製薬ビジネスの裏側

　BS世界のドキュメンタリー「ビッグ・ファーマ 製薬ビジネスの裏側」を見た。「ビッグ・ファーマ」という言葉は番組で初めて知ったが、検索してヒットしたサイトにはこう説明されている。
「ビッグ・ファーマとは，米国で大きなシェアをもつ世界的巨大製薬会社10社（米国のファイザー，メルク，ジョンソン・エンド・ジョンソン，ブリストル・マイヤーズ，ワイス，英国のグラクソ・スミスクライン，アストラ・ゼネカ，スイスのノバルティス，ロシュ，フランスのアベンティス）を指す」

　これら巨大製薬会社の中で私が知っていたのは、アストラ・ゼネカとジョンソン・エンド・ジョンソンのみだが、以下は製薬ビジネスの裏側を取り上げた番組サイトでの解説。

―死に至る可能性のある深刻な病の治療薬を高額で売り、重大な副作用による被害も・・・「ビッグファーマ」と呼ばれる巨大製薬会社によるビジネスの実態に迫る調査報道番組。
　発展途上国が必要とするマラリアやHIVの治療薬を50倍に値上げした製薬会社の元CEO。妊娠中の服用で胎児に先天性の精神障害や奇形を引き起こす可能性がある薬に対して対応を怠ったとされる製薬会社。新型コロナの治療薬をめぐる最新の動きも交えながら巨大製薬会社による利潤追求ビジネスの実態に迫る。
原題：BIG PHARMA Gamiing the System（フランス 2020年）

　番組サイトにあるマラリアやHIVの治療薬とはダラプリムで、扱っていた製薬会社はチューリング製薬。元CEOはマーティン・シュクレリという男だが、その若さに驚いた（※シュクレリの生年は1982年/1983年）。製薬会社CEOといえ化学者ではなく、ヘッジファンド畑の出だった。
　番組では50倍に値上げしたと言っていたが、wikiには56倍に価格を吊り上げたと記されている。シュクレリという姓と元CEOという肩書が引っかかったが、案の定両親はアルバニアとクロアチアからの移民でニューヨーク生まれだった。2018年3月、シュクレリは証券取引法違反などの罪で懲役7年の実刑判決を受けている。

　公聴会でのシュクレリの振舞は実に太々しく、銭ゲバ丸出しの発言を繰り返していたが、彼の言動により巨大製薬会社の強欲さが知られるようになったようだ。
　特効薬の50倍以上の値上げは、元CEOによる決定が大きいが、製薬会社ぐるみで副作用の隠ぺいを行ったのがサノフィ。番組サイトにある「妊娠中の服用で胎児に先天性の精神障害や奇形を引き起こす可能性がある薬」は、サノフィのてんかん用のデパケン。会社側は妊婦が服用した際の危険性を知りつつ、長く対応を怠ったとされる。

　似たようなケースは他にもあったのではないか？製薬会社は副作用の危険性を知りながら情報開示もせず、そのまま販売しつづけて被害者を出すというパターン。
　製薬会社も新薬の研究開発に相当な資金と労力を費やしているので、失敗を認めたがらないのは目に見えている。しかし、新薬開発は会社単独で行うとは限らず、ビッグ・ファーマさえかなり公的支援を受けていることを番組で初めて知った。日本の製薬会社は不明だが、やはり国からの支援を受けているのだろうか？

　ビッグ・ファーマは公的支援を受けながらも暴利を貪っていたのだった。EUと異なり米国では薬の価格への規制がないため、薬価をいくらでも高価に設定できるという。いかに資本主義社会といえ、利潤追求ビジネスを展開する製薬会社のやり方は、医療体制に深刻なダメージを与えることになる。現代の医療が薬品に依存している実態を改めて知った視聴者も多いだろう。
　コロナ治療薬の開発をめぐり、各社とも熾烈な競争を繰り広げているが、コロナ禍は巨大ビジネスの好機でもある。俗に製薬業界は不況知らずと言われるが、コロナによる世界的恐慌が起きても影響のないのが製薬業界なのだ。薬価がどれだけ高くとも買う患者は必ずいるから。

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