ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

 自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう.

ザトウムシの交尾

2011-10-31 02:02:13 | 日記
 野生ほ乳類の調査をやっているYさんが,ザトウムシの交尾らしき行動を写真に撮った.2個体が頭を突き合わすように向かい合っている.細部がよく見えないけど,やっぱり交尾ではないだろうか.どんなふうになってるんでしょうね?
 というわけで,少し調べてみた.

 交尾というと犬や馬や多くの昆虫のように,メスの背後からオスが馬乗りになって交接するという図を思い浮かべる人が多い.しかしオスとメスが向かい合う,いわば「対面式」とでもいうべき交尾姿勢をとるものもある.たとえば人間がそうだ.
 節足動物ではカニがそうだ.向かい合って両手(ハサミ)をつないで,腹面にある「ふんどし」と呼ばれるフタをパックリ開ける.オスはそこに2本のペニスを持っていて,それをメスの生殖口に挿入する.

 節足動物の中で面白いのはサソリの交尾である.やはり対面式で,頭と頭を突き合わせる形で両手をつないで前後に動く.オスが前進するとメスは後退する.このときオスは精子の入った袋を地面に落とす.次にオスが後退するとメスが前進して,その袋を拾い上げる.これがサソリの「交尾」である.
 このところ良く付き合っているカニムシ君はどうかというと,「生殖行動はサソリに似る」と書かれている.この出典は「日本動物大百科.8.昆虫I 」(平凡社,1996)です.この箇所の著者は小野展嗣さん.
 ちょっと微妙ですね.サソリと「同じ」とは書いてない.サソリに「似る」というのだから,さて,どういうものでしょう.

 次にクモの交尾はどうか? 同じ本から紹介します.
「成熟したオスは糸で小さな網をつくり,そこに精液を載せる.オスはその精液を触肢の先端にある移精器官に吸い取り,メスの生殖口に移精器官の一部を挿入して精液を送り込む」(この箇所の著者は吉田真さん).
 触肢というのは,まあ「口」の一部だろうと思うけれど,「手」に似てないこともない.そういう意味でちょっとタコの交尾に似てないこともない.
 と言ってタコの話まで始めたら大変なので,興味のある方は調べてください.

 さて、お待ちかね.わがザトウムシ君たちの交尾はどうなっているのだろう.これも、同じ本から転載します.
「ザトウムシ類はクモ形類のなかでは珍しく,直接交尾で精子の受け渡しをする.交尾は雌雄が頭を突き合わせた姿勢で,生殖口から前方に突き出した陰茎をオスがメスの生殖口に挿入することで成立する.メスは生殖口の奥におさめられている産卵管の先端部でこれを受けて,その内部にある受精のう(嚢)にオスからの精子を貯蔵する」(この項の著者は鶴崎展巨さん).

 というわけで,期待した割には意外と普通な交尾であった.しかし頭よりさらに前方に延びて,メスの生殖口にまで達するペニスって...



 写真はザトウムシ.

森の文化祭

2011-10-24 21:32:06 | 日記
 香南市野市町にある高知県立のいち動物公園で,「のいちの森の文化祭」というイベントがあった.これは動物園の開園20周年記念企画だそうです.
- 2011年10月22(土),23(日),10:00~16:00.
- 会場は高知県立のいち動物公園.

 講演会などのほか,同園の「ピクニック広場」でテントを並べて,いろいろな団体の展示があった.桂浜水族館,高知市の動物園「わんぱーくアニマルランド」,大月町の「黒潮生物研究所」,須崎市を拠点とする「四国自然史科学研究センター」などの展示もあり,高知県の「動物」関係の人々が大集結した様相になった.面白い集まりになった.

 このイベントに私は23日だけ参加した.「えこらぼ」のテントで,例によって「小さな生物」を展示した.いろいろ準備してあったのだけど,全体に「客」層の年齢が低いこと,テントごとに1つずつ質問に答えさせる「クイズラリー」というのが行なわれていたことなどから,持参した品の一部だけを展示することにした.
 用意した質問に答えさせるという手法は,子供のモチベーションをねじ曲げてしまう,と私は思う.質問に答えることが優先されて,自分の興味のままに損得抜きで顕微鏡を覗くという行為が見られなくなる.多人数を一度に相手にせねばならない時などに,私もクイズ形式を採用せざるをえないこともある.過去に何度か経験があるが,いずれも失敗だった.
 今回も,クイズに答えることしか眼中にない子供たちが相手では,多くのものを並べても意義は薄いだろうと判断した.

 ちょうど週末に低気圧が通過したので,22日は昼過ぎに豪雨に見舞われた.「ピクニック広場」はプールと化して,参加者一同はテントを離れて一時避難するというハプニングもあったらしい.私は会場に行かなかった.この日はミクロ生物を調達しようと,水採取を午後に予定していたが,雨のため断念した.翌23日は雨もあがり,時には陽がさして,生きた展示品がバテバテにならないよう配慮する必要すらあった.

展示したもの
 生きているもの: ボルボックス,アメーバ,ブラインシュリンプ,プラナリア,カニムシ,ザトウムシ
 乾燥標本: 星の砂,マダニ,シラミ,ノミなど.

展示しなかった持参品
 生きているもの: カイミジンコ,ケンミジンコ,ラッパムシ
 乾燥標本多数.

 以上.ごちゃごちゃ書いてしまった.行事報告おわり.

カニムシを探せ

2011-10-10 01:04:05 | 日記
 簡易実体顕微鏡「ファーブル・ミニ」(ニコン)とか「TW-100」(レイマー社)の使用を小学校などに薦めている.前者は持ち運びに便利なのが強み.ただし室内で使うには,光源を別に用意せねばならない.
http://www.nikonvision.co.jp/products/fabre/fab_mini.htm

後者の魅力は何と言っても,送料込みで1万1千円という手軽さ.
http://www.wraymer.com/stereo/index.html

 こういう小道具を用意しておいて,小学生に「小さな生物」を見せる.プラナリアと並ぶ人気者がカニムシ.山に行って土を調べれば入手できるのだけど,いざその気で探すと,けっこう見つからない.

 というわけで,カニムシがいる,という噂を聞きつけて,笹温泉(今は廃業)の近くまで行ってみました.高知市からクルマで約1時間.もう少し足を延ばせば三嶺(さんれい)への登山口.三嶺は地図で見ると剣山の近くです.
 フルイで土をふるって調べたのですが,カニムシは見つかりませんでした.情報をくれた人は,かなりラッキーだったのかもしれません.たぶん三嶺の登山口あたりまで行けば,もっと楽に見つけられるのでないだろうか.


 写真はカニムシ.青い線で目盛りが刻んであります.1目盛りが1ミリなので,このカニムシは4mmを越える大型個体です.