最近、文献で昔の風俗を研究する文献が多い。本作もその流れ。風俗の裏打ちとなる時代背景などマクロの相関についての俯瞰的考察が薄く、蛸壺的な観点が多いのは残念だ。
対象は大正から昭和初期で、明治以降発展した「あこがれ」の洋風の「応接室」などの一般家庭への台頭期だ。家事の政治学(柏木博)が参考となる。
面白いのは:
・良い趣味への憧れ、住居(インテリア)、服装(紳士)
・百貨店がファッションのTPOを解説、紳士への憧れとシーンに合った服の選択を解説、相談
・床の間と美術、分かり易く、偽物がない、お手軽が百貨店、一揃いできるライフ・スタイル提案
・小芸術(Lesser Art)、応用芸術、工芸→室内を飾るもの、生活の工芸品、芸術家の道楽作品
・風流商品:江戸以来の好事家趣味の継承、頒布会や展覧会、団体
・モダニズムから、「国風」、「新日本調」(昭和10年代)の流行、和洋折衷で椅子のある和風様式
などが楽しめた、しかし、各章がばらばらで論文の寄せ集めのようだ。
百貨店研究者にはお薦め