漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

不用品を処分する名人

2012年11月14日 | せけんばなし

先日、テレビで、「部屋片づけの名人」が、
ゴミ箱を引っ繰り返したような若手芸人の部屋を整理しながら、

「衣類の保存スペースを決めたら、
 無闇に増やさないように、一枚買ったら、一枚捨てる」と指導していた。

その手際の鮮やかさに感心しながらも、

だけど、まだ着られる物を捨てると云うのは、
私のような世代には「罪悪感がともなうからナァ」思いながら見ていたら、

むかし住んでたご近所に、
心を痛めることなく、「要らない物を処分する名人」がいたのを思い出した。

彼女はバーゲンが大好きで、
夏の終わりには夏物を、冬の終わりには冬物を大量に買いまくる趣味があった。

その趣味は、「安ければ何でも」と云う買い方だから、
冬物を買い込んだあとに、少しづつ暖かくなってくると、その処分に困る。

なにしろ、押入れの中は、
ここ何年かで買ったバーゲン品が山のように押し込まれているのだ。

とてもじゃァないが、
今年買った冬物をひと夏保存しておくようなスペースはない。

しかも、「安いから」と云うだけで買った衣類は、
「買うのが楽しくて」買っただけで、

今となって冷静に考えてみれば、
次ぎの冬が来ても着たくなるような色合いやデザインではないようだ。

何よりも、このかさばる、
買いたての冬物衣料を仕舞いこむのがメンドウだ。

実は彼女も、
「買い物好きな女性」のご多分に漏れず、
「掃除や整理」などと云うことは、大の苦手なのだ。

そこで、彼女はどうしたか。

買った衣類を何枚かづつまとめ、
せっせと段ボール箱に小分けして、あとはクロネコに電話するのである。

そのころ始まった宅急便は、
日本全国どこへでも翌日には届けてくれる。

あとは、クロネコの社員が来たら、用紙に宛て先を書き込むだけ。

そうして荷物が片付いたあと、
彼女は、嫁に行った姉や、大阪や神戸で働く妹たちに電話する。

「あのネ、アンタに似合うと思う服があったから買っておいてあげたヨ、
 明日にはクロネコで届くと思うから、・・・・、

 ああ、そんなに礼を云わなくてもいいから、姉妹やねんから。」

これなら、無駄に捨てる分けではない上、
身内を援助したことになり、しかも感謝までされるのだから心が痛むこともない。

もっともこれが成功したのは最初のうちだけだったそうである。

なにしろ、ある日、
今年、妹に送ったはずのセーターが、

十日ほど後には、こんどはまとめて姉から送られて来たのだ。

「どうしたんだろ」と首をかしげていると、
間もなく姉から電話が掛かって来た。

「ああ、わたし、

 妹が、わたしに、と買ってくれたセーターを貰ったんだけどね、
 派手すぎて、とても私には着られそうもないから、あなたにあげるからね。

 ああ、
 礼なら妹に言っておいて、わたしが買ったのじゃないから。

 じゃあね。」

その後、そのバーゲン品をどうしたかは、
間もなく「要らない物を処分する名人」が引っ越して行ってしまったので知らない。







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