漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

藪の中

2012年05月29日 | 政治・経済・こぼれ話

芥川龍之介の作品の中に「藪の中」と云う短編小説がある。

身分ある武士が盗賊に殺され、
その妻が強姦されるという事件が起きた。

殺された武士、その妻、強盗がそれぞれ、
法廷の場などで証言するのだが、
そのいずれの証言も、最も重大な点で微妙に喰い違っていると云う内容。

この小説発表以来、「藪の中」は、
「関係者の言い分が食い違っていて、真相がわからない」ことを云うようにもなった。

やがて「藪の中」は、
もうひとつの短編「羅生門」と併せて映画化され、
黒澤明監督が「世界のクロサワ」へと飛躍する跳躍台となった。


今、国会で原発事故の「調査委員会」が開かれていますが、
そこに招致された参考人たちの「証言」が微妙に違う。

東電側は「全面撤退とはゼッタイに言ってない」と云うし、
海江田元経産相や菅元首相は、明確に「言った」と言う。

原子炉を冷却するための海水も、
東電側は「首相の支持で中断しようとした」と云うし、
菅首相は「そんなことは言ってない」と言う。

地震の翌日、首相が原発へ乗り込んだことについても、
海江田氏や枝野元官房長官が「混乱を助長した」と言っているのに対し、
元首相は、「現場に行った事で担当者の顔が分かって良かった」と言っている。

お互いに「責任のなすりつけ」をしているようでもあるし、
時によっては「かばいあい」をしているようでもある。

いずれにしても「証言の喰い違い」は、
どちらかが「ウソを吐いている」と云うことになる。

もし、ウソなら、
「偽証罪」にも問われることになるので参考人たちも必死、

「社会的地位と名誉を懸けた証言」の、
真偽を見分けるのは容易なことではなかろうと思う。

今のところは、「真相は藪の中」と云うしかないようですが。








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