To the centre of the city where all roads meet, waiting for you, 全ての道が交差する街の中心で、君を待っていた、
To the depths of the ocean where all hopes sank, searching for you, 全ての望みが沈む海の底で、君を探していた、
I was moving through the silence without motion, waiting for you,
動きの無い沈黙の中を僕は移動していた、君を待ちながら、
In a room with a window in the corner I found truth. 隅に窓が一つある部屋で、僕は真実を見つけた。In the shadowplay, acting out your own death, knowing no more, 影絵芝居で君自身の死を演じた、何も分からないまま、
As the assassins all grouped in four lines, dancing on the floor, 暗殺者たちが4列に分けられ、フロアで踊っていた、
And with cold steel, odour on their bodies made a move to connect,
そして刃物と彼らの身体の臭気が協力するよう迫ってきた、
But I could only stare in disbelief as the crowds all left. でも僕は不信の目を向けるだけで、群集は去っていった。I did everything, everything I wanted to, 僕は全てをやった、やりたかったことの全てを、
I let them use you for their own ends, 僕は君を利用させたんだ、彼らの破滅のために、
To the centre of the city in the night, waiting for you, その夜、街の中心で、君を待っていた、
To the centre of the city in the night, waiting for you. その夜、街の中心で、君を待っていた。
1連が4行、3連で合計12行の構成になっています。まず、第1連について。1行目の「To the centre of the city where all roads meet, waiting for you,」から、街の風景がぱっと目に浮かびます。長いイントロの後にこのフレーズが歌われるのですが、音楽から受けている感覚の中に、言葉から受ける視覚的な感覚が入ってきて、一気に歌の世界に入り込むことができます。この部分は、1978年4月にRCAレコードで録音されたバージョン(海賊版と、4枚組のボックス・セット『Heart And Soul』のdisc3に収録されています)では、「To the centre of the city where all roads meet looking for you,」となっています。「waiting for you,」が「looking for you,」となっているのはこの箇所のみで、1連3行目、3連3、4行目はRCAバージョンでも「waiting for you,」となっています。 「looking for you,」、そして1連目2行目にある「searching for you,」に比べて、「waiting」には、そこにたたずんでいる、という印象を受けます。1行目は、動的な印象を与える「looking for you,」よりも、静止画として入ってくる「waiting for you,」の方が、イメージしやすいように思います。また、1行目の「waiting」から2行目の「searching」と、静から動へ移行する方が、メリハリがあるようにも思います。
RCAバージョンと『Unknown Pleasures』を比べると、ボーカルがかなり変わったことが分かります。前者の声のトーンは高く、軽く、投げやりな感じで、いかにもパンクバンドのボーカルです。対して、後者は低く響く声で、暗くて重い印象です。“イアン・カーティスの声”として一般にファンがイメージする声になっています。曲に漂う緊張感が全く異なっていて、聞き比べることで、ハネットとの出会いによって変わった「声」を実感できます。「Shadowplay」の歌詞の世界が、より深まって伝わってくるように感じられるのです。
2行目には、「To the depths of the ocean where all hopes sank, searching for you,」という、絶望的な状況が描かれています。そして、3行目「I was moving through the silence without motion, waiting for you, 」と続くのですが、この「silence without motion(動きの無い沈黙)」とは、どういう状況なのでしょうか。これは、“あらゆる動きが静止している沈黙”、“全てが静止している沈黙”ということだと思います。「silence without motion」とは、2行目で示された絶望の象徴のような風景で、周囲に生命感の無い、無機的な世界を表しているのではないでしょうか。虚無の中を漂っているような、「僕」の不安定な心情や焦燥感を感じます。
第1連を読んで、まず思うのは、「待っている」「探している」“君”とは誰なのか、ということです。この「君」と「僕」との関係がこの詩のテーマになると思います。そして、4行目の「In a room with a window in the corner I found truth.」という、絶望の中で見つけた「真実」とは何なのでしょうか。絶望の中での一筋の希望なのか、それとも絶望が真実であるということでしょうか。ただ、「君」をひたすら待ち続けている、探し続けているという「僕」の行動の切実さは伝わってきます。そこには、虚無感が漂う中で必死に時間を前に進めようとしている「僕」の意志が感じられるのです。