ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

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ミドリムシの培養液(2)

2015-06-23 00:24:26 | 日記
 「ミドリムシの培養液(1)」の続きです.

 まず,補足説明.

 ヨーグルト造り(乳酸菌)でも酒造り(麹と酵母)でも同じだけど,こういう微小生物を飼うとき注意せねばならないのが,他の微小生物の混入(contamination, いわゆる「コンタミ」)だ.

 特に,殖やしたいと思っている生物と性質の似た生物が混入すると,もう取り返しがつかない.藻類を飼う人は,他の藻類によるコンタミを green contamination(緑の汚染)と呼んで警戒する.ミドリムシの場合も,他の原生生物の混入だけは何としても避けたい.そういう理由から,「熱湯消毒」を強調して説明しました.

 消毒と言っても,今回説明する程度の作業では,バクテリアの混入を完全に防ぐことはできません.バクテリアや菌類の胞子は熱湯に漬けた程度では殺せません.研究機関の実験室のように,無菌操作のできる環境ではないので,培養液を作る過程でも,それ以後もずっと,バクテリアが侵入するチャンスはいくらでもあります.

 また,今回の方法では小麦の煮汁を使うので,液の中にはタンパクなどの栄養が含まれます.それを「食べて」バクテリアは増殖できます.

 バクテリアは仕方ないとしても,他の原生生物が侵入することだけは防ぎたい.そういう趣旨の「熱湯消毒」です.


 さて,ここからが本論.

 ハイポネックス1,000倍希釈液ができたら,次は小麦の煮汁(小麦浸出液)を作ります.

 小麦浸出液とは概略次のようなものです.1リットル用の三角フラスコに水を500mlほど入れて,小麦を40~50粒加える.このフラスコを火にかけて沸騰させる.5分ほど沸騰さ せて火を止める.熱が十分に冷めてから,濾過して小麦粒を除去する.最後に水を加えて全量を1リットルとする.

 ここでは三角フラスコなど利用できない一般家庭を念頭に置いて,もっと小規模で簡便な方法を採用します.

 まず,マグカップに水を100mlほど入れる.それに小麦を5粒入れる.そして電子レンジにかける.2分~3分.ハイできあがり.

 マグカップは自分がコーヒーを飲むとき使っているものでも構わないけれど,私は一応ミドリムシ専用として,安物のマグカップを用意しています.

 次に,電子レンジからマグカップを出す.マグカップ内は熱湯なので,使用する可能性のあるピペットで湯を吸って捨てる.こうしてピペットを「熱湯消毒」しておく.

 まずピペットで,マグカップ内の湯を,たとえば2ml取って,飼育用の容器に入れる.容器については以前の記事を見てください.容器には予め熱湯を通しておくこと.

 次に,同じピペットを使って,ハイポネックス1,000倍希釈液を2ml入れる.そして容器に軽くフタをして放置.

 十分に液の温度が下がったら,ミドリムシを,たとえば1ml 入れる.この時使うピペットは,改めて湯を通しておいた方が良いかもしれない.またはピペットを使わないで,直接注ぎ込む.量はアバウトで良い.

 注意を1つ.この方法ではバクテリアの侵入を完全に防ぐことはできません.ミドリムシを飼っているわけだけど,バクテリアも大増殖している可能性がある.だから,この方法で飼っているミドリムシを,決して口に入れないでください.

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