トーキング・マイノリティ

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夜更けのおつまみ

2020-12-29 21:41:41 | 読書/ノンフィクション

 コロナ禍のおかげで、今年は職場での忘年会が軒並み中止に追い込まれました。飲食業界はもちろん、飲み会が中止になって残念と思っている宴会好きやのん兵衛さんも多いでしょう。いくら飲み会が中止になっても、飲酒は止めない(止められない)のがのん兵衛で、家呑みの機会が増えたはず。
 そんな方々にとって、『夜更けのおつまみ』(ポプラ文庫)は実に面白いエッセイだと思います。裏表紙には「31名の人気作家がおつまみにまつわる思い出を語ったエッセイ・アンソロジー」というコピーがあり、本書に載っているおつまみを作った読者もいるでしょう。

 私自身、お酒が大好き。大酒のみではありませんが、決して弱い方ではなく、酒のみといったところです。HNも麦ご飯が常食で、麦焼酎を好むことから mugi にしました。
 ただ、最近は好みも変わり、麦よりも米焼酎の方が好きになりました。これまで何となく米焼酎は和食にしか合わないと思い込んでいましたが、試してみたら洋食でも結構マッチすることが分かりました。元々我が家では基本的に和食だし、米焼酎はやはり和食にピッタリ。

 私はせんべいが好きですが、ザラメがかかった甘いものは苦手で、ウニや塩せんべいのようなしょっぱい味が好みです。柿の種がいい例で、甘くないせんべいは米焼酎や日本酒、ビールなどのおつまみにもなります。

 本書には様々なおつまみが紹介されていますが、一番意外だったのは、田中啓文氏の『野菜でビールを』。「あらゆるアルコール飲料のなかでビールが一番好きだ」という田中氏も、「ビールは高いので(アルコール度数で計算すると、もっとも割高)、仕方なく焼酎を飲んだりする」とか。ビール党ならずとも、禿同!という吞み助さんは多いかも。
 田中氏もいう通り、一般的にはビールに合うのは揚げ物ということになっています。しかし年齢的には揚げ物はそれほど油ものを必要としなくなり、「野菜でビールを」に至ったそうです。

 田中氏が挙げた野菜のおつまみで驚いたのが、塩をかけた大根と千切りキャベツとツナ缶のフレンチドレッシングあえ。このような淡泊なアテはビールには合わないイメージがありますが、こればかりは好みもあり、実際にトライする他ないでしょう。
 若い頃は私もビールにフライドチキンという組み合わせが大好きでしたが、最近は焼き鳥の方がいいし、焼き鳥でもつくねが一番好きになりました。暑い夏に冷たいビールは最高だし、冷奴のようなヘルシーなおつまみは健康面でも好ましいはず。

 他に印象的だったのが、寺地はるな氏の『オイルサーディン』。オイルサーディンは私も好きですが、熱したオイルサーディンに山椒をかける食べ方もあったことを初めて知りました。私は専らレモンかライムのしぼり汁でしたが、山椒をかけてもオツな味かもしれません。ちなみにオイルサーディンはご飯にも合うし、炊き込みご飯にしても美味しいですよ。
『チャーハンとレモンチューハイ』の前川ほまれ氏のように、チャーハンをアテにして酒を飲む人もいます。確かに腹は膨らむし、懐にも優しい“おつまみ”でもありました(前川氏の通った店ではチャーハン、レモンチューハイともに290円)。

「クリームチーズのおかかまぶし」(柳本あかね氏)も意外性のあるおつまみだった。ビールやワインに合うのは容易に想像がつくが、日本酒、特に純米酒にピッタリと柳本氏。読書メーターのレビューにもこのおつまみが載っていたので、私もそのうち作ってみたい。

 読書メーターのレビューにある通り、「何気ないものを美味しそうにする文章力はやはりすごい」。載っているおつまみはどれも作るのが簡単なものばかりで、値段も手ごろな食品が中心でした。
 総じてのん兵衛は気短だし、一刻も早く飲みたいときに手の込んだおつまみは作る気も起きません。作家だけに文章力はすごくとも、酒への熱い思いは一般人と変わりないと感じさせるエッセイ集でした。

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