11月2日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
生産者の感激
私が昔、直接生産に従事していたとき、新しい品物を代理店へ持参して見せると、「松下さん、これは苦心された品ですね」と言われたことがあります。こう言われたとき、私は無料で進呈したいと思ったほど嬉しかったのです。これは高く売れて儲かるという欲望的な意識でなくて、よくぞ数ヵ月の造る労苦を認めてくださったという純粋な感激だったのです。
こうした感激は、常に自分の魂と至誠を製品にこめる者のみが味わい得るものだと思います。そしてそのような喜びに全社員がひたりつつ生産してこそ、確固たる社会信用を獲得することのできる製品を生み出すことが可能になるのではないでしょうか。
筆洗
2013年11月1日 (東京新聞TOKYOWeb)
▼中央アジアのキルギスには、海はない。当然ながら海軍もない。だが、ソ連からキルギスが独立した時、引き継いだ一大産業は、魚雷生産であった
▼キルギスが誇るイスイククル湖は琵琶湖の九倍もある、天山山脈に囲まれた美しい湖だ。そこに、ソ連は魚雷発射試験場を造った。十数年前に現地で会った政府高官は苦笑していた。「海軍もない国の魚雷など、どの国が買ってくれるだろう」
▼悪い冗談のような話だが、ソ連という超大国は事ほどさように、各共和国・民族の自立を許さぬような経済開発を進めた。ソ連崩壊直後に各共和国で経済改革が軒並み失敗し、中央アジアでは混乱と貧困を土壌に、イスラム原理主義が台頭した
▼どうも天山山脈の東の方でも似たようなことが起きているようだ。中国政府が新疆ウイグル自治区などで進める西部大開発もウイグルの人々にとっては「山中の魚雷工場」に見えるのかもしれない
▼地元の豊かな天然資源を開発しても、利権を握るのは中央政府の息がかかった漢族の企業ばかり。ウイグル族は貧困から抜け出せず、汚染など悪(あ)しき副産物に苦しむばかり。そんな構図になっているのではないか
▼天安門前に車が突入した事件を、中国当局は、ウイグル族の恐怖主義者(テロリスト)の犯行とみているようだ。本当に怖いのは、テロを生む土壌に目を向けないことなのだが。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます