11月1日 松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
人の世は雲の流れの如し
青い空に、ゆったりと白い雲が流れていく。常日ごろ、あわただしさのままに、意識もしなかった雲の流れである。速くおそく、大きく小さく、白く淡く、高く低く、ひとときも同じ姿を保ってはいない。崩れるが如く崩れざるが如く、一瞬一瞬その形を変えて、青い空の中ほどを、さまざまに流れてゆく。
これはまさに、人の心、大のさだめに似ている。人の心は日に日に変わっていく。そして、人の境遇もまた、きのうときょうは同じではないのである。喜びもよし、悲しみもまたよし、人の世は雲の流れの如し。そう思い定めれば、そこにまた人生の妙味も味わえるのではないだろうか。
筆洗
2013年10月31日 (東京新聞TOKYOWeb)
▼神様がいなくなった。「職業野球」が一年で最も熱く燃える季節に「打撃の神様」の川上哲治さんが亡くなった
▼「打撃の神様」「赤バット」「弾丸ライナー」「哲のカーテン」。これほど名文句に恵まれた野球人はいない。王貞治さんが「記録」、長嶋茂雄さんが「記憶」に残る選手なら川上さんは「言葉」に残る野球人だ
▼内外野の間に落ちるテキサスリーガーズ・ヒット(ポテンヒット)でさえ、川上さんが量産すれば粋な文句が生まれる。「テキサスの哲」。戦後復興期。焼け跡の野球少年をどんなに勇気付けたか
▼天才、安打製造機は今後も出てくるが、「神様」はもう生まれないだろう。一九五〇年夏の打撃練習中だった。「来る球、来る球みなピタリと手元で静止した」。「バットは振らなかったのはトイレだけ」という努力の賜物(たまもの)だった
▼「打撃の神様」は、もう一人いる。レッドソックスの四割打者テッド・ウィリアムズ。同じ左打ちで川上さんも手本にした。観客に愛想のない選手で、作家アップダイクは「神々は(ファンの)手紙に返事を出したりしないものだ」と書いたが、打撃技術向上、勝利を最優先した川上さんのイメージに重なる。神様とはそういうものである
▼巨人、レッドソックスともに日本シリーズ、ワールドシリーズに挑んでいる。二人の頑固な神様は試合を見てどんな話をするのか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます