漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

大阪純愛伝

2013年10月03日 | せけんばなし

我が同居人ドノの元の同僚で、
古くからの友人が、

先年ご主人を亡くし、
このごろは会うたびに「淋しいよう」と言うのだそうです。

でも、このご主人は、
いい人なんですが、俗に云う「カイショナシ」。

漢字で書くと「甲斐性無し」。

つまり生活力のまるでない人で、
酒も博打も、もちろん女遊びもしないのに、

商売では損をしてばっかり。

結局、その友達が「朝に、晩に、」と働いて、
一家の生活費から、
子供たちの学費まで稼いで、

三人の子を立派に育てたと云う分けなんですね。

さてそのダンナも、数年前に患いつくと、
去年、とうとう大借金だけ残してこの世を去った。

以前から、
何かと相談相手になっていた我が同居人ドノは、
「やっと、と云う感じで亡くなったんやけど、借金の跡始末が大変らしい」と同情していた分けです。

昔から、相談されるたび、
あきれて、
「あんた、もう別れたらええやんか」と言い続けていたのだそうですが、

彼女はいつも、
「そうやねん」と言いながらも、、
「でも、もうチョッとだけ辛抱してみるわ」と云って帰って行くと云う繰り返し。

「まぁ、あれでも、
 愚痴ったら、ちょっとは気が晴れるやろうからね」と嫌がりもせず、
長らく聞き役を勤めていたようなのですが、

いざ厄介者だった旦那が居なくなってみると、
彼女も一人暮らし。

なにせ、この世の中、
しっかり育てた息子と云うのは、
親元から遠く離れて暮らしがちなものですからね。

近ごろ彼女は、よく言うのだそうです。

「夜中、一人でご飯食べるのは淋しいよ、
 テレビ見て笑うのも一人やし、

 このごろは夫婦喧嘩したこと思い出しても涙が出てしまうねん、

 ・・・おかしいやろ。

 あんたには旦那が居るから、
 そんな気持ちは分からんやろうけど・・・」。

先日も彼女と会って帰ってきた同居人ドノがしみじみ言うのです、

「あのコ、ホンマに、ダンナのことが好きやってんなぁ、」。

「え、」と聞き返すと、

「私に、いくら愚痴をこぼしている時でも、
 あれキッと、別れる気持ちなんかゼンゼン無かったんやろナァ」、と言うのです。

その真ゴコロは、まさに「大阪純愛物語」。

ちょっとシンミリしたので、

「そうやで、なんぼカイショナシでも、
 ダンナを捨てたらアカンのやで」と混ぜ返したのですが、

その時の同居人ドノは、
笑いもせず物思いにふけっておりました。








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