【歯顔大笑】

歯を見せて大きく笑おう!

135.【結ぶより早歯にひびく泉かな】

2012-10-09 | 

【結ぶより早歯にひびく泉かな】 (むすぶよりはやはにひびくいずみかな) 

この句、聞いたことありますか? 歯が入っているのでご紹介するのですが、私は聞いたことも見たことも
ありませんでした。 誰の句なのか、どういう意味なのか、想像するのも結構難しい句だと思うのですが、
みなさん、いかがですか?

この句は元禄二年頃、松尾芭蕉が46~48歳のものです。

意味は・・・
1.”結ぶ”とは本当は”掬ぶ(むすぶ)”で、その意味は「水などを左右の手のひらを合わせてすくう。」
ことです。つまり、夏の山道などで泉を見つけ、思わず駆け寄って両手ですくう(掬う)と、その冷たさが
まだ口にいれないうちから、歯にしみわたる(しみる)ような気がするという意味です。 

2.もう一つの解釈として”結ぶ(掬ぶ)より早”で一つのものとして、”飲むとすぐに””飲むやいなや”
という意味で(志田義秀『芭蕉俳句の解釈と鑑賞』より)、「飲むとすぐ冷たく感じて気持ちがいい」「飲む
とすぐに歯にしみる」というものがあります。

通常は1の意味で、46~48歳の松尾芭蕉が知覚過敏症や歯槽膿漏で苦しんでいて、泉の水を口に入れる前
からしみるような気がして自分も歳をとったと感じ、冷泉のおいしい水を十分味わえないことを嘆いていると
いう解釈が多いです。もし、2の「飲むとすぐに冷たく感じ気持ちがいい」であればとても文学的で学校で教
えるにはかっこいいですが、それ以外なら洋の東西、時代、偉人、凡人を問わずあらゆる人がむし歯、知覚過
敏、歯周病などに悩み続けているということですね。 とても興味深いです。


余談ですが、日本全国にはこの句の基が15あります。そのうち”泉かな”となっているものは2基、あとの
13基は”清水かな”となっているのです。もともと、この基が建てられる場所は昔から旅人や地元の人たち
が貴重な水を得ることができる清水や泉の水辺だったので”泉”がいつの間にか”清水”となって伝わって
しまったのではないかと考えられています。




岐阜県養老郡養老町千歳楼の句碑