比企の丘

彩の国・・・比企丘陵・・・鳩山の里びと。
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今日は「沖縄慰霊の日」・・・小説「宝島」を読んで

2019-06-23 | 語り継ぐ責任 沖縄のこと
今日は何の日。太平洋戦争末期1945年4月1日アメリカ軍が沖縄本島に上陸、6月23日沖縄における戦争が終結した日。

4月1日アメリカ軍が沖縄本島に上陸。上陸地点は沖縄本島中部の西海岸、嘉手納町、読谷村。米軍の陽動作戦により南部海岸に上陸を想定した日本軍は不意をつかれ、なすすべもなく水際作戦を放棄しました。わずか1時間で16000人が上陸したといいます。
無血上陸です

4月2日読谷村の自然洞窟チビチリガマに避難した住民140人余、米軍が投降を呼びかけたがパニックになり84人が自決しました。
4月5日までには中部地区は東海岸に至るまで米軍に制圧されます。これより米軍は南部に向かって進攻を開始します。

米軍の兵力は総数548000人、艦艇1500、上陸部隊182000人。
日本軍は陸軍87000人、海軍10000人、沖縄県人で組織した義勇隊22000人。
日本国内で民間人(沖縄県民)を巻き込んだ初めての戦闘が始まります。
それから2ケ月半、6月22日、牛島中将の自決により組織としての戦闘は終結しますが、沖縄県民にとっての地獄の日々はさらに続きます。最終的には8月29日(終戦から2週間後)の最後の日本兵の投降により沖縄戦は終結します。

沖縄戦犠牲者(Wikipediaより) 日本側19余万人(うち沖縄県人12万人・・・沖縄県人の犠牲者はこれを上回ると思われる)。  米軍側1万数千人。
太平洋戦争における日本軍の死者230万人(うち餓死者、海没者が7割)、一般人80万人((沖縄戦争の一般人、原爆、本土大空襲の死者、中国大陸、旧満蒙での死者を含む)。
太平洋戦争における日本以外のアジア諸国の死者・・・2000万人を越えるといわれます。

死屍累々・・・「海ゆかば 水漬く屍 山行かば 草生す屍」のメロディーが浮かんできます。

太平洋戦争が終わったあと、朝鮮戦争、ベトナム戦争が起き、数100万の命が失われます。
近代戦争では非戦闘員のほうが死亡者が多くなります。



直木賞、山田風太郎賞受賞 真藤順丈著の小説「宝島」です。
幼馴染みの三人のウチナンチュを中心に沖縄戦争の終ったあとの米軍統治下の沖縄から復帰までの沖縄を描いています。
小説の中の一節です・・・
復帰協は”日本国民としての魂を取り戻そう”なんて謳ってるけれど、これまでにおれたちがヤマトンチュであったことがあるか・・・(中略)・・・おれたちが目の仇にしなきゃならんのはアメリカ~よりヤマトンチュじゃないかって・・・(中略)・・・この島の人権や民主主義はまがい物さ。本物のそれらはもうずうっと本土のやつらが独り占めにしてこっちまで回ってきとらん」。
(中略)
1972年のその日を迎えて、琉球警察は沖縄警察に看板をとっかえて、通貨はドルから円になり、本土に渡るにも旅券はいらなくなった。だけどそれがなんだっていうのだろう。アメリカ世からヤマト世になったところで巨大な基地のある生活はなにも変わらない。
(後略)

≪註≫ウチナンチュ・・・沖縄の人、ヤマトンチュ・・・日本の人、アメリカ~・・・アメリカ人、アメリカ世(ゆ)・・・米軍統治時代、ヤマトぬ世(ゆ)・・・琉球処分後の日本の時代、復帰後の日本の時代。


物語の主人公たち・・・ある青年(グスク)は刑務所暮らしから警察官になり米軍民政府の特命捜査も隠密裏に手伝います。ある女性(ヤマコ)はAサインバー(米軍許可の酒場)で働きながら教員免許を取って先生になります。ある若者(レイ)はアウトローの世界につかりながら強かに生きています。それぞれの歳月が過ぎていきます。
沖縄ことば(ウチナーグチ)のルビがふられた会話が飛び交います。
名ばかりの琉球政府、琉球行政主席、議会のアメリカの意にそわない決定はアメリカ民政府のノーというひと言で無条件で破棄されます。パスポートが無ければ本土(ヤマト)に旅行にも学校にも働きにも行けません。本土の永住権も取れません。仕事は基地労働者になるか米軍相手の飲食店で働くしかありません。職種が限られているのです。農耕地は基地になっています、Aサイン、ハーバービュークラブ(米軍高官、琉球政府高官。琉球経済界の重鎮のみが会員になれる高級クラブ)など知らないことがでてきます。朝鮮戦争、ベトナム戦争の戦場で同僚兵士の命が飛び散り、束の間の戦時休暇、荒みきった米軍兵士の犯罪が頻発する沖縄。特に三人の住む普天間飛行場、嘉手納飛行場のゲートに近いコザ、胡屋(ゴヤ)はその中心街。米軍統治下の沖縄のことを知らなければ理解できないかも。

A5判541頁の長編。ヘビーな内容です。読み通すにはエネルギーがいります。著者はこの作品を書くのに7年の歳月をかけたそうです。
大勢の人に読んでもらいたい本です。
★↑↓の写真は表紙装丁より。


≪参考リンク≫2019年1月9日「もののはじめblog」さんのブログ・・・→クリック・・・宝島

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4 コメント

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沖縄問題を活写  (もののはじめのiina)
2019-06-23 09:12:34
新聞に読むべき一冊として紹介されましたから、解説を読まずに手に取りました。
タイトルが「宝島」なので冒険小説だと思ったら、沖縄問題がヘビー且ディープに活写されて読み応えがありました。

英雄脱出の謎が、ラストまでミステリー仕立てになっているのも惹きつけました。

iinaのブログにリンクをありがとうございました。



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いつも・・・・・ (こきおばさん)
2019-06-24 07:27:17
今回も書いてくださると期待しておりました。有難うございます。
昨日の慰霊祭で白々しく「私が先頭に立って沖縄振興につくします」と行った安倍首相の言葉が非難されて当然だと思います。
こうして毎年沖縄のことを書いてくださる方のほうがよほど沖縄に心を寄せていると思います。
これからもどうか書き続けてください。

もし、憲法が改憲されるようなことがあると、また若者が戦場に行かされることになる・・・・・二度と戦死者を出してはいけません!!
軍事費を教育費に、福祉に回したらどんなに住みやすい国になることか!改憲されると軍事費は何倍にも膨れ上がります!
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コメントありがとうございます (もののはじめのiinaさんへ・・・)
2019-06-24 19:12:26
沖縄は復帰後も何も変わっていない・・・ということが見えて見ます。

iinaさんから教えられた本を宿題のようにしてきました。
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沖縄のこと (こきおばさんへ・・・)
2019-06-24 19:18:03
本土の人はどれだけ知ってるのでしょうか。
慰霊祭において安倍首相の言葉と子どもの素直な詩の朗読が対照的でした。
沖縄の人が民意で「ノー」といったように、本土の人が安倍首相に「ノー」といえるでしょうか。
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