漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

都都逸 二人連れ

2016年03月15日 | ユーモア


男が唄う
ええ女やなと、見初めて通うた百か日 思い遂げたは三つき半 

女が唄う
わたしの帆舟にあのハゲ乗せて 行くも行かぬもそよ風まかせ

男が唄う
星の数ほど男はあれど「ホンキで惚れたはアンタだけ」やて、アイツが言うてた

女が唄う
あんな男のどこがいい マジな顔して尋ねる人にゃ 指を丸めてこれがあるモン

男が唄う
釣った魚に餌とられ過ぎ、ホンマはワシが釣られたのやがな

女が唄う
着物も増えたし お店も持てた あとはあのハゲ捨てるだけ

男が唄う
惚れたアイツのつれないそぶり 顔で笑って心で泣いて 
ワシも男や、アンナ女に未練があるかい!

女が唄う
店はつぶれてお金も消えた ホスト遊びに度が過ぎたかも あとはハゲしか頼れぬか

男が唄う
「やっぱりアンタが忘られへん 頼りにするのはアンタだけ」 
すがりつかれたアイツの涙 嘘と知りつつ抱き寄せた

女が唄う
逢うた数から 逃げよった数を 引けばこのハゲ 残るだけ
あんがい、私に似合いかも

二人で歌う
こうして、こうすりゃ、こうなるものと、知りつつこうして、こうなった

男 「ほな 行こうか」
女 「うん、ウチのこと捨てんといてな」
男 「よっしゃ よっしゃ」

ト、女、客席へ向かって舌を出し
男の腕に組みつきながら舞台下手へと消える  【幕】





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