先日、漫才の中川家の二人が、
プロになって初めて芸人の素顔を見たときの話をしていた。
舞台では面白おかしくふざけている、
あるベテラン芸人が、
楽屋では、
タバコを吸いながら、
「人を殺しそうな顔をしてテレビを見ていた」、と。
これも先日、テレビでよく見かける落語家に、
ある人が、
「いい落語家になるにはどうしたらいいのですか」聞いていた。
その人の云わく、
「落語を好きで好きで、しかもそれをいつまでも続けられることやね。
朝から晩まで落語の稽古ばかりしていて、
それが五年でも十年でも続けられるヤツには、誰も勝てない」。
そしてその人は最後にひとこと、
「だから、おれはダメやね」と自嘲気味に付け加えた。
むかし、誰だったかもこんなことを言っていた。
名人になる人は、人気など気にしない性根がいる。
下手な人気者がチヤホヤされるのを横目で見て、
ただ一途に芸に打ち込むことしか出来ない人でなければだめだ。
だからテレビ局から呼ばれることもないし、
たいして金にならない仕事ばかりしているから貧乏だし、
家庭的にも恵まれないから、
苦虫をかみつぶしたような”傲岸不遜な顔”になる。
そう云う風雪に耐えた顔が「名人面(めいじんづら)」なのだ、と。
ここまで書いて来て、
ある芸人さんの顔が思い浮かんだ。
「久しぶりにその落語会に行こうかな」と、いま思っている。