創造的深化

より納得のできる未来を、考えてみるには・・・

言葉からみた宗教と法

2015-10-11 10:35:36 | 言語
言葉からみた宗教と法
 宗教的倫理が、倫理を超えて人を律する規範へと処罰を伴って分離されれば、制度としての法に転化したとみていいのではないか。つまり、宗教の倫理観が処罰を伴い規制へと変わることで法規範として転換し、政治と宗教が分離され切り離されていく。道徳律から純然たる規範化へと言葉が変わる法律言語化が、国家への転換の起源といえる。

枕詞について

2015-09-20 09:46:26 | 言語
 虚喩に似ている枕詞は、暗喩の後に位置し、和歌が自在な表現と意識された後にでてきた、効果的表現と考えられる。枕詞は喩的表現の象徴が濃密になったもの、虚喩は拡散したものと受け取れる。象徴性とみると虚喩が押し縮められたものとみてよい。
 むしろ上の句が叙景、下の句が叙心の全体の歌謡の背後には、全体喩が心情的に息づいていると読み取るべきではないか。特に枕詞の初源は、地域的空間分布と、時代的時間分布が序列によって基準をたてられる。

①常陸風土記にみられる枕詞は地域の即落の人々の使っていた上った俗謡が、枕詞と受けの地名の組にまで固定化したものと推定できる。無時間的できわめて古い時代に固定化され、まさに風土記編纂時に行われた俗称とみてよい。
②出雲風土記は枕詞と受けの言葉の組は、かなり異質の言語的な要素が、せめぎ合って作られた多様性のように受け止められる。畳み重ねの語法は上代語ではかなり本質的に用法で、声調を整えたり、意味を強調するだけではなく、呪意を加味するとも考えられているり自在に造語が可能でもあった。また宗教的に関連の深い語彙や地名をひとくくりにして表現するなどもあった。
 沖縄語は本土に比べて和語の基礎構造をより多く保存し、古語と新語が混融している点で初源性を多く含んでいることが分かる。

枕詞について

2015-09-12 13:29:34 | 言語
枕詞について
 枕詞について、こんな表現がある。「ある共同的な自律性がある客観的な景物へと変化していき、そして、その客観的な景物がある心的なものの象徴へと変化していく。」
 解説がてら紐解いてみる。それには枕詞の起源を調べて見る必要がある。枕詞がなぜ定着したか。折口信夫が分析しているが、そもそも一般的に枕詞の起源は「場所」との関われが強いということだ。
 たとえば「はるひの春日(かすが)」だが、「はるひ」とはうららかな春の日を意味している。また「春日(かすが)」とは地名だ。「はるひの春日」は春の日がうららかな春日という意味になる。古代表現では、古い表現ほど反復する。つまり、ここでも春の日と春日が反復されて表現されている。当時の春日(かすが)という共同体が了解している地名と、春の日の春日という風景が表現として重なっているものだ。やがて、この繰り返し表現が、人々の心に表現として残り、定着したて行くと、春日(かすが)のむ地名にははるひという定着し流布している語呂の良い言い方が、セットになって語られるようになる。やがて、この表現が固定化して春日(かすが)には「はるひ」は付くものだという自律性が、決まり文句として誕生する。これが枕詞の起源である。

文化移入と言語転移

2015-09-05 17:38:34 | 言語
「地域性の言葉は、どの地域の言葉とも交換することができる。」(吉本)
この指摘は当たっている。つまり、多様な言語の混融によって成りたっている地域性の強い言語は、それ自体がどの地域言語とも共有し、同化していける要素を持っている。かつてわが国で縄文言語である倭語をもとにして流通していた言語が、中国との交流から漢字を表記として利用しようと努めたとき、倭語と漢字との音・音律と意味との齟齬が突き当たった困惑と同質のものが近代にも生じている。オーストロネシア系の言語とインド・アジア系の例えば中国の言語を模倣した表記と、日本近代文化がインド・ヨーロッパ語族の文明を取り入れてきた経緯とは、もし言語表記の技術に固執して、それを突き詰めようとすれば、異質な民族語が持つ表現と、自らが使い慣れ親しんでいる表現との交換にまで行き着かざるを得なくなるものであった。近代の文明や文化は,民族語がらみ西欧近代文化の先進性と同時に、旧来の中国文化をも純化せざるを得ない表現の課題として、多様化し分離されていった。

日本語の源流

2015-09-05 12:33:15 | 言語

 日本語とは、どこから来たのか。これは難題だ。というのも日本人がどこから来たのかというテーマとも対応しているからだ。ただし、最近かなり分かってきている。ウイルス考古学の研究が進み、母子感染するT細胞白血病のルーツを古代にまでさかのぼることで、つき止めようとする研究。日本人の歯形を古代にまでさかのぼることで、つき止めようとするチーム。右脳と左脳の働きからルーツをたどる研究。言語の成り立ちから起源を探ろうとする研究など、多様な方面からの研究が進められている。それによると、少なくとも日本語はインド・アジア語系とヤポネシア語系との混合(混血)で成り立ってきていたことが分かってきた。
 日本人がどこから来たのかについていえば、縄文時代以前の大陸が陸続きであった日本へ、西アジア方面から北方ルートと大陸中央あるいは南方系ルートから移住してきた原人が、先人として定着してきていたと考えられている。その後、地球の温暖化で氷河が溶け出し、水位の上昇で大陸との間を海で隔てられ、海洋航海が可能となってきた時代に入り、弥生時代に大陸とは分断されていた日本列島に、新たに高度な先進文明を持った弥生人達が移住してきたと考えられている。こうした様々な地域からの人種混合が源流となり、漢字が日本に移入される以前の日本語である和語が形成されてきた。
 特にアジア内陸では海辺か山岳の辺境地域、南島ではオーストラリア大陸上とアジア内陸の間のミクロネシア・ポリネシア、オーストロネシア大陸上とアジア内陸の間のミクロネシア、ポリネシア、オーストロネシア諸島にしか求められない。つまり単一ではなく混融していることだけは確かだといえる。これは言語地理的には孤立した「点」のような、系譜を明確には持たず、独自の言語として島の連鎖の中で誕生した言語と考えられる。  

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