漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

わらいばなし

2011年09月16日 | ものがたり

江戸時代の小話を二つほど。
        
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毎日、山家から柴を担いで京の町まで出て行く、焚き木売りの男、

嵯峨あたりで庵を結び、
涼しげなる座敷にて、

机にもたれながら書物など読み居る老人をうかがい見て、

「あのようにして暮らしたらば、
 さぞ、おもしろきことであろうに、」とうらやみて通りけるに、

閑居の人、
縁先へつつっと出て、両手をあげ、

大きくあくびのびをして、

「アア、金がほしいナァ」。

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風流人の次ぎは風流医者。

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けしからず閑なる医者あり。

女房、迷惑して、

「近所では、お前さまのことを下手医者と申しておりますぞえ、
 なぜ、お前さまの療治はききませぬ、」

医者殿、少しも騒がず言わるる処には、

「イヤイヤ、おれは名人上手なれど、病人がみな下手じゃ」

「それはまたどう云う?」

「知れたこと、
 俺は書物にある通り、古方を用いれど、
 病人が みな 古方どおりに患わぬからじゃわい」。



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