ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

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自由研究とゾウリムシ

2011-07-16 01:11:52 | 日記
 ゾウリムシは教材生物として昔から推奨されて来た.しかし,あまり自由研究の題材となっていない.理由の1つはゾウリムシが「小さすぎる」からだろう.しかし近年はニコンの「ファーブル」など簡単な実体顕微鏡が普及し,学校や科学館で使わせてもらえることもあるし,個人で持っている人もふえた.「ファーブル」のように持ち歩いて野外で使うようなことはできないが,レイマーの実体顕微鏡
http://www.wraymer.com/stereo/tw100/tw100.html
などは価格も手頃で,十分以上に有用である.
 昆虫を「ミリ」の世界だとすれば,ゾウリムシは1ケタ小さい「100ミクロン」の世界である.拡大率20倍の実体顕微鏡は,この1ケタの壁を難なくクリアしてくれる.

 ゾウリムシを採集するにはドブの水をとって来ればよい.しかし,ここにもう1つの壁がある.一見ゾウリムシに似ている原生動物は色々ある.いま見えている原生動物が確かにゾウリムシであることを確認する作業は,子どもには荷が重い.
 むしろお勧めしたいのは,誰かが飼っているゾウリムシを分けてもらうことである.ゾウリムシを教材として使っていて,日常的に持っている先生は,探せば意外に簡単に見つかるのでないだろうか.ゾウリムシも含め様々な教材生物を提供してくれる人とか,それに詳しい人とかを「県」レベルでリストし検索できるようにしておけば,可能な自由研究の幅がぐっと広がるかもしれない.

 さて,
 首尾よくゾウリムシが入手できたとして,さて何を研究すれば良いだろうか.

 まずは「飼ってみる」ことである.ゾウリムシを飼う方法は,原理は簡単である.単なる水ではダメで,何か栄養分が溶け込んだ水を用意する.栄養分があれば水の中でバクテリアが増える.そのバクテリアを食べてゾウリムシが増える.
 ただし栄養の種類や濃度や,増殖するバクテリアの種類によっては,ゾウリムシがうまく増殖できないこともある.

 専門家の先生は,ちょっと難しい方法で飼っているかもしれない.しかし,このブログで以前に紹介したように,もっと簡単な飼育方法もある.カロリーメイトを水で希釈して培養液とする方法,「麦葉粉」または「青汁粉末」を使う方法などである.
http://blog.goo.ne.jp/naturesalon/e/0335b431e3bef8addd46723b85ba6b2f

 別の方法として,小麦粒を煮沸して冷ましたものを培養液としても良い.小麦粒でなく米粒(玄米が良いでしょう)ではどうだろうか? またはレタスの葉の小片を煮て冷ましたものはどうだろう? 牛乳を少し混ぜた水ではどうだろう? いろいろ試して比較すれば,立派な自由研究ができあがる.

 ゾウリムシは比較的タフな原生動物で,どういう液でもけっこう生きている.しかし増殖できるためには,やはり一定の条件が必要である.逆に言えば,ゾウリムシが「生きている」だけでは,ゾウリムシを飼ったことにならない.この条件で,確かにゾウリムシが分裂増殖していることを確かめる必要がある.どのようにして確かめれば良いのかは,知恵の出しどころとなる.

 ゾウリムシがよく増殖する飼育方法が見つかったら,ゾウリムシが分裂する様子もぜひ観察してください.