創造的深化

より納得のできる未来を、考えてみるには・・・

受精のドラマ

2015-12-01 10:52:10 | 生命と自然
受精のドラマは精子頭部の酸素が卵子の殻を破り、侵入していくことで起こるが、現在では、その精子を卵子が選別し、自分が気に入った精子を抱き入れることが分かっている。この受精から二七日目までに神経管ができ、やがて脳の主な構造ができあがる。この妊娠初期に急速な分裂と増殖で神経細胞が形成されるがニュートロンは毎秒五万個は作られ、一つのニュートロン(神経細胞)は数万の樹状突起を持ち、胎児の脳は約一五〇種類の神経伝達物質と数兆のシナプス結合で複雑にネットワークを構築していく。この初期の環境形成は遺伝子の指示のみではなく、母親の栄養や健康状態、たばこやアルコールなどの毒素の有無、継続的な音や動きや母親の気分などから放出される神経伝達物質により決定されてくる。地球上に同じ人間が二人とできない原因もここにある。
 母親と胎児との関係はへその緒だけではない。妊娠中の母親の発する信号は無数の経路をたどり、胎児へと一方的に伝達される。例えば、母親が地震、大型台風や火事といった災害に見舞われたり、夫から暴力を受け、あるいは姑から毎日のようにいびられていたとしよう。すると、その女性は胎児に絶えず悲しみのシグナルを送ることになる。コルチゾール、ノルアドレナリンといったストレスホルモンは遺伝子を狂わせ、ニューロンやシナプスを破壊する。それは脳の構造と機能を変質させ、子どものストレス処理能力を低下させてしまい、胎児の防衛優先の脳の発達を促すことになる。
 逆に母が愛され、守られている環境にあると、胎児には成長を促す遺伝子プログラムが選択されるという。
 悲しみのシグナルは、ときとして代謝を加速させ情緒的にも、身体的にも支障をきたしやすくなる。
 愛に包まれて、望まれて生まれるのと、憎悪や不安や暴力の中で生まれるのとでは、大きな違いが出てしまう。母親が、その子を心から望んでいたのか、まったく望んでいなかったか、母親が家族や友人に支えられて、ストレスのない安定した環境に暮らしているのと、悪い習慣に溺れていたり、不安定な環境にいるのとでは、その子どもへの影響は大きく異なってしまう。
 子どもを育てたいという欲求を持ち、幸せを子どもと分かち合えれば、子どもは家族に大きな喜びをもたらし、親を成長もさせてくれる。親に、人間として考えるチャンスを、一人の人間の成長に深く関わる機会を与えてくれる。逆にネガティブな親は、自分が手に入れる事のできなかったものを子どもに与え、自分の人生の埋め合わせをしようと強いる。子は親の鏡という。生きている間に自分にため込んだ有害で自分を傷つけ縛り付けてきた思いを子どもに自然に移してしまう。出生前後から親と子のコミュニケーションは開始する。母がお腹を撫でたり、話したり、歌ったり、歩いたり、走ったりすれば、胎児は感覚器官を通してその情報をキャッチする。
 ストレスが高く自律神経系の乱れは、視床下部・脳下垂体・副腎系ホルモンの乱れで、妊娠中に起きると、早産や胎児の健康に影響する。また、母親の過度のストレスは子ども脳の生理機能を阻害し、脳の処理能力や学習能力にも影響する。これは、胎児の脳の海馬のニュートロンやシナプスの成長を抑制したり破壊する。また、そのような子どもは生涯にわたりストレス過敏症や興奮しやすく、多動症や自閉症など行動障害を発症しやすくなる。
神経科学者ジャーク・パンクセップは「感情の神経科学」で、すべての胎芽は女性の形でスタートするが、妊娠中のある決まった時点でホルモンシャワーを浴びる。それによる発達の方向が決まり、体と脳が男性化していく。この途中でテストステロンのシャワーを浴びそこなうことがある。 本来エストロゲンという女性ホルモンは子宮内では男性らしさを作り、テストロゲン(男性ホルモン)がエストロゲンに変化した場合に、胎児の脳は男性となる。一方、テストロゲンがデヒドロテストステロンに変化した場合にのみ、胎児の体は女性らしさに向かうという。これらの流れでのエラーが、ホモセクシャルやバイセクシャルなどの誘因になるという。
ある時期に流産防止剤として合成エストロゲンが妊婦に使用されていた。この製剤が投与された妊婦から生まれた女の子は、男勝りだったという。遺伝子の欠損や妊娠の環境での毒素はホルモンのバランスを崩しやすい。データーでは、ストレスの多い母親から生まれた男の子は六〇%がバイセクシャル(正常な女性の前では男性らしく振る舞い、正常な男性の前では女性らしく振る舞う)または完全なホモセクシャルのどちらかになるという。
 ボストンのある研究所では妊娠中のうつの母親一一二三人を研究対象として調査。結果、産まれた子どもは泣きやすく、なだめるのも苦労するという。母のうつが重傷であるほど癇が強くなる。これはうつ患者は血液中のストレスホルモンのノルアドレナリン濃度が高くなる。神経質な新生児はノルアドレナリンが高いことが分かった。うつ患者やストレスの高い女性はたばこ、アルコールの常用者が多くもなっている。また、産後も続くことが多く、子どもへの影響は一層悪化していくことになる。
ペンシルベニア大学の科学者達による十代の妊婦の調査では、妊娠とともにうつと不安が始まり、蘇生を必要とする子どもやアプガー指数(心拍数、呼吸、反射性、筋緊張など)が低い子どもが多いという。
女性の社会進出によるストレスや、核家族化、性モラルの崩壊はセックス体験の早期化から、産まれてくる子供たちにも影響を与えていることがわかる。
 アメリカでは妊婦の一五%は暴力を受けている。いうまでもなく暴力を受けた女性の子どもは出生前ストレスの最悪の影響を受ける。しかも、妊娠中の暴力は、出産後も継続する場合が多い。子どもへの虐待のリスクも高くなる。アメリカでは年間三〇〇万件は望まれない妊娠だといわれている。日本では中絶手術は年間や約三〇万件といわけれている。レイプによる妊娠の五〇%は中絶を選び、三二%は出産して育て、一二%は流産し、六%は養子に出すという。
 望まれずに産まれた子どもは生後一ヶ月以内に死亡する率は、望まれた子の二倍、また身体的、情緒的に障害を持つ子の率が高く、自尊心が低いという。親からの世話を十分には受けられず、虐待を受けることは珍しくない。またその子のために心と時間を注ごうとしない。

少年期の定義

2015-10-09 15:45:00 | 生命と自然
 人間は社会的な動物である。という社会性は、共同生活とを営む上で人が共同規範を生み出し、その規範を共通の認識として共有できたとき社会性も社会規範も、法律も公的なものとなる。しかし、それは学習する過程で人は獲得するしかない知識であり、私たちの内部に潜む動物性やむき出しの性のエロスを思うままに解き放つことを抑制し弾圧する社会規範でもある。少年期は、この激しい矛盾にさらされる。

ある乳児のこと

2015-09-15 16:05:14 | 生命と自然
ある乳児のこと
 ある乳幼児の場合、①生後6ヶ月ごろに虫垂炎(盲腸)の発作を起こし、授乳による栄養摂取が適量ではなくなり、乳児は虚弱になり心身の変調をきたした。母乳以外の授乳条件が適正ではなかった。②生後11ヶ月目に祖母の手で離乳はしたものの、すぐに乳児は重い病気にかかった。重い虫垂炎の発作が原因だった。発病後は痩せて大きく成長もせず、歩行もしなかった。③生後16ヶ月目にほ乳瓶しか口にせず、それ以外の摂取方法(スプーンなど)では受け付けず、衰弱していった。そこで対策としてほ乳瓶に大きな穴を開けて、食べることはすべてほ乳瓶を使って摂取した。22ヶ月まで病気だった。④3歳半ころに禿げして虫垂炎の発作が生じた。日時を経て施術。回復に遅れ、意志は回復不可能と考えていた。
 この乳児は、母の虫垂炎の発作を契機に授乳障害を受け、本来受けるべき授乳から吸乳関係を介して得られる無意識の精神形成が歪み、切断されてスムーズな流れが途絶えることで、乳児は自己防衛としての別の自己を生み出す可能性がある。これは多重人格の原因やパラノイア(関係妄想)症を抱え込むことになる。しかも、母親は虫垂炎に耐えながら乳児に授乳を継続せざるを得なかったために、痛みの身体反応(反射)を擦り込まれることになった。母視の接触不備、母からのダメージの浸透はエディプス複合による欠如感覚を植え付けることになった。その乳児とは「シモーヌ・ベーユ」その人である。

生命の起源 その1  ミトコンドリアの誕生

2015-08-17 16:50:03 | 生命と自然
生命の起源   その1  ミトコンドリアの誕生
生命の起源は、原始の地球という惑星に浮遊していた有機分子が合一し、有機体を形成することになる。まさに、この有機分子の科学的合一が生命の起源ともいえる。こうして核を持たない初源の生命体である原核細胞が、有害な放射線などが降り注ぐ地球上に、無酸素状態の中で誕生した。場所はマグマが発生している高温度の海中という説がある。
 この原核細胞は細胞壁で被われ、細胞内の成分DNA(デオキシリボ核酸)の内側にさらに細胞膜が形成されていた。酸素は存在していないので、嫌気性細胞ともいう。
 やがて、長い年月をかけて、これらの原核細胞の中から、太陽の光と二酸化炭素を利用して光合成を行う細胞が出現した。それらの新しい細胞は酸素を排出した。こうなると、今まで存在していなかった酸素を嫌う嫌気性細胞は、そのままでは死に絶えてしまう。酸素のない状態で生きていた原核細胞にとって、酸素が周囲に充満し、高濃度化し始めた酸素は細胞組織を損傷し、細胞自体の死を招きかねなくなた。
 そこで、原核細胞は高濃度の酸素に耐えるために巨大化し、細胞が躰を寄せ合うことで身を守ろうとし始めた。原核細胞内のタンパク質は酸素を受け止める役割を担い始めたのだ。やがて、この新しい環境にも原核細胞は適応し、酸素にも耐えて、逆に酸素を利用していく成長する好気性細胞が出現した。これがミトコンドリアである。