トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

アヒルと鴨のコインロッカー 07年【日】中村義洋監督

2007-06-04 21:22:56 | 映画
 全編宮城県ロケで、地元仙台で話題となった映画。これまで仙台が舞台のTVドラマはつまらないものばかりだったが、地元が舞台なのはやはり気になり、映画館に行った。通行人に知人、あわよくば自分が映っていないか期待したが、残念ながらそれはなかった。

 仙台の大学へ入学するため越して来た東京の若者・椎名。彼はアパートに着くや親元に連絡するが、両親とも言ったのが「ところで、牛タンは食べた?」。椎名と同じく他県から来た同級生も、同じ台詞を言うのは笑える。仙台の牛タンは結構有名なのか。
 椎名は引越したその日、アパートの隣に住む河崎というイケメンに出会う。椎名がボブ・ディランの「風に吹かれて」を歌っていたのを聞きつけ、河崎が声をかけたのだ。

 アパートにはブータン人留学生もいた。河崎の話ではブータン人は日本人の彼女と別れてから暗くなり、引きこもりがちになったという。そんな外国人留学生を励ますため広辞苑を贈りたい河崎。しかし彼は辞典を買うのではなく、椎名に「一緒に本屋を襲わないか?」と持ちかける。本を盗むのを当然渋る椎名だが、不思議な魅力を持つ河崎に引きずられ、結局裏口で見張る役を引き受ける。まもなく椎名は予想もしなかった河崎の正体や、書店を襲った真意を知ることになる。

 この映画のキーワードはボブ・ディランとブータン。BGMは殆ど「風に吹かれて」。ブータンは馴染みの薄い国だが、チベット仏教を信仰しているのは映画を見て分かる。この映画だけを見れば、敬虔な仏教徒の理想郷のイメージを持たれるかもしれないが、wikipediaで検索しただけで民族、宗教、難民といった厳しい国内外問題を抱えている。インドと中国というアジアの二大国に挟まれた小国ゆえ、複雑な国際情勢が反映されるのだ。日本人は安易に外国に理想郷を求めすぎる。

 ロケ地が仙台中心の宮城県なので、映画に映る町の風景はどこかで見たような風景ばかり。椎名が入学したのは「青葉学院大学」だが、東北学院大のもじりなのは地元の人間ならすぐ分かるし、事実この大学のキャンパスが出てくる。八木山動物公園、仙台駅構内もちゃんと出てきた。ただ、書店の女店員が話す仙台弁はひど過ぎる。あんな仙台弁を話す店員などいない。方言指導は一体どうなっているのか。
 ラストに椎名がやっと買った牛タン弁当を新幹線内で食べる場面があるが、あの弁当は大したものではない。面倒でも土産は家で焼く牛タンをお勧めしたい。

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4 コメント

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ブータンという国 (madi)
2007-06-05 00:43:38
アマチュア無線をやっていると、アマチュア無線家がたくさんいる国はだいたい自由で豊かな国だとわかります。
北朝鮮はノーハムカントリーです。ブータンも通常はノーハムです。
中国は最近増えてきましたが、まだまだです。
短波の電波を強力に出すハムをやるには自由な言論と年収4万ドルの壁を突破しなければなりません。
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無線 (mugi)
2007-06-05 21:31:23
>madiさん
私は無線をしたことが全くないので、とても興味深い情報を有難うございました。
無線を楽しむには言論の自由の他に収入が鍵なのですね。
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フォア・グラな私 (Mars)
2007-06-06 01:13:41
こんばんは、mugiさん。

仙台の牛タンは結構有名なのか存じませんが(もしかしたら、mugiさんにご紹介されたのかも??)、仙台・宮城と言えば、牛タン・麦トロに米沢牛、牡蠣や鰹にはらこ飯などが有名なのではないでしょうか?
それでも、名物があるだけでも、誇らしい事ではないでしょうか。
(私が現在住む、某ネズミーランド近辺では、焼き蛤や、落花生、梨なども有名だそうですが、あまり口にしておりませんね。特に、前者の二つは、安い中○産も少なくないので、どうなのでしょう。)

古より、日本人は安易に外国に理想郷を求める事は、決して、稀ではないように思えます。そして、その姿には、高尚なものがあったのかもしれませんが、古今を問わず、日本ほど食も水も安全も安定して、比較的差別も少なく、住みやすい国は、そうざらにはないように思えます。
確かに、科学が発展した現在でも、地震・台風などの自然災害は少なくないでしょうけど、、、。
それを含めた、四季のある日本、そしてそこに住む日本人を愛し続けたいと思います。
(それでも、国籍を問わず、日本に仇なす害人・売国人は、少なくないでしょうけど。)

地元が舞台となった、映画・ドラマでの方言が、そこに住む者にとって理解しがたい事は、少なくないように思います。
確かに、日常的に使われる方言と、映画やドラマ等の台詞とでは、アクセントやイントネーションが違う場合もありますが、ことばの使い方や、ことば自体が、口語調と文語調の違いがあるように思えます。
また、私の田舎では、子音もよく発音するようで、地元人にしか分からない事もあるようです。
(たとえば、「兵力増強」は「へーりょくぞーきょー」でなく「へいりょくぞうきょう」、女の子の名前も「りょーこ」ではなく「りょうこ」だとか。)
日本語は、本当に難しい者ですね。

追伸、
牛タン弁当といえば、紐を引いて、温めるものだけではなく、海浜幕張駅近くのプレナで購入したものも、量が少なかったですね。
そこのお弁当も味はまずまずだったのですが、牛タンは割高のように思えます。
(家で焼く牛タンといい、世間一般に広まっている物は、反日中○・豪○産などの輸入物が多いように思えます。
また、牛タンといえば、麦とろですが、温度管理がたいへんなようで、弁当には、まず、ついてこないように思えます。)
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宮城名物 (mugi)
2007-06-06 22:38:23
>こんばんは、Marsさん。

米沢牛は仙台・宮城名物ではありません。名前の通り米沢・山形で、隣県の産物です。仙台牛もちゃんとありますが、高い!地元の人間でもまず食べません。
私も落花生は大好きですが、やはり中○産は安いですね。国産は倍以上しますが、安全面を考えれば国産がいいかも。ちなみに宮城にも利府梨があります。

以前、コメントされた女性が興味深いことを書かれていました。
知り合いの方が、「日本ほど住み易い国はなく、世界には日本人がいなくなればいいと思っている人が大勢いる」と言われていたとか。さらに「丸腰でいることを求めて来る者ほど、自らは暴力的であることを知るべき」と鋭い意見もされてます。同じ女性でも、TVに登場するフェミニストとは段違いです。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/73e8e9aff536feaf062fdbe8366a1d36

仙台弁だと「兵力増強」は「へいりょぐぞうぎょう」、「りょうこ」は「りょうご」になりますね。

仙台の牛タンも狂牛病以前は米国産が最も多かった。騒ぎの後に豪○産になりましたが、最近また米国産牛肉が店頭に出回るようになりました。牛タンは弁当より定食が断然いい。テール(尾っぽ)スープ付きで、麦とろご飯だと食も進みます。
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