むすんで ひらいて

YouTubeの童話朗読と、旅。悲しみの養生。
ひっそり..はかなく..無意識に..あるものを掬っていたい。

あっちの時 こっちの今

2015年04月10日 | 日記

桜、きれいでしたね。

わたしにとっては、はちきれそうでムズムズしていたピンクの蕾も、モコモコに花を咲かせたうれしそうな木も、桜吹雪の中で花びらをすくって花合戦してる子供たちも、今年もやっぱりお弁当を広げてお花見したことも、ひとつひとつが春の台紙に揃ったシールみたいです。

 

ようやく半分くらいの花が咲いた頃は、渥美半島の伊良湖岬から三重県の鳥羽に向かっていました。

 

以前、神島を歩いた時に眺めた伊良湖岬灯台から、今度は反対に神島灯台を正面に見ていると、あの寒かった日 ― 水筒から湯気の立つお茶を飲みながら交わした会話とか、水平線の方から吹いてきて頬にあたる冷たい風とか、周りを海に囲まれたそこはかとない心細さとか ― が今もあそこにあるような、ふしぎな気がしてきました。

 

その後、午後いちばんの伊勢湾フェリーに乗って、伊良湖岬から鳥羽へ55分の船旅に出航。 

後ろのデッキで、バイクを積んでツーリングに来ている男の人たちが解放感にテカテカ談笑していたり、子供たちがはしゃいでいたり、表情も声色も固まってみえるけど海の写真を見せ合って楽しんでる様子の中国人ファミリーがいたり、窓辺のテーブルでお菓子をつまみながらスマホを見ている姉弟がいたり。今までは、陸からこのさっそうと滑っていく船を眺めていたけれど、乗ってみると、中は思い思いに過ごす人たちが発する重低音のワクワク感に満ちていました。

ちょうど半分くらい来たかな、と思う辺りでサイドデッキに出ると、突然びゅんびゅん冷たい潮風が吹きつけてびっくり。すぐ左には神島があって、逆航路の同じフェリーとすれ違うところでした。   

 

鳥羽に上陸後、ホテルにチェックインして、近鉄鳥羽駅で手に入れた見どころマップを片手に町歩き。途中、新しくてキレイな石垣の上にピンクの桜並木を見つけたので、長い階段を上っていくことに。地図によると、ここは鳥羽城址のようです。

 

の先の階段を上ったところから海が一望でき、再び午前中いた伊良湖岬灯台が視界に入りました。あの時は、来てみたら意外と大きかったんだなあと感心したのに、今はもう芥子粒くらいにちっちゃい。あっけなく、こんなに遠くまで来てしまったのがなんだか妙で、そこにいたことが懐かしくてちょっと切ない

船で移動したからか、海に隔てられてるからなのか。。これが、山道を歩いてきてケルンや山小屋を振り返る時なら、よくきたなぁという感慨の方が大きいのに。

 

さらにその先の一番高いところが本丸跡で、そこは旧鳥羽小学校 ― 昭和4年に、二の丸跡に建てられ、平成20年に閉校。現在は国の有形文化財となっている ― のグランドとして使われていたそうです。

かつての城下町と港を見下ろす高台に建つ、趣ある灰色の校舎。ここで鳴った鐘の音は、街の路地にも家の中にも届いて、大人たちに「あ、もうこんな時間!」なんて思わせていたかもしれないな。と想像しながら石段を下り、小さな食堂の前に差しかかると、自転車に乗ってきたおじさんに「あ、今日この店やってますか?」と尋ねられました。あいにくその扉は閉まっていましたが、おじさんは旅の人だとわかると、とっても親切に、辺りの由緒あるお寺や水族館で話題の水に潜って漁をするスナドリネコのことや、にぎわっている通りの方向をおしえてくれ、「また来てね」と見送ってくれたのでした。

 

  


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