五劫の切れ端(ごこうのきれはし)

仏教の支流と源流のつまみ食い

玄奘さんの御仕事  其の弐拾四

2005-06-29 07:00:00 | 玄奘さんのお仕事
■釈尊の最期を記録した仏教経典は、とても描写がリアルで、「汚(けが)れ」と「清(きよ)め」に神経を使う日本の神道系の信仰には馴染みません。釈尊はボロを着て裸足で過ごしていましたし、すさまじい下痢症状に苦しみながら最期を迎えるのです。とても尾篭(びろう)な話ですが、原始経典は正確に記録しようと努力しています。症状からすると、鍛冶屋のチュンダさんが提供した食事は、やはり夕食だった可能性が高まります。チ . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事 其の弐拾参

2005-06-25 22:38:38 | 玄奘さんのお仕事
其の弐拾弐のつづき。 ■釈尊の教えに帰依したカピラヴァストゥの最期は、「不殺生戒」の物語です。前に登場したヴァルーダカ王の遠征軍を迎えた時、カピラヴァストゥの人々は、不殺生戒を守って完全無抵抗主義を貫いたと伝えられています。怨念に燃えたヴァルーダカ王の虐殺命令が実施される中で、一切の抵抗をせずに殺されていった人々を葬った墓地が、遺跡の西北に残っていたそうです。玄奘さんは、この墓所を訪ねているので . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  其の弐拾弐

2005-06-22 06:18:51 | 玄奘さんのお仕事
其の二拾壱の続き ■玄奘さんは北に足を延ばして、釈尊の故郷カピラヴァストゥを訪ねます。晩年の釈尊が、若かりし頃の思い出話をしておられる御経が残っておりまして、宮殿や後宮の美女達の話が出て来ます。そこから王子様伝説が生まれるのですが、一説には当時のカピラヴァストゥは小国で、絶対的な権力を持つ支配者は持たずに、クシャトリア(武人)階級の集団合議制を採っていたとも言われています。釈尊の父上のシュッドダ . . . 本文を読む

ポール牧さんの自殺 其の参

2005-06-19 10:22:16 | 法話みたいなもの
其の弐の続き。 ■ポール牧さんがマンションから飛び降りてしまった事件が起きた一月後の5月20日に、九州の名刹が焼け落ちる「事件」が起きました。すぐに放火事件であることが判明したのですが、犯人は26歳の修行僧だったので、ニュースを知った人の中には、三島由紀夫『金閣寺』と重なるイメージを持った人もいたようです。まあ、金閣寺全焼に至った現実の放火事件も、「滅びることで永遠の美を獲得する」ための放火では . . . 本文を読む

ポール牧さんの自殺 其の弐

2005-06-19 10:17:44 | 法話みたいなもの
其の壱の続き。 ■さて、ポール・牧さんが二度目の出家をした時に、どういう訳だか、ワイド・ショーの「芸能コーナー」で紹介されておりました!追悼記事では「禅寺」としか書かれていないので、宗派ははっきりしませんが、出家の決意を確認する「問答」をしている様子がテレビで放送されました。本来は宗教上の儀式ですから、見世物にしては行けないのですが、何せ、ここは日本ですから……。それに、「芸能活動の傍ら……」の . . . 本文を読む

ポール牧さんの自殺 其の壱

2005-06-19 10:06:31 | 法話みたいなもの
今回は玄奘さんのお話から横道に反れ、先日のポール牧さん自殺から仏教について考えることにします。 喜劇役者 ポール・牧さん 芸人・僧侶行きつ戻りつ ……1941年、北海道の最北に近い天塩町の禅寺に生まれ、10歳で出家した。58年、僧侶の道をあきらめて上京、芸能界に入った。故・関武志さんと「コント・ラッキー7」を結成したのは68年。関さんが亡くなった亡くなった後も、テレビや舞台に出演し、全身でリズ . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  弐拾壱

2005-06-16 01:58:47 | 玄奘さんのお仕事
■しかし、自分の血に悩み続けて成長したヴィルーダカ王の怒りは深く、釈尊の言葉で消えるようなものではなかったのでした。王は再びカピラヴァストゥを灰燼に帰すための大軍を動かします。この二度目の出陣の時に釈尊はどうしたのか、釈尊が遠方に出向いている時を狙っての攻撃だったのか、あるいは王の心の闇の深さを知った釈尊が黙って見送ってしまったのか、釈尊は二度までは出陣を思い止まらせたと伝える経典も有るようですが . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事  其の弐拾

2005-06-12 14:19:07 | 玄奘さんのお仕事
■ナーランダ僧院に近づいた玄奘さんを放り出して、文法談義に深入りしてしまったようです。玄奘ファンの皆様には御迷惑さまでございました。玄奘さんが、就学前に巡礼して歩いた道筋を辿って祇園精舎まで御話が進んでいたので、再び、そこから始めましょう。玄奘さんは、文法学の重要性にまで気が付く大変な学者でしたが、信仰の深さにも目を向けなければ行けません。玄奘さんが生涯に読んだり翻訳したりした膨大な数の仏典は、哲 . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事 其の壱拾九

2005-06-08 21:49:04 | 玄奘さんのお仕事
■サンスクリット文法学は、世界最古の文法学だと書きましたが、仏教文化との関係では、別の見方が出来るようです。紀元前1200年頃に成立した『リグ・ヴェーダ』は、自然現象を神々の姿と活動だと解釈して、神々を讃えて祝う祭儀の言葉を並べたものです。時代が下るにつれて、だんだんと哲学的な要素が加えられて、一番新しい文章には独自の哲学的思弁が始まっている事を示しています。祈りは言葉ですから、古代のインド人達は . . . 本文を読む

玄奘さんの御仕事 其の壱十八

2005-06-06 07:01:15 | 玄奘さんのお仕事
■第16回で御紹介しましたように、『大唐西域記』でパーニニ伝説を紹介している玄奘さんですが、ちゃんと文法学の奥義を究めていた証拠が残っています。玄奘さんが帰国してからの二年間を復習してみますと、 645年 1月7日、玄奘帰国。2月1日、洛陽で太宗に謁見し西域報告書を求められる。更に還俗と高句麗遠征に同道を請われるが、玄奘は固辞。太宗は母の菩提寺として建立した長安の弘福寺を翻訳所に提供。3月、弘 . . . 本文を読む