本の好きな人たちの集まりでした。
大学院生の馬場くんが、おもしろかったファンタジー小説を紹介しました。
キャリアウーマンの北風さんはちょっと眉をひそめて、
「ふーん。そうやって恋愛とか闘いとか特殊能力が得られるとか、あるんだよね。で、その話の落としどころはどこなの?」
と、威勢よく尋ねました。
一拍おいて、周りのひとたちが、「それはさぁ~」と言いながら笑いました。
馬場くんがちょっとあわてて、今度はお話の中の自分の好きなところから離れて、
「えーっと、搾取されてる村があって、それを救おうとした勇者がいて・・・」
と、大筋を話しだし、兄貴分の入間さんが勘所を押さえたので、みんなどの辺で感動するか分かったような気がしました。
北風さんは思いついたように、
「んー。わたしね、推理小説とか始めの方読んだら、次は最終章読むんだよね」
と、空中でざくっとページをめくる仕草をしたので、驚きの声が上がり、入間さんが
「それって、おもしろいですか?」
と突っ込みました。
「だって、そうすると人と人がどう繋がってたとか、途中の展開も分かるじゃん。それからまた戻って読み直すんだよ」
「へぇー!」
「わたしさ、スポーツ中継とかも生で観られないもん。たとえば日本対ブラジルでサッカーあるでしょ。そしたらやっぱり日本応援したくなるからさ、もし負けちゃったらショックじゃん。だから録画して後で勝ったのだけ観るの。それなら安心じゃん」
「はぁぁー」
そこで北風さんは馬場くんに向き直り、
「いいよ。じゃあ、それ読んでみるよ」
と、挑戦状を受け取ったひとのようにそう告げると、ノートに題名を書きつけました。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/