それでも永山則夫が好きだ(スピンオフ)

「ねっとわあく死刑廃止」や、無期懲役囚で「とらえなおし」で知られる飯田博久さんや、小松川事件の李珍宇のことを書いたり色々

『沈黙の声』第36号(その2)(90年6月20日発行)東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件

2017-01-26 01:01:02 | 会報『沈黙の声』(その3)

(その1)から続く

89年8月9日、前月23日に八王子署に逮捕された青年が、6月6日失踪した幼女殺害を「自供した」との情報がながされるや、マスコミはいっせいに青年を実名で「犯人」と報道し、「他の3件」との関連性を一方的に示唆し、法相後藤正夫は本件逮捕前の10日に『死刑ぐらいではおさまらない』云々と、公的立場をかなぐり捨てて放言した。この異常な状況の下で、青年本人、家族に対する目をおおうばかりの集団リンチ報道、被害者家族の人権をも踏みにじるあさましい取材合戦がくりひろげられた。

88年の「天皇病状報道」に次ぐ、このマスコミの乱脈ぶりと、それに呼応して「野獣に人権なし」とわめき立てる悪質文化人らに対して、一般読者の新聞投稿は、極めて冷静だった。8月12日から31日までの朝日、毎日、読売の投書欄に掲載された関係投書計36通のうちビデオなどの影響を指摘する10通に続いて、犯行の原因に目をむけるもの9、報道姿勢の批判7、という内容であり、「犯人を死刑にせよ!」という「素朴な市民感情」とは明らかに違った、生の市民の声が、そこにあったのである。

報道への反省は、マスコミ内部からも、おこりはじめた。

また、人権と報道・連絡会は、在京の新聞、通信社、テレビ計14社に抗議・質問状を送った。(6社が回答。その内容と批判は、法学セミナー増刊『犯罪報道の現在』日本評論社P.204~219参照) こうした内外からの批判の中で11月1日より毎日が、12月1日より全紙が犯罪報道における「呼び捨て」廃止に、ひとまずは踏み切ることとなったのである。 

マスコミによる「凶悪事件」キャンペーンと、「世論調査」の名による世論操作の「効果」を計算していたかのように、司法権力はXデー自粛あけの攻勢を開始した。11月10日、福岡拘置支所で62歳の老死刑囚を処刑、そして10月から90年4月までの半年間に、最高裁は7名に死刑判決を出したが、これは87~8年の死刑確定ラッシュ以上のペースである。そして3月30日には、「幼女連続殺人事件」裁判が、はやくも開始された。

(その3)へ続く

 

 



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