むすんで ひらいて

すべてが帰着するのは、ホッとするところ
ありのままを見て、気分よくいるために

ごほうびの時間

2015年02月10日 | 旅行

陽ざしが、だんだん懐かしい色に変わっていく。

さっきまで混んでいた岬の休憩所は、人々が、日没に合わせて開演されるケチャダンス会場に向かい始めたので、空いてきたところだ。

 

バリ島の夕陽鑑賞で有名な、このヒンドゥー教のウルワツ寺院には、海の霊がまつられている。

案内してくれたドライバー兼ガイドさんは、ベンチに腰掛けてこちらに身をよじり、わたしが先日の夜中に聞いたのはトッケーというヤモリの声だったのか、ヴィラのオーナーが言ったカエルの声だったのかと、両方の鳴き声を真似て確かめていた

「うん、やっぱりあれはトッケーだったと思うよ」

それで、わたしの小さな疑問が消え、もう一度彼が、

「ああ、トッケートッケー!だからね」

と繰り返した瞬間、天井から突然、

「トッケェェ、トッケェェェー」

と、今度は本物の鳴き声がした!

「ああ、これこれ」

と、思わず頷きながら、あまりのタイミングのよさにお互いビックリして見上げた。

通りかかった観光客の男性も一緒に声のする方を覗いたけれど、結局誰も姿を見ることはできず、三度聞こえてピタッと止み、後はもうそれきりだった。

早く着いて日の暮れるのを待っていたわたしたちは、そこにかれこれ1時間は座っていたが、あれが10日ぶりくらいに聞いた、愛らしくひょうきんな、まるで鼻の奥から出るような関心の音だった

 

「ここには神様がいるから。 今話してるの聞いていて、教えてくれたんだよ

と、ドライバーさんが、ぐるりを振り仰いだ。

 

(ふしぎなことに、これを日暮れ前のホテルのビーチで書いていたら、ちょうど先の鳴き声のところに「トッケー」と書いた瞬間、後ろでまた本物が鳴いた! 

やっぱり三度きっかり、ウルワツから帰って初めて聞くし・・・ わたしはトッケーについている♡)

 

 

去年の夏、スミニャックのホテルから浜辺に降りて歩いている途中、「ザ レギャン バリ」というゆったりした外観のホテルが気になったので、先日そのレストランに行って夕陽を待っていた。

目前に広がる緩やかな水平線と、間近に打ち寄せる波に、自然からだがゆるゆると伸び、バリに来た甲斐があったなぁ。と、無心になって潮風に吹かれていた。

連日のように雲は多かったけれど、水平線と空の境目には帯のような虹色の空間が広がり、そこだけぼんやり明るかった

 

ところが、しばらくすると風がぼうぼうと吹きすさび、雨雲がすっぽりと視界を包み、雨がプールサイドのタイルをバチバチと打ちつけ始めた。

そして時々、ほんの一瞬だけ、空と海が昼間と同じくらいの明るさで銀色にパッと光り、暗闇に浮かび上がった。

 

 

ウルワツの前に立ち寄った午後3時のヌサドゥアビーチは、くたくたになりそうな(いや、なった。)強い日差し

 

 

ところが、それから数時間後お寺に着くと、崖っぷちをどんより演出する灰色雲ふたたび現る。

彼方で雨が降っているけれど、何とかこちらは持ち応え・・・

 

 

程なく、晴れ間が見えてきて。

 

 

 

輝いた表情も見られて、よかった

 

 

この後、先のトッケー談をしていたら、光がおいしそうなパパイヤ色に変わっていった。

崖の上の円形劇場では、ケチャダンスが始まり、時々男性たちのケチャケチャビートが風に乗って流れてくる。

 

 

雲と太陽と一直線。

 

 

これまで見た、美しい夕陽を次々に思い出した。

ごほうびの時間は、どこかに一度沈んでいた、信じようとか愛そう!というちからを太陽と交代に連れてきた。

 

 

  


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