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「韓国人になりたい」日本男児(ナムオル)いつの間にか増殖中の怪 K-POPへの偏愛とストイックな生態

2018-06-22 14:10:49 | ニュースまとめ・総合
「韓国人になりたい」日本男児(ナムオル)いつの間にか増殖中の怪 K-POPへの偏愛とストイックな生態



2018年6月22日 12時0分

現代ビジネス

K-POPアイドルに「寄せる」男子たち

2枚の写真を見比べてみていただきたい。1枚目は、ある日本の青年が自身のインスタグラムに載せたものだ。明るい色の髪、力強い目線を強調したメイク。コメントには「ゆんぎメイク練習中なり」。ゆんぎとは、K-POPアイドルグループ・防弾少年団のメンバー、SUGAの本名だ。確かに、SUGAの写真(2枚目)を彷彿とさせる。

大島賢治くん。神奈川県出身。シュガに寄せる時は髪を短くするのがポイント

防弾少年団・SUGA(防弾少年団公式インスタグラムより)

最近、韓国好き女子の間で、彼らは韓国語の「ナム(男)」と「オルチャン(顔がきれい)」の省略形を合わせ、「ナムオル」と呼ばれている。(ちなみに本場韓国では「ナムオル」という言葉は存在せず、日本オリジナルの造語)。

『インスタ女子の間で「#韓国人になりたい」流行中の意外と深イイ理由』という記事を書いてから半年。今、原宿や表参道などのオシャレスポットには韓国人っぽいメイクや服装の女の子が普通に闊歩し、コリアンタウン・新大久保は駅に入場規制がかかるほどの活気を帯びている。

そんな中、新たな異変を感じたのは、今年2月のことだった。

「K-POPアイドルグループのメンバーがこんなところに!?」

東京・渋谷マルイの前を歩いていたとき、ひときわ目を引く男子2人組とすれ違った。年齢は10代後半から20代前半ぐらい。明るい色に染めたマッシュルームカットの髪、アイシャドウや赤いティントでメイクした顔、黒いロングコートにスキニーパンツ。

来日したK-POPアイドルが、東京でオフの時間に行きたい場所の筆頭として挙げるのが渋谷、原宿界隈だ。「もしや、K-POPグループのメンバー!?」と、こっそりマジマジと眺めるも……該当者ナシ。どうやら一般人のようだった。

ふと見渡すと、街にちらほら点在する「韓国人になりたい」風の男子たち。

なぜ今、ナムオルが増えているのだろうか。そして、彼らが目指しているものとは? 彼らに話を聞いてみた。

インスタフォロワー19万人超えのナムオル

「防弾、来ましたよっ!」 

豊洲の海が見えるカフェの入り口に彼が姿を現した時、同席していた編集者に思わず小声でささやいた。大きめの白いフード付きパーカー。深めに被った黒いキャップとマスクの間から覗くやや切れ長の目が、人気K-POPアイドルグループ・防弾少年団のVにそっくりだ。

冒頭の写真の大島賢治くん、21歳。フォロワー数19万人超を擁する、人気インスタグラマーだ。黒いマスクをつけた斜め45度の写真は、33,779いいね!を獲得。インスタグラムの投稿は、写真によって防弾少年団の「V」と「SUGA」という2人のメンバーに酷似している。つまり、角度やファッション次第で、異なる顔を見せるヤヌス的魅力の持ち主なのだ。

防弾少年団。右端がV、右から3番目がSUGA。photo by gettyimages

インスタは、日によって「Vっぽいファッション」と「SUGAっぽいファッション」を使い分けて載せると言う。

「きれいになりたいときはV、クールな気分の時はSUGA。自分の中の彼らに対する愛情の分量によって変わります。寝る前にパッと決めて、次の日からやり始める。フォロワーさんからは、『目元はVだけど、顔全体の雰囲気はSUGAに似てるね』って言われます」

ナムオルファッションを意識したのは、去年の6月ぐらいのことだった。

「友達が防弾少年団にハマっていたので、どんなグループか気になって『血、汗、涙』とかの曲を聴き始めたら、どんどんのめり込んで。僕が好きなメンバーは、Vなんですけど。あまりめちゃイケメンじゃなくて、美しい系のイケメンっていうか。直感でこの人だ、って好きになりました」。

飲食店で働く賢治くんは、ある日お客さんに「Vに似てるね!」と言われたことをきっかけに「じゃあ、Vに寄せてみようかな」と思い始める。「子供の頃は仮面ライダーが好きで変身ベルトを集めたり、高校時代はUVERworldのボーカルTAKUYAに憧れて同じ服を買ったり。熱中するとマネする癖がある」という賢治くんは、ネット上でVの画像を探し集めて研究するようになった。

曰く、ナムオルファッションのポイントは、「マッシュな髪型、メイク、スキニーパンツ」。

初めてファンデーションを買ったのは、銀座三越の化粧品売り場。化粧品ブランドM・A・Cのカウンターで美容部員にイロハを教えてもらったという。

「めちゃくちゃ勇気いりました。ましてや、銀座三越だったし(笑)。銀座で遊んでいて、周りに化粧好きな人がいて。『おまえ、韓国好きだったら、化粧の一つやふたつやったほうがいいんじゃない?』って言われて、その場のノリで買いました」

今では、「SUGAをやるときは目元を強く。Vの時はアイシャドーを軽く塗るだけ」と、使い分けもお手のものだ。

服装は、「Vに寄せる日」は、ダボっとした白や柄シャツをチョイス。V本人の写真がネットに上がると、身に着けている服のブランドを調べてリストアップするファンサイトをチェックし、同じものを買う。

「Vといえば、もうGUCCI。バンダナとか、同じものを買ってつけてインスタに載せています」

ちなみに、取材の日の賢治くんのバッグも小ぶりのGUCCIだった。

この日はV風の賢治くん。ロングタイプのピアスはVとお揃い

防弾少年団・V(防弾少年団公式インスタグラムより)

昨年6月、こうした「防弾そっくり写真」をインスタに上げてみた。すると、それまで2,000人ほどだったフォロワーが、ある朝目を覚ますと突然1万5000人にハネ上がった。コメント欄には、「V、あなたなの?」「双子?」「VとSUGAにそっくり」など、韓国語、英語、スペイン語、アラビア語、タイ語など世界中からのメッセージが書き込まれた。

「1スクロールするだけで1000人ぐらい増える。いたずらされてるんじゃない?ってぐらい。面白かったですね」

フォロワーが増加するにつれ、防弾少年団のライブ会場で女の子に「一緒に写メとってください」と声をかけられ、さながらアイドルの写真会のようになることも増えたという。

「ライブには、完全にVと同じ格好で行くんです。心を整えるため。さあいくぞ!って、戦闘服で武装するみたいに」

人気が高じてオフ会開催

「会いたいです!!」

そんなフォロワーの声が増えたため、賢治くんは今年4月には、SNSで知り合った「防弾少年団そっくり仲間」と2人でオフ会を開いた。日曜午後の代々木公園に約100人のフォロワーが集まり、4時間に渡って写真を撮ったり、サインをしたり。じゃんけん大会をして私物をプレゼントするなど、まるで芸能人のファンミーティングのようだ。

オフ会の相棒を務めたインスタグラマーが、賢治くんが「彼はもう完全にVです!」と激推しするKeiくん(19歳)だ。インタビューに現れたKeiくん(インスタフォロワー約3万人)は、舌をぺろっと出したり、眉を少し上げたり、些細なしぐさまでよく似ている。ただ、実際のVが骨太であるのに対し、Keiくんは細身でジェンダーレスな雰囲気だ。

Keiくん。埼玉県出身。日本人とフィリピン人のハーフで、中国人とスペイン人の血も混じるエキゾチックな美少年。「Vに寄せてるわけでも目指してるわけでもない」が、憧れているうちにいつの間にか似ていると言われるようになっていた

「Vの顔立ちの整い具合にビビッと来ました。男に一目ぼれするなんて、自分でも不思議。結構子供っぽいところもあるのに、ダンスするときはカッコいい。本当、尊敬します」

と、畏怖の念さえも口にするKeiくん。憧れが募るとともに、自然とVのファッションアイテムをサイトでチェックするようになったという。ただ、コスメを買うのはドン・キホーテや韓国のエチュードハウスといったプチプラアイテム、洋服は似ているものをZARAなどファストファッションでそろえる庶民派だ。

Twitterは今年2月、インスタグラムは3月末に始めたばかり。だが、「顔を出した途端、フォロワーが1日500人~1000人ぐらい増えたり、いいね!が1000ついたりするようになった」

Keiくんが母親や姉のコスメをこっそり使って化粧をしたのは高2の時。ネットの動画で学んだ

防弾少年団・V(防弾少年団公式インスタグラムより)

フォロワーが増えるといいことがあるんですか?とたずねると、「ありますね。案件が来る」と即答。案件とは、企業が洋服やアクセサリーなどの商品をインスタグラマーに提供し、インスタグラマーがそれを身につけた写真を撮影して、「#PR」というタグとともに自分のページに載せること。いわゆる、「スポンサード投稿」だ。

無償でもらった商品、またはフォロワー1人あたり1~2円と言われる広告費を手にすることができる。

「Vと同じモデルのアクセサリーを販売している会社とかからアプローチが来ます。ピアスをもらった時はうれしかったですね。ただ、プロテインのサプリとか、自分のスタイルに合わないものは気に留めないようにしています」

ナムオルに来る案件として多いのが、脱毛サロンのPRだ。K-POPアイドルの顔は、ツルツルの毛穴レス。Keiくんも「脱毛したい。K-POP好きな男子はみんな思ってます。顔のムダ毛が嫌。おいおいやってみたいと思います」と、関心を示す。

ただ、フォロワーが増えると、不便なこともある。

「住んでいるところを明かしてないのに、近所のショッピングセンターで、『えー! Keiくんですか⁉』とバレたことがあって。地元ではパーカーのフードかぶって、すっぴんにマスクして。全然違う格好をしています」

物心ついた頃からK-POP漬けだった

一方、インスタグラムを始めた理由について、「腕時計がほしかったから」と公言するのが、熊谷恵くん(18歳)だ。「案件」の中でもひときわステイタスが高いのが、腕時計だ。もらえるのは、フォロワー数が一定数を超えたインスタグラマーのみ。さながら、「腕時計がもらえてこそ一人前のインフルエンサーの仲間入り」という認識なのだ。

恵くんは、11人組ボーイズグループWanna Oneの台湾人メンバー、ライ・グァンリン似で、現在フォロワー数2.4万人。

Wanna One。左端がライ・グァンリン。photo by gettyimages

「幼いころから母親が東方神起のファンで、家でも1日中韓国のテレビ番組が流れてて、K-POPの英才教育を受けた」と笑顔で話す恵くんは、高校の時から「クラスで2人だけ」という韓国系ファッション派だった。

ライ・グァンリンに自ら寄せているわけではなく、「取り入れたくなるのはBIGBANGのG-DRAGONのファッション」。好きなブランドはMOSCHINOやGIVENCHYだ。

熊谷恵くん。東京都出身。今春高校を卒業したばかり

Wanna Oneのライ・グァンリン(Wanna One公式インスタグラムより)

「コーディネートを見せたくて」始めたインスタグラムだったが、「周りのインスタグラマーが皆腕時計を持っていて、じゃあ、本気でやるわ、って。腕時計もらったらインスタ辞めようって思ったんだけど、その2日後ぐらいには、バーッとフォローが増えて。インスタ始めて2ヵ月ぐらいでフォロワー1万人ぐらいになりました」

恵くんによると、フォロワーが1万人を超えると、企業から様々な案件が来るようになるという。

旅行したタイの街角で、「案件」の水着をさりげなく着こなす恵くん

「うれしかったのは、最近もらったカルバンクラインのパンツ。水着だけど、普段着風にカッコよく着てるの写真をインスタに載せようかな、と」
カリスマナムオルまさかの引退宣言

K-POPアイドルに似せた写真を載せるだけであっという間に世界中から万単位のフォロワーが飛びつき、企業も彼らの及ぼす無限の影響力にあやかろうとするナムオルたち。それは、巷にあふれる「韓国人になりたい」女子に比べ、圧倒的な希少価値があるがゆえのことだろう。

「韓国人になりたい」女子が、韓国発のファッションを流行として自然に取り入れているのに対し、憧れのK-POPアイドルのスタイルやメイクに忠実に寄せてくるナムオルたちのオシャレは、まるでアニメのキャラになりきるコスプレイヤーのようにストイック。また、SNSで仲間を集ってオフ会を開いたりする様子は、往年のパソコン通信のオフ会やコスプレ撮影会にも重なって見える。

彼らと話していると、防弾少年団やWanna Oneのメンバーが目の前にいるような不思議な錯覚にさえ陥る。ナムオルたちはSNS上のみならず、リアルでもモテるのだろうか。

恵くんは学校ではすっぴんで、インスタグラムで知り合ったナムオル仲間と会う時だけ化粧をする

K-POP好きで、彼らのインスタをフォローしている女性(22)の評価は、手厳しい。

「ちょっと似てるだけで、勘違いしてない? 私から見たら、全員残念。そんなに興味ない。ハイブランドとか似合わないし、世も末。誰かのマネをするだけで自分を持ってないのはダメ」

一方、自身の姿をSNSにアップし多くのフォロワーを得たナムオルたちが、リアルライフの目標として語るのは、「モテ」ではなく、「新たな世界での可能性」だった。

「インスタやって思ったのは、(SNSの)影響力ってすごいな、って。経営学を学んで、就職するならSNS系の会社に入りたいと思っています。営業をやりたい」(恵くん)

「僕のインスタを楽しみにしてくれる人の存在が嬉しい」(Keiくん)

「インスタを始めてから色々な方から連絡を頂いたり、自分が好きなことを共有できる友達がたくさん増えたり、素敵な方々との繋がりが増えたことが、自分の中で大いに変わったことです。毎日が楽しくて、充実した日々を送れることがとても幸せです」(Keiくん)

冒頭に登場したフォロワー19万人超の賢治くんは、この1年を振り返ってこう語る。

「めちゃくちゃ人生変わりましたね。内面的な部分から言うと、かなり自信がついた。前は自分の顔も体の細さも嫌いだった。勉強もスポーツも特に取り柄がなくて、高校も途中から通信制に転校して、その後進んだ美容学校もやめて。目標もなく、焦り、悩んでいた。でも防弾を好きになることで、自分を必要としてくれる人がこんなに増えたのが、一番うれしいですね」

賢治くんは、このインタビューの直後、韓国・ソウルに渡った。インスタグラムがきっかけで芸能事務所から声がかかり、モデルとしての道を歩み始めたのだ。

今後について尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「最初、地元の友達からは化粧とかしてバカにされる勢いだったけど、今では『お前、すげーよ』と言ってもらえるようになった」と賢治くん

「実は、もう防弾少年団のマネはやめようと思っています。Vの戦闘服を脱いで賢治のままで勝負して、今度は自分が誰かにマネされるような人になれれば、と。mixiみたいにインスタも遅かれ早かれ終わる時代が来る。だから今のうちに勉強させてもらって、インスタがなくなっても、やっていけるようにしたいんです」

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