天津罪と国津罪
村民の誰かが農耕地の畦を埋めて田に水が流れないようにしたとします。あるいは、近親相姦をしたとします。これらの行為は共同体の掟を破り、暮らしを乱す行為になっていました。そこで祓い清めることで、邪心をその者から取り除くために水で洗い出して清める。あるいは悪霊を祓い清めて追い出すといった宗教儀礼を行いました。つまり、実刑としての具体的な処罰を個人に課すのではなく、行為を促したを「醜悪な汚れ」を追い出すことが初期の処罰の考え方でした。
やがて前農耕的段階から農耕的段階へと移行する過程で、宗教優位から現実的政治優位へと転換し、それに伴い共同幻想としての法規範が渡来人達の文化移入とともに取り込まれ、身体的清祓行為を社の建立に向け、罪に対する法的刑罰の高度な意識を取り込むことになりました。ただ、初期の段階は個々の家族集団内と農耕法的な共同規範は混然としていましたが、「家庭内の家内信仰、掟、習俗、伝習」と「農耕に関わる規範」とのカテゴリーに分類されるようになります。
それが、天津罪と国津罪という分類で、(1)天津罪は主に農耕に関わる刑法にあたり、例えばその中には①畦放(あなはち)-畦を壊して田に張ってある水を流失させる水田感慨妨害。古事記でスサノオが高天原でアマテラスオオミカミに行い、アマテラスは天の岩戸隠れています。②溝埋(みぞうめ)-溝を埋めて田に水が引けないようにする。③樋放(ひなはち)-田に水を引く管を壊す。④頻播(しきまき)-他の人が種を播いたところに、また播いて作物の成長を妨げる。などの農耕法的な共同性に対する侵犯で刑法的カテゴリーを含みます。(2)国津罪は自然的カテゴリーあるいは親族法にあたり、①生膚断(いきはだたち)-人の肌に傷を付ける。傷害罪。②己が母犯せる罪-近親相姦③己が子犯せる罪-実子との相姦④母と子と犯せる罪-ある女と性交し、その後その娘と相姦する。④畜仆し(けものたおし)、蠱物(まじもの)-家畜を殺し、その遺体で他人を呪う。など病気、災害、天変地異、不適切な性的関係など幅も広い。
国津罪は前農耕的な段階を多く含み、兄弟姉妹の性交が含まれず、前氏族共同体にまでさかのぼれる法概念を含むことから、私の考えでは国津罪の方が天津罪よりは古いと考えられます。おそらく、大和朝廷の意図は、天津罪を農耕法として共同体の上位へと引き出し、抽出して法概念として上に置き、それ以外の残った近親相姦、獣姦、天変地異などを国津罪に包含して、清祓対象と共に私法的な下位の概念へと位置付けたと考えられます。
村民の誰かが農耕地の畦を埋めて田に水が流れないようにしたとします。あるいは、近親相姦をしたとします。これらの行為は共同体の掟を破り、暮らしを乱す行為になっていました。そこで祓い清めることで、邪心をその者から取り除くために水で洗い出して清める。あるいは悪霊を祓い清めて追い出すといった宗教儀礼を行いました。つまり、実刑としての具体的な処罰を個人に課すのではなく、行為を促したを「醜悪な汚れ」を追い出すことが初期の処罰の考え方でした。
やがて前農耕的段階から農耕的段階へと移行する過程で、宗教優位から現実的政治優位へと転換し、それに伴い共同幻想としての法規範が渡来人達の文化移入とともに取り込まれ、身体的清祓行為を社の建立に向け、罪に対する法的刑罰の高度な意識を取り込むことになりました。ただ、初期の段階は個々の家族集団内と農耕法的な共同規範は混然としていましたが、「家庭内の家内信仰、掟、習俗、伝習」と「農耕に関わる規範」とのカテゴリーに分類されるようになります。
それが、天津罪と国津罪という分類で、(1)天津罪は主に農耕に関わる刑法にあたり、例えばその中には①畦放(あなはち)-畦を壊して田に張ってある水を流失させる水田感慨妨害。古事記でスサノオが高天原でアマテラスオオミカミに行い、アマテラスは天の岩戸隠れています。②溝埋(みぞうめ)-溝を埋めて田に水が引けないようにする。③樋放(ひなはち)-田に水を引く管を壊す。④頻播(しきまき)-他の人が種を播いたところに、また播いて作物の成長を妨げる。などの農耕法的な共同性に対する侵犯で刑法的カテゴリーを含みます。(2)国津罪は自然的カテゴリーあるいは親族法にあたり、①生膚断(いきはだたち)-人の肌に傷を付ける。傷害罪。②己が母犯せる罪-近親相姦③己が子犯せる罪-実子との相姦④母と子と犯せる罪-ある女と性交し、その後その娘と相姦する。④畜仆し(けものたおし)、蠱物(まじもの)-家畜を殺し、その遺体で他人を呪う。など病気、災害、天変地異、不適切な性的関係など幅も広い。
国津罪は前農耕的な段階を多く含み、兄弟姉妹の性交が含まれず、前氏族共同体にまでさかのぼれる法概念を含むことから、私の考えでは国津罪の方が天津罪よりは古いと考えられます。おそらく、大和朝廷の意図は、天津罪を農耕法として共同体の上位へと引き出し、抽出して法概念として上に置き、それ以外の残った近親相姦、獣姦、天変地異などを国津罪に包含して、清祓対象と共に私法的な下位の概念へと位置付けたと考えられます。