ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

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アリを使った自由研究

2011-06-03 10:24:54 | 日記
 学習雑誌の付録に「アリ飼育器」のようなものが付いていたことがある.これを使ってアリを飼ってみたという自由研究が,その年は大流行した.ただ自由研究としては,一般にあまり成功してないように思う.

 アリ飼育器は,大きさは対象とするアリのサイズや,その他の条件で変わってくる.小さいものはフロッピーディスクのケースのようなものである.とにかく2枚の透明なプラスチック板を,短い距離で平行に置いて,板の間に土を入れる.そこにアリを入れると,アリは穴を掘って「巣」を造る.壁は透明プラスチック板だから,それを通して巣の形や大きさや,巣の中でのアリの行動が見える.

 なかなか良さそうだけど,落とし穴がある.それは多くのアリでは,女王がいなければ何も始まらないということ.しかし女王アリを捕獲するのは,なかなか難しいのでないだろうか.

 女王がいなければ,本来ならアリが巣の中でしているだろう行動,たとえば産卵,育児などという行動は,このシステムでは観察できない.アリ飼育器に入れられたアリたちは,いわば途方に暮れて,穴を掘ってみたり,与えられた餌を食べたり,ひょっとしたら餌を運んだりもするかもしれないけれど,いずれにせよ本来の正常なアリの行動ではない.これでは観察そのものが無意味である.

 ただし例外もある.身近なアリではアミメアリというのがいる.このアリは,女王アリがいないとき,働きアリが女王に代って産卵して,新たな女王を誕生させるという性質をもっている.だからアミメアリなら,働きアリの集団から出発しても,うまくコロニーを作らせることができるかもしれない.実際どうなるか本当のところは,私は知りません.

 アリを使った自由研究でぶつかる,もう1つの障害は,アリの名前である.たとえばモンシロチョウとアゲハチョウを区別しないで単に「チョウ」の飼育をしたというのでは,やっぱりマズいでしょう.アリの種類数はどれほどか知らないけれど,チョウよりは多いだろう.試みに某大学の校庭を散策してみたら,10分足らずの間に10種類ほどのアリを見つけた.アリというのは,じつはそれほど多様なのである.

 幸い今は「日本産アリ類画像データベース」というホームページ
http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/J/index.html
があって,誰でも簡単にアリの種類を判定できる.ただし子どもには無理である.こういう場面でこそ親や先生の助けが必要となる.

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