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五劫の切れ端(ごこうのきれはし)

仏教の支流と源流のつまみ食い

玄奘さんの御仕事  四拾壱

2006-05-03 08:52:54 | 玄奘さんのお仕事
■法顕さんが長安を旅立ったのは西暦399年とされています。その時の年齢が64歳だったという事実が、急速に高齢化し続ける日本に暮らす人々に新たな勇気を与えてくれるかも知れません。法顕さんが長安で修行している間に、今風に言えば国籍が三回も変わったことになります。テイ族の前秦、鮮卑族の西燕、そして羌族の後秦の順番で支配者が入れ替わったからです。異民族の殺し合いを間近に見た法顕さんは仏教をより完全な物に . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  四拾

2006-04-25 12:23:37 | 玄奘さんのお仕事
■クチャを攻め亡ぼしながら故国の大敗を知った呂光は独立を決意します。河西回廊の武威に首都の姑蔵を定め、その版図はカザフスタンのアルマトイに及び、パミール高原・崑崙山脈・祁連山を北の境とする東西に長い長方形になりました。クチャ攻略の隠された目的だった鳩摩羅什の拉致も実行されていたのですが、高名な鳩摩羅什さんを勝手に老僧と思い込んでいた呂光は、御本人を見て「若造」と軽侮の念を持ってしまいます。勝利の . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾九

2006-04-16 10:16:59 | 玄奘さんのお仕事
■焉耆国から西南に200余里(1里は450メートル)、小山を越えて河を二つ渡って更に行くこと700余里で屈支国に到着です。ここがクチャ国、鳩摩羅什さんの生まれ故郷であります。鳩摩羅什さんは父上様がインド人でもありましたし、二番目の子を生んだ後の母上様は俗世を悲しんで夫の反対を押し切って出家してしまいます。7歳になっていた鳩摩羅什さんも母親と一緒に出家し、毎日経文を千偈ずつ暗誦して周囲を驚かす神童ぶ . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾八

2006-04-12 12:58:46 | 玄奘さんのお仕事
■隋から唐に移る時期に王位を継承した麹文泰は、高祖に対しても抜け目無く臣下の礼を取って、遠いシリアからもたらされた珍しい犬を献上したりしていますし、血生臭いクーデターで即位した太宗にも黒狐のコートを贈ったそうです。東に向って忠勤に励んでいた一方で、反対側の西突厥に対しても手抜かりなく外戚関係を結んでも居ます。文泰さんの曾祖母は西突厥の可汗の娘だったり、玄奘さんが命懸けで挨拶に行こうとしている統葉護 . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾七

2006-04-09 15:44:49 | 玄奘さんのお仕事
■玄奘さんは並外れた頭脳と精神力、それに加えて素直な心と頑強な肉体という類稀な素質を持っていた方で、ウソか本当かは分かりませんが、厳しく戒律を守っているのを承知の上で、玄奘さんを一目見ただけで年頃の女性達はうっかり恋心を抱いてしまうほどの美男子で、その声は常に涼やかで清潔感が溢れていたのだそうです。そんな素質に恵まれた玄奘さんですが、真諦さんが翻訳した経典と彼が指導した高弟達の御蔭で仏教を学べたの . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾六

2006-04-04 16:09:52 | 玄奘さんのお仕事
■お話は煬帝を離れて、再び道基さんに戻ります。道基さんは可愛い小僧さんだった玄奘さんの最初の先生でした。隋末の大動乱を逃れて国内を流浪した末に四川省に落ち着いて修行を続けた玄奘さんが慕ったのも、道基さんでした。道基さんには同学の兄弟弟子が4人おられました。智凝さん、法護さん、慧景さん、宝進(上に日が付きます)さんです。道基さん達の先生が靖嵩さんです。靖嵩さんは法泰さんの一番弟子としてとても有名な方 . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾五

2006-01-31 20:03:53 | 玄奘さんのお仕事
■道基さんは玄奘さんにとっては忘れ難い学恩の有る偉いお坊さんです。何よりも若き玄奘さんにアサンガが著した『摂大乗論』を教えて下さった方なのです。しかし、この有り難い出会いを可能にしたのは、何故か悪名高い隋の煬帝の御蔭なのでした。木偏を火偏に変えられるほど民を苦しめた暴君とされている煬帝ですが、仏教徒にとっては忘れては行けない業績を残してくれた皇帝なのです。巨大な運河を造って豪遊したとか、無謀な高句 . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  参拾四

2006-01-26 20:18:44 | 玄奘さんのお仕事
■前回、唯識思想の分裂に言及しましたが、これをもう一度、唯識思想全体の流れ、特にインドから中国への流れの中に置き直して見る必要が有りそうです。ナーランダ僧院に着いた玄奘さんの活躍に目を奪われてしまうと、個人的な才能を賞揚するだけで終わってしまうのは、玄奘さんの仏教史に占める大きな意義を見失ってしまう事にもなります。玄奘さんをモデルとした『西遊記』では、インドに行く目的は仏教経典のオリジナルを持ち . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事 番外(1)

2006-01-17 01:39:15 | 玄奘さんのお仕事
■長長と拙ブログを放置しまして、御無沙汰を決め込んでおりましたが、気が付きますれば(新暦ではございますが)年も明け、世は季節はずれの「初春のお喜び」を形ばかり交換して、年末年始の帰省ラッシュと「ゆうたあん」ラッシュの決まり事を終えたのでございます。旧年中は、初めて本を出すなどという大それた暴挙を企んだせいで、すっかり当ブログから遠ざかったおりました。毎日、アクセス履歴を拝見する度に、実に手堅い訪問 . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事 其の参拾参

2005-09-24 18:53:26 | 玄奘さんのお仕事
其の参十弐の続き ■一足跳びに、唯識思想が人間の心の奥底を分析して見つけ出した「阿頼耶識」に話を進めてしまいましょう。凝然さんは、アサンガ(無著)、ヴァスバンドゥ(世親)から真っ直ぐにダルマパーラ(護法)に唯識の正統が伝えられたように書いていますが、実際は、無著と世親が唯識を唱えて100年ほど後に、「識」についての見解が分かれてしまうのです。5世紀に始まるナーランダー僧院では、有名なディグナーガ . . . 本文を読む