未熟者武道記

空手徒然。
二つの戈を止める武を核とし、諸諸と調和して溶け込んで。(いけたらいいな)

ネコの妙術

2019-09-22 01:02:56 | 書籍
『五輪書』は広く知られていると思いますし武道に関わる人ならば一度は手にしたことがあるかもしれません。

私は武道関連の書籍も好きでジャンル問わず色々読むのですが(入りきらないのは東支部に置いてます)、その中の良著に『剣と禅』というものがあります。

これこれ。

伊藤一刀斎をはじめ様々な剣術家のエピソードを綴ったものですが、その中に山岡鉄舟も愛読した書として『猫の妙術』と簡単なエピソードが紹介されています。

これがまた面白いのです。左側の本は最近出たもので超訳風に現代語訳されていて児童書の如く読みやすいです。訳の高橋氏御自身も武道に携わる身ですので入りやすいのでしょう。右のは原文と硬めの現代語訳があります。

簡単に紹介しますと、
屋敷に入り込んだ巨大鼠を追い出すべく、技に長けた猫・気合に満ちた猫・調和を信条とする猫が次々と挑むも全て返討ちに合います。そこで呼ばれたのが一匹の老猫。部屋に入るなりあっさりと鼠を捕らえてしまい、そこから猫の座談会が始まるという内容。

返討ちに合う猫たちというのは武道経験者が通りがちな道順です。技に溺れる時期があり、歳に勝てなくなり始め気迫で誤魔化そうと試み、そして戦うのが面倒になり始めた頃に調和です、など達人然とした胡散臭いことを言い始め。

これら全てを一蹴していく老猫。老猫の語らいは所謂【老荘思想】が基になっています。

七十連勝がなくなった時「吾、未だ木鶏たりえず」という言葉を残した不世出の大横綱双葉山。この木鶏の話は荘子にあります。少年部の子たちには是非読んでほしい話の一つですが、老猫の言葉を読んでいると老荘思想の大筋も掴むことができます。

道理に従って生きる。道(TAO)を説いたのが老子です。
空手道。道は繋がって行かねばなりません。手を替え品を替え客寄せを第一義にし見世物みたいな事をやってるからフルコン人気は下がる一方なのではないかなとも思いますね。道理に沿っていれば人が集まるのもまた道理なのでは。武以外にも生き方として色々考える処のある近世文学の傑作だと思います。在学時に知っていればこれと五輪書を卒論にしたでしょう。

是非一読あれ。




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