生理にともなう症状と、将来の健康
2018年7月27日 11時0分
現代ビジネス
JECIE主催による、杉並区議を対象とした勉強会会場にてインタビューに答えてくれた塚田
「【悲報】生理でプールに入れない子は炎天下の校庭10周(2km)走るとの事。」という中学生の娘を持つ母親からの書き込みが、SNSで大きな反響を呼んだ。すると、私もそうだった、うちの学校もそうだ、という書き込みであっという間にいっぱいに。
オリンピックのマラソン競技の途中で予期せぬ生理が来てしまい、泣きながら完走した選手の姿を覚えている人もいるかもしれない。そもそも「生理」や「生理痛」についての知識・認識が女性本人もあまりないのが現状である。
中高時代に放置した生理痛が、将来の不妊につながることがあるにもかかわらず……。
生理でプール見学ならランニングが当たり前?
「私の学校も生理痛が酷くてどうしても入れないという子はプールサイドで腹筋背筋体幹トレーニングを1時間休みなしでやらされていました」
「うちの学校もそうでした。しかも体育は1日でも落とすと欠点で、体育が欠点だと絶対留年という謎の制度のため……必死でタンポンを練習しました」
「生理で入れませんと男の先生に伝えたところ“ティッシュ詰めて入れ”と言われて嫌な気持ちになった思い出があります」
等々、ツイッターには、同じような体験をしている人のコメントがあふれた。
「月経が理由でプール授業を休んだ生徒に対し炎天下の屋外を走らせるというのは熱中症の恐れもあり話になりませんね。休む理由には月経血が漏れる不安だけでなく、月経痛が理由の場合もあるので、一律にプールを休んだ子を走らせるというのは、あまりにも指導者側の知識不足です。
学校教育の中で、女子生徒の月経指導、月経中の体育をはじめ、どのように学校生活を行うべきか、という指導はあまり行われていません。私は現在40代ですが、私が中高校生だった時代から月経に対する認識は大きく変わっていません」
こう話すのは、産婦人科医で思春期の月経問題について行政にも働きかけをしている、東京・高円寺にあるアトラスレディースクリニックの塚田訓子医師だ。医学的な側面からいえば、月経中に痛みや不調がなければ、実は水泳をすること自体は問題ないと塚田医師は言う。ちなみに、生理は正しくは「月経」という。
「水中では水圧がかかるので、思った以上に月経血が水中に漏れることはありません。体調が悪くなければ、水泳をすること事態は問題がありません。
ただし、プールに入る前や上がった後の流血に対しては、十分な配慮が必要です。バスタオルなどで対応する学校もあるようですが、腰にタオルを巻いても月経血を他の人に見られてしまう可能性もあり、思春期の女の子には精神的ショックが大きすぎますよね。プール授業には月経血への対処、月経痛への配慮が必要であり、個々の体調で判断するのが理想ですが、学校現場では難しいのが現実ですね」
JECIE主催による、杉並区議を対象とした勉強会会場にてインタビューに答えてくれた塚田訓子医師。忙しい外来の合間をぬって学校や自治体で講演会をおこなっている
80%の女生徒が生理中に不調を感じていた
NPO法人日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)は、2012年に産婦人科医を中心として立ち上げられた月経随伴症状・関連疾患の情報ステーションだ。2016年には、千葉県内の中学・高校で、「月経中、勉強や運動に影響する症状はありますか?」という調査を行った。その結果、なんと約80%の生徒が月経に随伴する症状(生理痛、過多月経、PMS等)で勉強や運動に悪影響を及ぼしていることがわかった。
単位(%)NPO法人日本子宮内膜症啓発会議が2016年に実施した、千葉県での中高女子生徒への調査をもとに編集部にて作成
拡大画像表示
また、月経痛を抱える女生徒の43%が我慢していると答え、鎮痛剤などの使用で我慢していると答えた生徒は35%、15%は勉強・体育がつらいと答えているにも関わらず、月経に関して相談する相手はほとんどいないという結果だった。女子中高生の生理事情は、大人が考える以上に過酷なのだ。
不安定な時期に2カ月出血する場合も
女性の卵巣からはエストロゲンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが放出され、毎月妊娠のための準備を繰り返している。エストロゲンは子宮の中の内膜を厚くして、受精卵を受けとめる準備をする。その後、卵巣から排卵が起きると、妊娠を維持するために必要な黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜の状態を整えていく。妊娠しない場合は、この内膜が不要になるため、黄体ホルモン分泌が低下し、子宮内膜が剥がれ落ち体外に排出されるのだ。
これが月経、通称「生理」で、女性は12歳前後から妊娠しない限り53歳前後までこのホルモン変動と子宮内膜を作っては剥ぎ落とす、いわゆる生理が毎月繰り返されるのだ。
「今の子どもは、栄養状態がいいので、昔に比べると初経年齢も早くなっています。初経を迎えてしばらくはホルモン分泌が不安定で、月経も安定しません。たまにしか来ない子もいれば、2か月間ずっと月経が止まらず出血が続く子もいます。つまり、こんな不安定な状態で体育も含めて授業を受けているのです。
本来はつらい月経のときには、体を休めるべきですし、それよりもまず医師に相談してほしいのですが、月経の知識を学ぶ機会がないので、本人も“つらいけどこんなもんなのかな、仕方ないか”と我慢してしまう。さらに、教師も知識がないので、学校プログラムでも知らず知らずに無理させてしまう環境が発生してしまうのです」(塚田医師)。
月経痛を放置すると…
しかも、この女生徒の生理問題、“つらいけどこんなもんなのかな、仕方ないか”と我慢が定番化すると疾患へのリスクも高まると塚田医師は指摘する。
「私のクリニックにも、月経中、どうしようもない激痛で助けを求めに来る女性たちがいます。子宮の病気は色々ありますが、増加傾向にあるのが、“子宮内膜症”という疾患です。この子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にある内膜組織が子宮の内部ではなく、卵巣や腹部の他の部分に飛んで、月経のたびに増殖してしまう。放置すると炎症や周辺組織と癒着などを起こし、痛みが発生します。
症状によっては、手術を行う場合も。卵巣内で子宮内膜が増殖・出血してしまう卵巣チョコレート嚢胞は、年齢や嚢胞の大きさによってがん化のリスクが上昇する、というデータもあるのです。また、不妊症の人の50%は、子宮内膜症があると言われています」
身体を丸めないといられないくらいの月経痛経験者は、かなり多いのではないだろうか。月経痛のみならず、PMSによってイライラに苦しめられたり、だるかったりと様々な症状がある。Photo by iStock
子宮内膜症の増加原因として考えられるのは、現代女性のライフスタイルと月経、つまり女性特有のホルモンに対する低い理解度にあるという。
欧米では10代からかかりつけ婦人科が
「戦前には子宮内膜症はあまりポピュラーな疾患ではなかったと言われています。子宮内膜は、妊娠をしている間は増殖しません。昔は妊娠回数が多く月経回数も少なかったのですが、今は初経年齢が早く、晩産少産のため昔と比べると約4.5倍もの回数で月経を繰り返しています。月経回数が多くなったことが、子宮内膜症組織が増殖しやすくなっている原因と考えられています。
また、痛みがあっても仕方がないか、と知識不足から月経中に無理をする習慣・無理させる環境、早期に婦人科を受診しない行動も子宮内膜症の患者を増加させる土壌を作っています。ひどい月経痛がある人は、2.6倍も子宮内膜症のリスクが上がることが報告されています。10代でも子宮内膜症にかかる人はいます」(塚田医師)
塚田医師のクリニックで多いのが、10代のころからずっと月経痛を我慢し、30代になって結婚。妊娠を希望するがなかなか出来ないと来院するケース。診察するとひどい子宮内膜症が発覚することが多いという。
「30代後半になると、残念ながら妊娠できる可能性はかなり低下します。だからこそ、私は中高生に学校でも家庭でも、きちんと月経教育をしてほしいと思うのです。10代の頃にひどい月経痛は無理をしてはいけないんだ、痛みがひどいときには病院に行くべきなんだと正しい知識を知っていれば、医師に相談しながらピルを内服するなど、早期治療ができます。明確な治療法があるにもかかわらず、10代の女性が産婦人科を受診することに抵抗がある人が多いのです。もちろん、早期治療ができれば妊娠できる可能性も高くなります」
ちなみに欧米では初潮を迎えた頃からかかりつけの婦人科に行っている10代が半数以上いると報じられている。性交渉をする前から、婦人科というものが身近な存在なのだ。「婦人科=大人の女性のための病院」では決してなく、むしろ気軽に相談に行ける存在でなければならないのではないだろうか。
月経教育&学校の月経フォローが必須
塚田医師は、保護者をターゲットに月経の問題点や子宮内膜症のリスクなどについてたびたび勉強会を開いている。また、先に出たNPO法人子宮内膜症啓発会議は、思春期における正しい月経教育を推進するため、スポーツ庁からの委託事業等にて調査や調査に基づく学校向け(教師・生徒)の小冊子などの配布なども行っているという。
しかし、なかなか壁は厚い。熱中症対策のエアコン設備でさえ、耐震対策の後で二の次、三の次とされていたことを考えると、月経教育に危機感を持っていない教育現場では、まだまだ時間がかかりそうだ。
「理想は、学校における授業のプログラムとして、月経の知識を子どもたちが思春期のうちに学ぶ機会を設けてもらうことです。私が思春期の頃は、女子だけが月経の対処について学ぶ授業がありましたが、月経疾患については何も教わりませんでした。現在も、教科書には月経のしくみなど書かれていますが、月経=女性特有ホルモンに起因する病気、更年期障害など生涯にわたる女性の疾病の事は教科書に書かれていないため、教えるところ相談するところがないのです。
自分の体のことであり、妊娠出産にもかかわることなのに、その部分が無視されているのが現状です。月経を含む生殖に関する知識を、海外ではサイエンスの授業の中で教えています。学校教育として、月経を教えることは全く恥ずかしいことではありません。
一部の地域では、婦人科医師が学校保健医として活躍していますが、それはレアケースです。この現状を知って、もっと声を上げてほしいですね。それが、子供たちの未来を守ることになるのですから」(塚田医師)
「生理とプールの問題」は、ツイートをきっかけに投げかけられたひとつのトピックだが、ここには大きな問題をはらんでいる。教師も生徒もそして保護者も、生理や性についての正しい知識を学び、10代から自分の身体を大切にできる環境を作ることは、大切な少子化対策の一環とも言えるのではないだろうか。
2018年7月27日 11時0分
現代ビジネス
JECIE主催による、杉並区議を対象とした勉強会会場にてインタビューに答えてくれた塚田
「【悲報】生理でプールに入れない子は炎天下の校庭10周(2km)走るとの事。」という中学生の娘を持つ母親からの書き込みが、SNSで大きな反響を呼んだ。すると、私もそうだった、うちの学校もそうだ、という書き込みであっという間にいっぱいに。
オリンピックのマラソン競技の途中で予期せぬ生理が来てしまい、泣きながら完走した選手の姿を覚えている人もいるかもしれない。そもそも「生理」や「生理痛」についての知識・認識が女性本人もあまりないのが現状である。
中高時代に放置した生理痛が、将来の不妊につながることがあるにもかかわらず……。
生理でプール見学ならランニングが当たり前?
「私の学校も生理痛が酷くてどうしても入れないという子はプールサイドで腹筋背筋体幹トレーニングを1時間休みなしでやらされていました」
「うちの学校もそうでした。しかも体育は1日でも落とすと欠点で、体育が欠点だと絶対留年という謎の制度のため……必死でタンポンを練習しました」
「生理で入れませんと男の先生に伝えたところ“ティッシュ詰めて入れ”と言われて嫌な気持ちになった思い出があります」
等々、ツイッターには、同じような体験をしている人のコメントがあふれた。
「月経が理由でプール授業を休んだ生徒に対し炎天下の屋外を走らせるというのは熱中症の恐れもあり話になりませんね。休む理由には月経血が漏れる不安だけでなく、月経痛が理由の場合もあるので、一律にプールを休んだ子を走らせるというのは、あまりにも指導者側の知識不足です。
学校教育の中で、女子生徒の月経指導、月経中の体育をはじめ、どのように学校生活を行うべきか、という指導はあまり行われていません。私は現在40代ですが、私が中高校生だった時代から月経に対する認識は大きく変わっていません」
こう話すのは、産婦人科医で思春期の月経問題について行政にも働きかけをしている、東京・高円寺にあるアトラスレディースクリニックの塚田訓子医師だ。医学的な側面からいえば、月経中に痛みや不調がなければ、実は水泳をすること自体は問題ないと塚田医師は言う。ちなみに、生理は正しくは「月経」という。
「水中では水圧がかかるので、思った以上に月経血が水中に漏れることはありません。体調が悪くなければ、水泳をすること事態は問題がありません。
ただし、プールに入る前や上がった後の流血に対しては、十分な配慮が必要です。バスタオルなどで対応する学校もあるようですが、腰にタオルを巻いても月経血を他の人に見られてしまう可能性もあり、思春期の女の子には精神的ショックが大きすぎますよね。プール授業には月経血への対処、月経痛への配慮が必要であり、個々の体調で判断するのが理想ですが、学校現場では難しいのが現実ですね」
JECIE主催による、杉並区議を対象とした勉強会会場にてインタビューに答えてくれた塚田訓子医師。忙しい外来の合間をぬって学校や自治体で講演会をおこなっている
80%の女生徒が生理中に不調を感じていた
NPO法人日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)は、2012年に産婦人科医を中心として立ち上げられた月経随伴症状・関連疾患の情報ステーションだ。2016年には、千葉県内の中学・高校で、「月経中、勉強や運動に影響する症状はありますか?」という調査を行った。その結果、なんと約80%の生徒が月経に随伴する症状(生理痛、過多月経、PMS等)で勉強や運動に悪影響を及ぼしていることがわかった。
単位(%)NPO法人日本子宮内膜症啓発会議が2016年に実施した、千葉県での中高女子生徒への調査をもとに編集部にて作成
拡大画像表示
また、月経痛を抱える女生徒の43%が我慢していると答え、鎮痛剤などの使用で我慢していると答えた生徒は35%、15%は勉強・体育がつらいと答えているにも関わらず、月経に関して相談する相手はほとんどいないという結果だった。女子中高生の生理事情は、大人が考える以上に過酷なのだ。
不安定な時期に2カ月出血する場合も
女性の卵巣からはエストロゲンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが放出され、毎月妊娠のための準備を繰り返している。エストロゲンは子宮の中の内膜を厚くして、受精卵を受けとめる準備をする。その後、卵巣から排卵が起きると、妊娠を維持するために必要な黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜の状態を整えていく。妊娠しない場合は、この内膜が不要になるため、黄体ホルモン分泌が低下し、子宮内膜が剥がれ落ち体外に排出されるのだ。
これが月経、通称「生理」で、女性は12歳前後から妊娠しない限り53歳前後までこのホルモン変動と子宮内膜を作っては剥ぎ落とす、いわゆる生理が毎月繰り返されるのだ。
「今の子どもは、栄養状態がいいので、昔に比べると初経年齢も早くなっています。初経を迎えてしばらくはホルモン分泌が不安定で、月経も安定しません。たまにしか来ない子もいれば、2か月間ずっと月経が止まらず出血が続く子もいます。つまり、こんな不安定な状態で体育も含めて授業を受けているのです。
本来はつらい月経のときには、体を休めるべきですし、それよりもまず医師に相談してほしいのですが、月経の知識を学ぶ機会がないので、本人も“つらいけどこんなもんなのかな、仕方ないか”と我慢してしまう。さらに、教師も知識がないので、学校プログラムでも知らず知らずに無理させてしまう環境が発生してしまうのです」(塚田医師)。
月経痛を放置すると…
しかも、この女生徒の生理問題、“つらいけどこんなもんなのかな、仕方ないか”と我慢が定番化すると疾患へのリスクも高まると塚田医師は指摘する。
「私のクリニックにも、月経中、どうしようもない激痛で助けを求めに来る女性たちがいます。子宮の病気は色々ありますが、増加傾向にあるのが、“子宮内膜症”という疾患です。この子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にある内膜組織が子宮の内部ではなく、卵巣や腹部の他の部分に飛んで、月経のたびに増殖してしまう。放置すると炎症や周辺組織と癒着などを起こし、痛みが発生します。
症状によっては、手術を行う場合も。卵巣内で子宮内膜が増殖・出血してしまう卵巣チョコレート嚢胞は、年齢や嚢胞の大きさによってがん化のリスクが上昇する、というデータもあるのです。また、不妊症の人の50%は、子宮内膜症があると言われています」
身体を丸めないといられないくらいの月経痛経験者は、かなり多いのではないだろうか。月経痛のみならず、PMSによってイライラに苦しめられたり、だるかったりと様々な症状がある。Photo by iStock
子宮内膜症の増加原因として考えられるのは、現代女性のライフスタイルと月経、つまり女性特有のホルモンに対する低い理解度にあるという。
欧米では10代からかかりつけ婦人科が
「戦前には子宮内膜症はあまりポピュラーな疾患ではなかったと言われています。子宮内膜は、妊娠をしている間は増殖しません。昔は妊娠回数が多く月経回数も少なかったのですが、今は初経年齢が早く、晩産少産のため昔と比べると約4.5倍もの回数で月経を繰り返しています。月経回数が多くなったことが、子宮内膜症組織が増殖しやすくなっている原因と考えられています。
また、痛みがあっても仕方がないか、と知識不足から月経中に無理をする習慣・無理させる環境、早期に婦人科を受診しない行動も子宮内膜症の患者を増加させる土壌を作っています。ひどい月経痛がある人は、2.6倍も子宮内膜症のリスクが上がることが報告されています。10代でも子宮内膜症にかかる人はいます」(塚田医師)
塚田医師のクリニックで多いのが、10代のころからずっと月経痛を我慢し、30代になって結婚。妊娠を希望するがなかなか出来ないと来院するケース。診察するとひどい子宮内膜症が発覚することが多いという。
「30代後半になると、残念ながら妊娠できる可能性はかなり低下します。だからこそ、私は中高生に学校でも家庭でも、きちんと月経教育をしてほしいと思うのです。10代の頃にひどい月経痛は無理をしてはいけないんだ、痛みがひどいときには病院に行くべきなんだと正しい知識を知っていれば、医師に相談しながらピルを内服するなど、早期治療ができます。明確な治療法があるにもかかわらず、10代の女性が産婦人科を受診することに抵抗がある人が多いのです。もちろん、早期治療ができれば妊娠できる可能性も高くなります」
ちなみに欧米では初潮を迎えた頃からかかりつけの婦人科に行っている10代が半数以上いると報じられている。性交渉をする前から、婦人科というものが身近な存在なのだ。「婦人科=大人の女性のための病院」では決してなく、むしろ気軽に相談に行ける存在でなければならないのではないだろうか。
月経教育&学校の月経フォローが必須
塚田医師は、保護者をターゲットに月経の問題点や子宮内膜症のリスクなどについてたびたび勉強会を開いている。また、先に出たNPO法人子宮内膜症啓発会議は、思春期における正しい月経教育を推進するため、スポーツ庁からの委託事業等にて調査や調査に基づく学校向け(教師・生徒)の小冊子などの配布なども行っているという。
しかし、なかなか壁は厚い。熱中症対策のエアコン設備でさえ、耐震対策の後で二の次、三の次とされていたことを考えると、月経教育に危機感を持っていない教育現場では、まだまだ時間がかかりそうだ。
「理想は、学校における授業のプログラムとして、月経の知識を子どもたちが思春期のうちに学ぶ機会を設けてもらうことです。私が思春期の頃は、女子だけが月経の対処について学ぶ授業がありましたが、月経疾患については何も教わりませんでした。現在も、教科書には月経のしくみなど書かれていますが、月経=女性特有ホルモンに起因する病気、更年期障害など生涯にわたる女性の疾病の事は教科書に書かれていないため、教えるところ相談するところがないのです。
自分の体のことであり、妊娠出産にもかかわることなのに、その部分が無視されているのが現状です。月経を含む生殖に関する知識を、海外ではサイエンスの授業の中で教えています。学校教育として、月経を教えることは全く恥ずかしいことではありません。
一部の地域では、婦人科医師が学校保健医として活躍していますが、それはレアケースです。この現状を知って、もっと声を上げてほしいですね。それが、子供たちの未来を守ることになるのですから」(塚田医師)
「生理とプールの問題」は、ツイートをきっかけに投げかけられたひとつのトピックだが、ここには大きな問題をはらんでいる。教師も生徒もそして保護者も、生理や性についての正しい知識を学び、10代から自分の身体を大切にできる環境を作ることは、大切な少子化対策の一環とも言えるのではないだろうか。
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