『悪徳「格安クリーニング」に騙されないための「7つのポイント」
2017年12月28日 7時0分
デイリー新潮
低価格に飛び付くと“落とし穴”
クリーニング業界は、実は消費者トラブルが多いことをご存じだろうか。国民生活センターも断言しているほどだ。
***
2006年8月4日、センターは広報文書「クリーニングサービスのトラブル防止のために」を発表。冒頭で「クリーニングは性別・年齢を問わず生活に密着したサービスである一方、トラブルも多い」と明記しているのだ。
原因の1つが限界を超えた低価格競争だろう。本来は必要な部分までコストカットが行われている。
さる業界大手は「背広上下で1800円、税別」と公表するが、別の業者は「上が626円から、下が389円から、合わせて1014円、税込」と宣伝している。スーツ1着のクリーニングで800円近い差が出ることに、改めて驚くかたもいるだろう。だが、料金の安さだけで飛びつくと、トラブルが待っているわけだ。
格安クリーニングにご注意
鈴木和幸氏は自らクリーニング会社を経営しながらNPO法人「クリーニング・カスタマーズサポート」も運営。劣悪化したクリーニング業界の労働環境の改善などに取り組んでいる。どうしてこの業界に悪徳業者がはびこり、客とのトラブルが増えたのか、歴史的経緯を訊いた。
「昭和30年代まで、クリーニングは職人の世界でした。個人経営の小規模店が中心で、お客さんとの意思疎通も密でした。その頃なら今ほどトラブルはなかったと思います。転機が訪れたのは昭和40年代。機械化が進行し、省力化が実現していきます。ワイシャツなら、昔は1時間に10枚もアイロンをかけられれば名人でした。それが専用のワイシャツプレス機を使えば、2、3人の手で1時間に100枚から200枚を仕上げることが可能になったんです」
原因は「仁義なき」低価格競争
省力化は、「個人店」が多かったクリーニング業界の「企業化」を推し進めた。資本を投下して、最新の機械を揃えた洗濯工場を建設し、店舗は商品の取次店とした。利益率向上とコストカットを同時に実現し、料金の値下げに成功。その結果、当初は消費者とウィンウィン(win-win)の関係が築けた。
その蜜月が終焉を迎えるのが90年代。大手企業が個人店を駆逐する形で進行したシェア争いが天井に達し、「仁義なき」低価格競争が展開されていったのだ。
最初に生じたのは、クリーニング会社の「ブラック企業化」だ。女性パートや外国人技能実習生を過剰労働や残業代の未払いで酷使させ、人件費を限界以上に削る。
それでも駄目だということで、遂に一部の悪徳業者は「消費者を騙す」方向に舵を切った。料金体系を故意に煩雑にするなどして、消費者が余計な料金を支払わざるをえないようにしたのだ。
そうした悪辣な業者を見分けるチェックポイントを、鈴木氏に作成してもらった。項目は全部で7項目ある。
店員の「愛想」も要チェック
【1】店頭に「ワイシャツ90円」とか「半額」と大きく宣伝している
「1年中、半額セールをやっている店が近くにあるのではないでしょうか。実際に使っているかたもおられるかもしれません。そうなると、この店は『常に料金が半額』だということになり、実は『半額のほうが普通料金』になっているわけです。『ワイシャツ半額90円』が毎日続けば、通常料金の『180円』は嘘で、『90円』が本当の値段になります。こうした価格表記は、景品表示法に抵触する可能性もあります」(鈴木氏、以下同)
【2】「○○加工」というオプションをやたらに勧める
「以前からクリーニング店が勧める代表的な加工は、『汗抜き』、『撥水』、『折り目』の3つになどになりますが、1着の服に3つの加工を同時に勧めても、効果が怪しくなってきます。それでも勧めてくる店は、会社が店員に加工数を競わせている場合があります」
【3】店員が、過剰なほど愛想がいい
「現在の大手クリーニング会社は、店員教育を頻繁に行っています。店員さんに好印象を抱くと、客は『いい店』と判断するからです。もっと言えば、接客態度がいいと、多少のことは許されるんです。しかし、そんな店ほど変な追加料金があったり、クリーニングの質が悪かったりします」
【4】しみ抜きが別料金になっている
「昔のクリーニング屋は、しみ抜きは料金に含まれていました。どこかの業者が、最初からシミ抜き料金を徴収したら簡単に取れたので、あっという間に業界中に広まってしまったのです。しかしどこの店員も、シミが落ちるか落ちないかは、その場では判断できません。お金を払っても落ちないときもあるし、逆に払わなくてもキレイに落ちることがあります。落ちなかったら金を返せ、と主張してもいいでしょう」
トラブルが増加中の「保管クリーニング」
【5】おかしな宣伝には要注意
「『健康クリーニング』や『マイナスイオンクリーニング』、花粉症予防の『花粉防止加工』など、あきらかに非科学的で荒唐無稽なクリーニングを標榜する業者がいます。また、ワイシャツなどに使用する洗濯糊に“小麦でんぷん”を使う業者も出てきており、小麦粉アレルギーの人には安全とは言い切れません。いずれも“トンデモクリーニング店”と笑って済ませられない問題で、企業姿勢が問われます」
【6】保管クリーニングを大宣伝している
「クリーニング店は、衣替えの時期が忙しく、夏場は閑散とします。保管クリーニングは春ごろに冬物を洗い、夏場は店が保管して、秋になると返却すると客は信じています。ところが一部の悪徳業者は、受け取ってもそのまま放置して、工場の稼働率が下がる夏場になってから初めて洗うんです。その間は放置されているので、衣類にカビが生えるなどのトラブルが起きています。約款に『返却時期の前倒しは2週間お待ち下さい』と書かれているなど、保管を依頼した衣類がすぐには返却できない業者は要注意です」
【7】衣料品返却後「1か月は責任がない」と主張する
「『衣料品を返却して1か月を過ぎた後は責任がない』と約款に書いている業者がいます。しかし、クリーニング事故の賠償基準では『返却後半年間は責任がある』としており、1か月というのはクリーニング業者の身勝手な言い分です。業者に『期間切れで賠償はできない』と言われたら、最寄りの消費生活センターに相談するといいでしょう」
これでチェックポイントは全てだ。「安物買いの銭失い」にならないためにも、この7項目で消費者防衛を果たして頂きたい。
2017年12月28日 7時0分
デイリー新潮
低価格に飛び付くと“落とし穴”
クリーニング業界は、実は消費者トラブルが多いことをご存じだろうか。国民生活センターも断言しているほどだ。
***
2006年8月4日、センターは広報文書「クリーニングサービスのトラブル防止のために」を発表。冒頭で「クリーニングは性別・年齢を問わず生活に密着したサービスである一方、トラブルも多い」と明記しているのだ。
原因の1つが限界を超えた低価格競争だろう。本来は必要な部分までコストカットが行われている。
さる業界大手は「背広上下で1800円、税別」と公表するが、別の業者は「上が626円から、下が389円から、合わせて1014円、税込」と宣伝している。スーツ1着のクリーニングで800円近い差が出ることに、改めて驚くかたもいるだろう。だが、料金の安さだけで飛びつくと、トラブルが待っているわけだ。
格安クリーニングにご注意
鈴木和幸氏は自らクリーニング会社を経営しながらNPO法人「クリーニング・カスタマーズサポート」も運営。劣悪化したクリーニング業界の労働環境の改善などに取り組んでいる。どうしてこの業界に悪徳業者がはびこり、客とのトラブルが増えたのか、歴史的経緯を訊いた。
「昭和30年代まで、クリーニングは職人の世界でした。個人経営の小規模店が中心で、お客さんとの意思疎通も密でした。その頃なら今ほどトラブルはなかったと思います。転機が訪れたのは昭和40年代。機械化が進行し、省力化が実現していきます。ワイシャツなら、昔は1時間に10枚もアイロンをかけられれば名人でした。それが専用のワイシャツプレス機を使えば、2、3人の手で1時間に100枚から200枚を仕上げることが可能になったんです」
原因は「仁義なき」低価格競争
省力化は、「個人店」が多かったクリーニング業界の「企業化」を推し進めた。資本を投下して、最新の機械を揃えた洗濯工場を建設し、店舗は商品の取次店とした。利益率向上とコストカットを同時に実現し、料金の値下げに成功。その結果、当初は消費者とウィンウィン(win-win)の関係が築けた。
その蜜月が終焉を迎えるのが90年代。大手企業が個人店を駆逐する形で進行したシェア争いが天井に達し、「仁義なき」低価格競争が展開されていったのだ。
最初に生じたのは、クリーニング会社の「ブラック企業化」だ。女性パートや外国人技能実習生を過剰労働や残業代の未払いで酷使させ、人件費を限界以上に削る。
それでも駄目だということで、遂に一部の悪徳業者は「消費者を騙す」方向に舵を切った。料金体系を故意に煩雑にするなどして、消費者が余計な料金を支払わざるをえないようにしたのだ。
そうした悪辣な業者を見分けるチェックポイントを、鈴木氏に作成してもらった。項目は全部で7項目ある。
店員の「愛想」も要チェック
【1】店頭に「ワイシャツ90円」とか「半額」と大きく宣伝している
「1年中、半額セールをやっている店が近くにあるのではないでしょうか。実際に使っているかたもおられるかもしれません。そうなると、この店は『常に料金が半額』だということになり、実は『半額のほうが普通料金』になっているわけです。『ワイシャツ半額90円』が毎日続けば、通常料金の『180円』は嘘で、『90円』が本当の値段になります。こうした価格表記は、景品表示法に抵触する可能性もあります」(鈴木氏、以下同)
【2】「○○加工」というオプションをやたらに勧める
「以前からクリーニング店が勧める代表的な加工は、『汗抜き』、『撥水』、『折り目』の3つになどになりますが、1着の服に3つの加工を同時に勧めても、効果が怪しくなってきます。それでも勧めてくる店は、会社が店員に加工数を競わせている場合があります」
【3】店員が、過剰なほど愛想がいい
「現在の大手クリーニング会社は、店員教育を頻繁に行っています。店員さんに好印象を抱くと、客は『いい店』と判断するからです。もっと言えば、接客態度がいいと、多少のことは許されるんです。しかし、そんな店ほど変な追加料金があったり、クリーニングの質が悪かったりします」
【4】しみ抜きが別料金になっている
「昔のクリーニング屋は、しみ抜きは料金に含まれていました。どこかの業者が、最初からシミ抜き料金を徴収したら簡単に取れたので、あっという間に業界中に広まってしまったのです。しかしどこの店員も、シミが落ちるか落ちないかは、その場では判断できません。お金を払っても落ちないときもあるし、逆に払わなくてもキレイに落ちることがあります。落ちなかったら金を返せ、と主張してもいいでしょう」
トラブルが増加中の「保管クリーニング」
【5】おかしな宣伝には要注意
「『健康クリーニング』や『マイナスイオンクリーニング』、花粉症予防の『花粉防止加工』など、あきらかに非科学的で荒唐無稽なクリーニングを標榜する業者がいます。また、ワイシャツなどに使用する洗濯糊に“小麦でんぷん”を使う業者も出てきており、小麦粉アレルギーの人には安全とは言い切れません。いずれも“トンデモクリーニング店”と笑って済ませられない問題で、企業姿勢が問われます」
【6】保管クリーニングを大宣伝している
「クリーニング店は、衣替えの時期が忙しく、夏場は閑散とします。保管クリーニングは春ごろに冬物を洗い、夏場は店が保管して、秋になると返却すると客は信じています。ところが一部の悪徳業者は、受け取ってもそのまま放置して、工場の稼働率が下がる夏場になってから初めて洗うんです。その間は放置されているので、衣類にカビが生えるなどのトラブルが起きています。約款に『返却時期の前倒しは2週間お待ち下さい』と書かれているなど、保管を依頼した衣類がすぐには返却できない業者は要注意です」
【7】衣料品返却後「1か月は責任がない」と主張する
「『衣料品を返却して1か月を過ぎた後は責任がない』と約款に書いている業者がいます。しかし、クリーニング事故の賠償基準では『返却後半年間は責任がある』としており、1か月というのはクリーニング業者の身勝手な言い分です。業者に『期間切れで賠償はできない』と言われたら、最寄りの消費生活センターに相談するといいでしょう」
これでチェックポイントは全てだ。「安物買いの銭失い」にならないためにも、この7項目で消費者防衛を果たして頂きたい。