酎ハイがぶ飲みで取り締まり 勤務中にも酒を買い足した男性巡査の末路
2014年11月2日 17時3分
産経新聞
飲酒後に交通取り締まり現場に公用バイクで向かい、業務に当たった埼玉県警所沢署の若手署員が10月10日、県警に道交法違反(酒気帯び運転)容疑で書類送検された。
「仕事の悩み」から出勤途中に酒を飲み始め、約2カ月後には勤務中にも手を出すまでにエスカレート。「警察の正義」を置き去りにした暴挙ともいえるこの事態を、専門家は「警察の退廃」と評した。事件当日、500ミリリットル入りの缶酎ハイ6本を空けた“異常な勤務”の実態とは-。(さいたま総局 佐藤祐介)
■日常の“飲酒”通勤
8月4日、宿舎の自室で晩酌をしていた所沢署地域課の男性巡査(29)=肩書は当時、懲戒免職=は、深夜になっても酒を飲み続けていた。翌日に勤務を控え、寝ようと思えば思うほど、眠気が遠のいていったからだった。
やっとのことで眠りについたのは5日午前3時。深酒だった。
短時間の睡眠を経て、二日酔いの状態で宿舎を出て歩いて署に向かった。途中で立ち寄ったコンビニエンスストアで朝食にサンドイッチを選んだ。次に向かった店内のドリンクコーナーで手に取ったのは、3本の缶酎ハイだった。
店を出ると、プルトップを開け、口に含んだ。署に着くまでに、1本を飲み終えた。これが、男性巡査の最近の通勤風景だった。
署に着いて、夕方まで勤務を続けた男性巡査は、署2階のトイレに入って残りの缶酎ハイ2本を飲み干した。そして、引き続き勤務のため、公用バイクで所沢駅前交番に向かった。
交番に到着した後、食事を取るための休憩では、制服の上に私服の上着を羽織り、装備品や手錠を隠して外出。缶酎ハイを買い足して交番に戻り、トイレに隠れ、1本余を飲んだという。
■ハイテンションで取り締まり…「クロ」認定
夜に予定されていた所沢市内の交通取り締まり現場まで、約7キロの道のりをバイクで移動し、同僚署員らと合流した。さらに現場でも缶酎ハイ1本を飲み干していた。
男性巡査は酒気帯び状態のまま、現場でスピード違反切符や、無灯火のまま走行していた自転車への警告カードを作成していた。
だが、通勤中を含め、1日の勤務中に大量の缶酎ハイを空けた後の異常行動に、飲酒運転捜査のプロである同僚の警察官たちが気づかないはずがなかった。
交通取り締まり現場で、運転手以外から漂うはずのない酒のにおい、異常なほどの摘発意識や高いテンション-。典型的な酔っ払いの特徴に気づいた別の署員が現場責任者を通じて上司に報告した。
「飲んでいない」。駆けつけた同署地域課の課長代理にこう否認した男性巡査だったが、直後に立てなくなったようにフェンスに寄りかかった。
「クロだ」
こう判断した幹部らが署に連れ戻り、アルコール検知をしたところ、男性巡査の呼気1リットル当たり、0・4ミリグラムのアルコールが検出された。
■「飲まないと仕事に行けなくなった」
動かぬ証拠を突きつけられた男性巡査は、県警監察官室の調査に対し、酒を飲み始めた経緯や飲酒量、事件当日の状況などを洗いざらい話したという。
ここから明らかになったのは、エスカレートを続けた飲酒状況と周到な隠蔽工作だった。
出勤途中に初めて酒を口にしたのは、今年5月下旬。残務処理をするため休日出勤するところだった。その後、7月上旬からは出勤途中の飲酒が常態化し、同下旬からは勤務中の飲酒が始まった。
動機は「仕事のストレス」だった。「眠れなくなり、飲酒量が増えた。仕事に行きたくなくなり、飲まないと行けなくなった」と供述したという。
さらに、口臭スプレーや制汗スプレーでにおいを消し、現場には仕事用のカバンに缶をしのばせ、タオルで隠して飲んでいた。
「このような状況をみると、男性巡査はアルコール依存症に近い状態だったかもしれない」。交通法規に詳しい高山俊吉弁護士はこう指摘し、「交通安全に対する姿勢の鈍磨。酒気を帯びていれば行動の異常さは隠せないが、周囲も長期間にわたって気づいていない。構造的に深刻な問題で警察の退廃現象だ」と断罪した。
書類送検された10日に懲戒免職処分を受けた男性巡査は「全国の警察官の信頼を失墜させた。申し訳ない」と謝罪したという。この男性巡査にとって幸運だったのは、酩酊(めいてい)しながら乗ったバイクで事故を起こさなかったことだろう。もし飲酒が常態化した警察官が人身事故などを起こしていたら、警察に向けられた国民の怒りは沸騰していたに違いない。「酒は憂いの玉箒(たまばはき)」ということわざがあるが、憂さ晴らしの酒は、男性巡査にあまりに大きな代償を払わせることとなった。
2014年11月2日 17時3分
産経新聞
飲酒後に交通取り締まり現場に公用バイクで向かい、業務に当たった埼玉県警所沢署の若手署員が10月10日、県警に道交法違反(酒気帯び運転)容疑で書類送検された。
「仕事の悩み」から出勤途中に酒を飲み始め、約2カ月後には勤務中にも手を出すまでにエスカレート。「警察の正義」を置き去りにした暴挙ともいえるこの事態を、専門家は「警察の退廃」と評した。事件当日、500ミリリットル入りの缶酎ハイ6本を空けた“異常な勤務”の実態とは-。(さいたま総局 佐藤祐介)
■日常の“飲酒”通勤
8月4日、宿舎の自室で晩酌をしていた所沢署地域課の男性巡査(29)=肩書は当時、懲戒免職=は、深夜になっても酒を飲み続けていた。翌日に勤務を控え、寝ようと思えば思うほど、眠気が遠のいていったからだった。
やっとのことで眠りについたのは5日午前3時。深酒だった。
短時間の睡眠を経て、二日酔いの状態で宿舎を出て歩いて署に向かった。途中で立ち寄ったコンビニエンスストアで朝食にサンドイッチを選んだ。次に向かった店内のドリンクコーナーで手に取ったのは、3本の缶酎ハイだった。
店を出ると、プルトップを開け、口に含んだ。署に着くまでに、1本を飲み終えた。これが、男性巡査の最近の通勤風景だった。
署に着いて、夕方まで勤務を続けた男性巡査は、署2階のトイレに入って残りの缶酎ハイ2本を飲み干した。そして、引き続き勤務のため、公用バイクで所沢駅前交番に向かった。
交番に到着した後、食事を取るための休憩では、制服の上に私服の上着を羽織り、装備品や手錠を隠して外出。缶酎ハイを買い足して交番に戻り、トイレに隠れ、1本余を飲んだという。
■ハイテンションで取り締まり…「クロ」認定
夜に予定されていた所沢市内の交通取り締まり現場まで、約7キロの道のりをバイクで移動し、同僚署員らと合流した。さらに現場でも缶酎ハイ1本を飲み干していた。
男性巡査は酒気帯び状態のまま、現場でスピード違反切符や、無灯火のまま走行していた自転車への警告カードを作成していた。
だが、通勤中を含め、1日の勤務中に大量の缶酎ハイを空けた後の異常行動に、飲酒運転捜査のプロである同僚の警察官たちが気づかないはずがなかった。
交通取り締まり現場で、運転手以外から漂うはずのない酒のにおい、異常なほどの摘発意識や高いテンション-。典型的な酔っ払いの特徴に気づいた別の署員が現場責任者を通じて上司に報告した。
「飲んでいない」。駆けつけた同署地域課の課長代理にこう否認した男性巡査だったが、直後に立てなくなったようにフェンスに寄りかかった。
「クロだ」
こう判断した幹部らが署に連れ戻り、アルコール検知をしたところ、男性巡査の呼気1リットル当たり、0・4ミリグラムのアルコールが検出された。
■「飲まないと仕事に行けなくなった」
動かぬ証拠を突きつけられた男性巡査は、県警監察官室の調査に対し、酒を飲み始めた経緯や飲酒量、事件当日の状況などを洗いざらい話したという。
ここから明らかになったのは、エスカレートを続けた飲酒状況と周到な隠蔽工作だった。
出勤途中に初めて酒を口にしたのは、今年5月下旬。残務処理をするため休日出勤するところだった。その後、7月上旬からは出勤途中の飲酒が常態化し、同下旬からは勤務中の飲酒が始まった。
動機は「仕事のストレス」だった。「眠れなくなり、飲酒量が増えた。仕事に行きたくなくなり、飲まないと行けなくなった」と供述したという。
さらに、口臭スプレーや制汗スプレーでにおいを消し、現場には仕事用のカバンに缶をしのばせ、タオルで隠して飲んでいた。
「このような状況をみると、男性巡査はアルコール依存症に近い状態だったかもしれない」。交通法規に詳しい高山俊吉弁護士はこう指摘し、「交通安全に対する姿勢の鈍磨。酒気を帯びていれば行動の異常さは隠せないが、周囲も長期間にわたって気づいていない。構造的に深刻な問題で警察の退廃現象だ」と断罪した。
書類送検された10日に懲戒免職処分を受けた男性巡査は「全国の警察官の信頼を失墜させた。申し訳ない」と謝罪したという。この男性巡査にとって幸運だったのは、酩酊(めいてい)しながら乗ったバイクで事故を起こさなかったことだろう。もし飲酒が常態化した警察官が人身事故などを起こしていたら、警察に向けられた国民の怒りは沸騰していたに違いない。「酒は憂いの玉箒(たまばはき)」ということわざがあるが、憂さ晴らしの酒は、男性巡査にあまりに大きな代償を払わせることとなった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます