ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

 自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう.

ボルボックスを飼おう(つづき)

2010-06-03 09:22:12 | 日記
 ボルボックスの飼い方について,続けて書きます.

 今回は「土」です.
 ボルボックスに限らず,単細胞藻類を飼育(培養)するには,多くの場合ミネラルと有機物が必要なようです.ミネラルは化学肥料(メネデールとかハイポネックスとか)でほぼカバーできます.有機物としてはボルボックスの場合,土を使います.
 それが「原理」ですが,じつはボルボックスの飼育に使う土は,あまり有機物を含んでいそうにないものが良いようです.たとえば運動場の片隅で表面の乾いた土を手で集めたようなものとかが良いと聞いたことがあります.

 藻類を飼うときの,もう1つの注意は,バクテリアや他の藻類が増えてはいけないということ.藻類でなくゾウリムシなどの「動物」はバクテリアが増えても,それを食べて栄養にするので,むしろバクテリアが増える条件を作ることが大切です.しかし藻類は「食べる」ことをしないので,つまり植物の性質が強く,主要な「栄養源」は日光です.バクテリアは敵です.
 そういうわけで,土には多少とも有機物が含まれていて,バクテリアが増える可能性があるので,土を直接入れるのでなく,水に入れて一度沸騰させてから,その煮だし汁を使います.
 土と一緒によく入れるのが石ころの小さなカケラです.大理石を勧める人もいます.大理石は入手しにくいので,私はそこらで砂利を拾ってきて,熱湯を通してから入れます.
 そういうわけで,土と石を入れるといっても,場所により人により千差万別.条件次第で飼育は成功することも失敗することもあるという,まことに精神衛生上よくない状況になります.
 これではダメだ,と思って,たとえば鹿沼土と大理石というふうに条件を決めることができないかと,いろいろ工夫していますが,とにかく純粋厳密な方法だけで成功することは少なくて,得体のしれない土とかの混じり物を多少とも入れたほうが,よく成功します.
 全然「科学的」でないのですが,生物とは概してそういうものです.

 とりあえず,いま私が採用している方法をご紹介します.この方法で成功することもあるし,失敗することもあります.

1.運動場の片隅でかき集めた土20gを1リットルの水道水で5分間煮沸したもの.静置してさました上澄みを使う.
2.鹿沼土
3.赤玉土.
4.近所で拾った小石.熱湯を通して軽く滅菌しておく.

を使います.前回ご紹介したメネデール液(メネデールをミネラルウォーターで200倍に希釈したもの)に1と2を少量ずつ入れます.そして3を1カケラ入れます.これで培養液が完成します.
 「少量」ってどのくらいだ? というツッコミは当然あると思う.一応の目安としては,
 メネデール液 90ml
 1液     10ml
 2土     0.2g
 3土     0.2g
 4石   15g程度のものを1個
という感じ.あまり信用しないでください.このあたりは試行錯誤が必要です.私のところでも今いちおう維持はできているけれど,まだまだ改良せねばならないと思っています.


 さて,こうして培養液の準備ができたら,いよいよボルボックスを入れるわけです.入れるだけですが,注意点をひとつ.
 入れる数が少ないと,うまく育ちません.ある程度たくさん入れる必要があります.
 ということは,野外で採取した水の中にボルボックスがいたとして,それをピペットで何個か拾って入れたとしても,うまく育つ可能性は低いということです.数個ではなく,たくさん入れたとすると,こんどはボルボックス以外の生物(藻類,鞭毛虫類,バクテリア)が混入する可能性が高くなります.
 こういうトラブルを避ける最良の方法は,すでに培養されているボルボックスを使うことです.ボルボックスを飼育している人に依頼して,ボルボックスを分けてもらえば良いわけです.


 以上の作業をすべて終えたら,完成品を「光のあたる場所」に静置します.直射日光だと水温上昇を心配せねばならないので,これも試行錯誤が必要です.
 どうでしょう? なかなか難しそうですが,成功すれば手元にいつもボルボックスがいることになります.
    
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ボルボックスを飼おう | トップ | 昆虫展と昆虫採集会の案内 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事