ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

 自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう.

食物連鎖,part 2

2011-08-24 13:32:50 | 日記
 ブラインシュリンプを与えると,たぶんメダカは喜んで食べるだろう.そういう実験について,前回は書いた.
 で,メダカがブラインシュリンプを食べることが判ったとして,それは何を証明したことになるのだろうか? 自然界でメダカがブラインシュリンプに遭遇することは,ありえない.だから,この実験は,自然界で実際に起っている食物連鎖について示唆を与えるものであっても,何かを証明したわけではない.やはり本来なら,日本の自然界で実際に起こりうるシチュエーションを再現する必要がある.
 そういうわけで,メダカの生息環境で実際に見つけられる生物,ミジンコとかカイミジンコ,あるいはケンミジンコを使った実験のほうが,より現実的,直裁的な証明となる.
 もう一度,何を証明したいかを書いておくと:
「メダカはミジンコ(カイミジンコ,ケンミジンコ)を食べる」
という命題である.
 この実験に関連して,ミジンコ等の飼育について書いてみる.

 ミジンコの飼い方を知っていますか? 趣味でミジンコを飼っている人もいるので,そういうホームページ等を参照してもよい.庭で水をためている鉢とか,近所の水田などで,カイミジンコが大発生していることもある.そういう幸運が身近にあるのなら,ミジンコを「飼う」などと大さわぎをしなくて済む.本当の困難は,もっと小規模の「飼育」を試みたときに起きる.たとえばコップでミジンコを飼うというような話になれば,これは小学生どころか,おとなでも難しい課題となる.
 一般に淡水プランクトンの飼育は,規模が小さいほど困難である.小さいぶん,より厳密な条件設定が必要になる.たとえば「餌」である.ミジンコを水槽で飼うときには,金魚のエサを与えていたかもしれない.しかしミジンコが金魚のエサを食べるわけではない.金魚のエサを栄養源としてバクテリアや藻類が,そのバクテリアを餌として原生動物が増える.その藻類や原生動物を餌としてミジンコやケンミジンコが増える.そして実際にミジンコが何を食べているかまで特定しないと,小規模飼育は成功しない.つまり小規模飼育では,まさに食物連鎖そのものに直接対峙することになる.

 というわけで,何だか難しいことを書いてしまったけれど,生物を飼育するという作業は,それほど基本的であり重要である.「たかが自由研究」というふうに軽く扱えない一面もあるわけだ.
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食物連鎖

2011-08-13 03:54:04 | 日記
 夏休みの「自由研究」の話を続ける.

 ある動物が「何を食べるか?」が問題になるのは,主として2つの側面がある.ひとつは,その動物を飼育したい場合.これは単に何を食べるかだけでなく,その食べ物単独で,その動物の生命をささえるのに十分であるかどうかも問題になる.日本人はコメをよく食べてきたが,コメ単独で日本人の生命を維持できるかというと,多分そうではないだろう.ゾウリムシを飼育するのに,特定の種類のバクテリアを与えることがあるが,果たしてそのバクテリア単独で十分かと言われたら,それにキッチリ答えるのは難しいかもしれない.

 「何を食べるか」が問題になる第2の場面は,環境とか生態系にからむ分野である.生物は,食う-食われるの関係を通じて,互いにつながっている.これを食物連鎖(food chain)という.池や海の生態系では,まず植物プランクトンが太陽光で増える.それを動物プランクトンが食べる.それを小さな魚が食べる・・・
 実際にはそれほど単純な図式でないことは,少し具体的に考えればわかる.たとえばゾウリムシはどこに位置するのだろう.光合成はしないし,植物プランクトンを食べているわけでもない.
 まあ,色々そういう議論はあります.しかし今回特にお勧めしたいのは,「動物プランクトンを小さな魚が食べる」という箇所.これを実際に確かめてみるという実験はどうだろう.どうやって確かめますか?

 まず小さな容器を用意する.これに水を入れる.そのまま実体顕微鏡で覗いて,隅々までチェックできるように,容器は十分に小さく,水量は十分に少ないことが必要です.そこに1匹のメダカを入れる.そして動物プランクトンを入れる.
 ここで,どうやって動物プランクトンを調達するかが問題になる.たぶん最も簡単なのはブラインシュリンプでしょう.

 熱帯魚屋でブラインシュリンプ(アルテミア,シーモンキーなどとも呼ばれているらしい)の卵を買って来る.パッケージの箱か,同封の説明書に,孵化させる方法が書いてある筈です.簡単に言うと,何か適当な容器(口径8cm 以上が望ましい)に浅く(深さ1~1.5cm)塩水を入れる.塩水の塩分濃度は2%(水1リットルに食塩20グラムを入れる)程度でしょうか.それにブラインシュリンプの卵を入れる.卵は水面に浮遊します.卵の量としては,重ならないで一層になったとして,水面を3分の2ほどカバーする程度を目安とすればよい.
 そのまま,できるだけ動かさないように静置する.動かすと卵が容器の壁面についてしまいます.こうしてセットして1日か2日で,ブラインシュリンプが孵化して泳ぎだす.

 泳ぎ出したブラインシュリンプをピペットで吸って,メダカに与える.5匹~10匹程度が良いでしょう.人が近くにいるとメダカは逃げようとして暴れることもあるので,メダカを刺激しないよう注意する.できれば,その場を離れる.
 10分後,メダカの容器の中にいるブラインシュリンプの数を調べる.場合によっては5分後とか30分後とかも調べると良い.このとき実体顕微鏡があれば便利だけど,虫メガネでも,人によっては肉眼でも,十分に作業は遂行できるはずです.
 まあ,概略そのような実験をすれば,「メダカはブラインシュリンプを食べる」ことは確かめられるのでないだろうか.じつは私はこの実験をやったことがないので,100%うまく行くとは断言できません.
 ひとつ注意すべき点は,ブラインシュリンプは塩水,メダカは淡水なので,ブラインシュリンプを与えるとき塩水も一緒に入れることになります.それが気になる場合は,ブラインシュリンプをピペットで吸って,ひとまず別の容器の淡水に入れて,そこから再び吸ってメダカに与えればよい.
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