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猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

梅原 猛 「隠された十字架」 - 法隆寺論 -

2011年06月06日 20時58分15秒 | 本の感想

     ↑ 新潮文庫 昭和56年4月25発行 これは平成16年6月15日 45刷 


この著作があらわされたのは1972年である。すでに40年前に近い。
従ってここに書かれている 梅原氏 の説に対して新理論、新事実は山ほど出ているかも知れない。
巻末の解説を書いている 秦 恒平氏 も

…… 版を重ね続けてきた。その間には坂本太郎氏の「法隆寺怨霊寺説について」(日本歴史第300号)などを皮切りに厳しい批判や反論もあらわれた。

 ↑ 解説より引用

と書かれている。
私は不勉強でそれらのすべてを知らないが、それでもまだこの 梅原論 は十分説得力、魅力のある論文だと思う。(小説ではない)


雑誌「クレア」1992年の9月号は夢の永久保存版「THE少女マンガ!!」の特集であった。
インタビュー記事中で、 山岸 凉子氏 がもともと聖徳太子って変 !と思っていたところ、友人から 梅原氏の「隠された十字架」に今あなたが言ったことが書いてあるわよ、と。
それで早速読んでみたら、もうゾクゾクゾクーッときて、
名作「日出処の天子」をあらわしちゃったと。
これを知ったとき、読まずになんとしょう、と思っていたが、本当に読んだのは7年くらい前か。

そのときは気がはやっていたせいか、梅原氏の資料を駆使したしっかり、ねっとり、検証だらけの文章に始めはちょっとイラついた。
だから結論はなんなのさ。
今思えば私も多少若かったのかも知れない。
今回再読してみるとこのじっくりさが、病気入院中だった自分にちょうど良かった。

提示された古典や先人の書の年譜等もじっくり読む。
やはり本と言うものは2度3度読み込まないとその全貌は身に入らない。
良い本、良いマンガほど、読み返す都度新しい発見があるのは皆様ご存知のとおり。

梅原氏は第一部として、昔から言われている「法隆寺の7不思議」の伝説にかけて、「梅原氏の考える七つの謎」を提起し、第二部でそれらを解く解決への手かがりを探し、最後の第三部で真実の開示を行っている。
中でなんと言っても読みでがあって楽しく面白いのは第二部の「解決への手掛り」である。
小説家らしく「情熱的な女帝の恋」やら「無残な蘇我入鹿の死」「野心家中大兄皇子の母に対する複雑な思い」「藤原鎌足の長男の不幸な一生」などを生き生きと活写していく。
一編づつ小説としてもっと読みたいくらいだ。

法隆寺の建造に関して 正史 である「日本書紀」に一言も書かれていないそうである。
他にも官寺、大寺で有りながら建造年が書かれず、
「火事になった」
と言う記事でいきなり出てくる寺も多いそうだ。
「記紀 古事記・日本書紀のこと」の記事は不親切だと梅原氏はぼやく。

氏が言うように「記紀」が 藤原不比等 が作らせた「勝者の歴史書」ならばまったくのウソは書かないまでも、自分たちに都合の悪いことはあえて書かないだろう。
我々だって仕事のリポートではそんな潤色はしょっちゅうである。(笑)
しかし、氏は言う。
いかに取り繕って歴史を隠してもそのしっぽはどこかに出てくるものだと。
それらをひとつひとつ拾い上げ検証しながら、また地元の伝承を紹介しながら氏の解説は続く。
この地元の言い伝えと言うのがさりげなく真実を伝えているようで面白い。
いつの世も大衆は侮れないものだ。

法隆寺は
誰が - 聖徳太子ゆかりの一族か・藤原氏か -
何のために - 太子の徳を称え後世に残すためか・梅原論のように太子の霊を封じ込めるためか -
作ったにせよ、祭られているのは太子(及びその悲劇的な最後をたどった太子の子供、孫一族)が祭られているのは間違いない。
私はだからこの本を読めば太子本人についていくらかの人物像らしきものが解るかと思っていた。
が、そちらに関してはあまり期待しないほうが良い。そういう本ではない。

一般に思われている徳の高い高僧のようなイメージとは違う「戦う聖徳太子」のイメージが増えた程度かな~。


分厚い本だし内容少しばらしてしまったけれど、古代ロマンの謎を解き明かしたい方は、じっくり読んで見てください。


      飽きるので入院中毎日少しづつ読んでいたトミー。



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も持ってますよ。 (母宮)
2011-06-09 08:56:52
古い本ですが、何度読んでも面白いと思います。
(長くて、引用文が読みにくいので、読むのに気合がいりますが、、(笑))

私は高校の時、国語の女の先生に教えてもらい、何度か読み返しました。。
そして『聖徳太子』にはまり、その先生と一緒に「日出処の天子」を読みふけったのでした。

小学校の時の遠足で行った「正倉院宝物殿」かどこかで、後世に書かれたであろう聖徳太子の生い立ちみたいな掛け軸では、
目からビームが出ていたような記憶が。。。
(まさしく日出処のワンシーンのような、、)
子供心に何だろうこれは?すごく変? と思ったものでした。。
今もあるのだろうか?見に行ってみたいです。

本は、、、気合が入りそうだったら、、
また、読み返してみようかなぁ~。
返信する
山岸ファンは。 (トミー。)
2011-06-11 10:09:31
母宮様
山岸ファンには有名な本なので、古い本にしては結構知ってる人持ってる人はネットでも見かけますね。
読むの時間かかりますけどね~(笑)

「日出処の天子」以来、マンガで聖徳太子のフィクションを描く人はいませんね。
某寺に頼まれて至極真面目で (当然つまんない) 伝記物語を描いた方はいらっしゃいましたが…。それもお弟子さんが描いたような感じだったし。
すぐブッ○オフ行きとなりました。
返信する
今さらでございますが、、 (name)
2011-06-11 22:26:43
だいぶ出遅れで申し訳ありませんが→退院おめでとうございます入院中はたくさん読書していらしたんですか?

この本ははじめて知りました~、今度図書館でも探してみます。
学生時代に「日出処の天子」を読んだことを思い出しましたわ…私は山岸作品はコレしかよんだことのない、軽め→ライトなファンですが(汗)インパクトはすごく大きかったです…
久しぶりに読み返してみようかな
返信する
ぜひぜひ。 (トミー。)
2011-06-12 18:26:22
name様
ありがとうございます。
この本厚くて、ほとんど入院中これとマンガしか読んでないような状態で…(滝汗)

処天 と これと両方読むと厚みが出ていいですよ。内容的にはもちろん全然違うんですが、山岸氏がこれを読んであれをね~、と思うと感慨深いです。
返信する
おお~懐かしい~ (満天)
2011-06-13 12:08:31
「法隆寺の謎を解く」http://www.athome-academy.jp/archive/culture/0000001008_all.html

この仮説はNHKで見たのですが、とても面白く評価される内容となっています
上の本を読んだ後に、この本を読むと…また違った点が見えてきて面白いと思います

歴史というのは面白いですよね
時の権力者の思惑がとても良く表れています
現在NHKで放送されている大河ドラマ「江」でも
「茶々」についての記述がとても面白く表現されています
もちろん「茶々=悪女」は後の政権家康の思惑が絡んだ結果ですが
色々な考え方を駆使すれば、それなりに見えてくるものがあると思います
一説には茶々と江の姉妹仲が最悪だったっていう歴史家も居るんですよん

大事なのは鵜呑みにしないこと(笑)
今回の病気も…実は何も解っていないからこそ難病と言われているのだと思います。
データが無い以上、人数が少ない以上、それにかけるお金が無いので
研究開発が遅れているのだと思います。
医師に言われたからといって諦めず、自分の治癒力を信じめげないでくださいね
歴史も病気も人生も、何と言って確かなものなど一つもありません
大事なのは何を信じるか。ですぞ。
私はトミーどんのたぐいまれなき治癒力を信じています。
そうでなければ、こんなに早く退院出来るはずがないですもん
ファイトですよん
返信する
信じてるよん。 (トミー。)
2011-06-14 09:03:33
満天様
ありがとう!
うん、自分で一番自分を信じているよん。
いつか薬なしになるんではないかと思っている。
担当医師の始めての事例になってやる!(笑)
患者数が少ないのは事実なようで、3,000~4,000人と言われているようです。
ちょっと前に私は前半しか見なかったけれど、たけしの番組で紹介されたんですってね。

大河ドラマ「江」はちらちら見ているんだが、10歳にもならない子供の 江 が歴史の大事なところに出てきたり信長・秀吉・家康などと対等に話をしたり、あまりにも実際とかけ離れている内容にちょっと呆れて熱心に見ていません。
もっと大人になってからでもこの人は波乱万丈なんだから、子供の時の歴史全般のおさらいみたいのは蛇足だと思うんだよね。
最近はやっと大人になってきたようでそろそろ最初の結婚かしらね。
茶々の表現、面白いよね。前回では事実かどうかはともかく、この中では秀吉と相思相愛まで行ってるみたいだし。
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