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愛語

閑を見つけて調べたことについて、気付いたことや考えたことの覚え書きです。

誤りの訂正と『スティル』の1989年盤

2011-07-31 17:51:47 | 日記
 前回の記事で、

A 詩集(映画『コントロール』)
B 歌詞カード――B1『サブスタンス』(『ハート・アンド・ソウル』2004年)
           B2『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディビジョン』(『スティル』1981年『コントロール』サウンドトラック2008年)

と書いてしまいましたが、この『スティル』は、2008年に日本で発売された「コレクターズエディション盤」です。前記事の方は訂正しました。
 『スティル』が、本国イングランドでファクトリーからレコードとして出たのは1981年ですが、日本では1984年にリリースされたようです。これがCDとして発売されたのが1989年(UK盤は1988年)で、そこに付された歌詞カードを確認したところ、2008年のコレクターズエディション盤の歌詞カードとは異なるものでした。
 1989年『スティル』の歌詞カードは、日本語訳もついていなくて、英文の方もあちこち「......」となっていて、これだけだと恐らく内容はほとんどつかめないと言っていいと思います。
 「Transmission」の出だしを見ると、

Radio, life transmission (repeat)
Listen to the silence, let it ring on
............... run
We could have a fine time
Living in the ........
Let the planned destruction
Waiting fo our sign, sign

というように、はなはだ不完全で、聞き間違い(太字部分)も多いです。そんなわけで、他のものとの異同を逐一示すのは省略します。問題の第5連に該当する部分はどうなっているかというと、

I would go on as though nothing was wrong
But as for these days, we remained all along
Stayed in the same place .....
Doing its time
Dance, dance .....

となっています。系統としてはB2に入ると思います。2008年に発売された「コレクターズエディション盤」は、新たに1980年2月20日にハイ・ワイコム・タウン・ホールで行われたライヴ音源を付し、歌詞カードも作り直され、日本語訳を付けたようです。

「Transmission」のテキストについて――(1)

2011-07-27 21:06:52 | 日記
Radio, live transmission.                 ラジオ 生放送
Radio, live transmission.                 ラジオ 生放送

Listen to the silence, let it ring on.          沈黙に耳をすまし 響かせよう
Eyes, dark grey lenses frightened of the sun.     眼が、暗い灰色の瞳が太陽を恐れている
We would have a fine time living in the night,     僕たちは夜に楽しい時を生きた
Left to blind destruction,                  盲目的破滅に身を任せ
Waiting for our sight.                    見えるようになるのを待っている

And we would go on as though nothing was wrong.   僕たちは何も間違ってなかったかのように振る舞った
And hide from these days we remained all alone.    孤独だった日々を隠し
Staying in the same place, just staying out the time.  同じ場所にいる、まさに時を超えて
Touching from a distance,                  遠くから触れ合う
Further all the time.                     より深く いつでも

Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて

Well I could call out when the going gets tough.    つらくなったら叫べばいい
The things that we've learnt are no longer enough.  学んできたことは役に立たない
No language, just sound, that's all we need know, to synchronise love to the beat of the show.
                                  言葉はいらない、サウンドだけ、ショーのビートに愛をシンクロさせよう
And we could dance.                     そしてダンスを

Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて
Dance, dance, dance, dance, dance, to the radio.   踊れ、踊れ、ラジオに合わせて


 以上は、デボラ・カーティス『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』所収の詩集をテキストとし、拙訳を付けたものです。これまでもテキストとしては全て詩集を採用してきました。『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』には、詩集のテキストについて、何をもとにしているか明示されてはいませんが、冒頭に「Love Will Tear Us Apart」のオリジナル自筆原稿の写真が載せられていたり、未発表の習作らしき詩も収録されているところから、オリジナルの自筆原稿が採用されているのではないかと考えます。これまで流布して来たのはCDの歌詞カードですが、以前の記事でも触れましたが、外人アルバイトが曲を聴いて書きとりをしながら作成されているので、そもそもテキスト自体があやふやで間違いも多いのです。「Transmission」は、ジョイ・ディヴィジョンを代表するヒット曲で、1988年リリースのシングル集『サブスタンス』や、2008年リリースの『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディビジョン』などに収録されています。いくつかのテキストを比較してみると、次のような系統に分かれます。

A 詩集(映画『コントロール』)
B 歌詞カード――B1『サブスタンス』(『ハート・アンド・ソウル』2004年)
           B2『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディビジョン』(『スティル』コレクターズエディション盤2008年
                                           『コントロール』サウンドトラック2008年)
 『サブスタンス』は恐らく「Transmission」の歌詞カードとして最も長い期間にわたり、多く流通したものではないかと思います。『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディビジョン』は映画『コントロール』公開直後にリリースされたもので、ベスト盤と銘打っているので、新規のファンの間で、多く流通しているといえるものではないでしょうか。
 『コントロール』の原作は『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』で、劇中登場人物たちがカバーしている歌詞も、テキストは『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』所収の詩集のようです。しかし、このベスト盤も、『コントロール』のサントラも(映画は詩集に拠っていますが)、詩集とは異なるテキストとなっています。そして、これらB2系統の特異なところは、第5連の部分が全く異なっているということです。この、全く異なっている第5連が何かについて、今回とくに取り上げてみようと思います。
 では、詩集と歌詞カードB1、B2の異同を比較してみます。略号として『サブスタンス』を『S』、『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョン』を『B』とします。◆に簡単なコメントを付しました。

 第2連
Listen to the silence, let it ring on.
Eyes, dark grey lenses frightened of the sun.
We would have a fine time living in the night,
Left to blind destruction,
Waiting for our sight.

 2行目S』Eyes dark, relentless, frightened of the sun
B』は「relentless」(形容詞)が「relentness」(名詞)になっています。
 ◆訳はともに「黒い瞳、無慈悲で 太陽を恐れている」ですが、「無慈悲」が浮いていて、意味が通じにくいです。

 4行目SBe left a blind destruction,
B』Left a blind destruction,
 ◆訳はともに「盲目的破滅を残して」となっていますが、文章として意味がよくわかりません。

 第3連
And we would go on as though nothing was wrong.
And hide from these days we remained all alone.
Staying in the same place, just staying out the time.
Touching from a distance,
Further all the time.

 1行目S』『B』「And」無し
 2行目S』Hide from these days the remain all alone
B』Hide from these days we remain all alone
 ◆訳はともに「今という時代から隠れて孤立したまま」で、ここは詩集と大きく意味は変わらないと思います。
 3行目S』Staying in the same place, just staring at the tide
B』Staying in the same place to stand out the tide
 ◆訳はともに「同じ場所にとどまり 潮流に逆らい」で、詩集とは意味が変わりますが、意味が通じなくはないです。

そして、問題の第5連です。
Well I could call out when the going gets tough.
The things that we've learnt are no longer enough.
No language, just sound, that's all we need know, to synchronise
love to the beat of the show.

 2行目S』The things we've learned are no longer enough
 ◆詩集と意味は変わりません。
 そして、問題の『B』の第5連は、こうなっています。
I would go on as though nothing was wrong (ぼくは何も間違っていないという顔をして進んだ)
And hide from these days when the music goes on (今という時代から隠れて 音楽が流れているときに)
Staying in the same place, we're sparing no time (同じ場所にとどまる ぼくらには時間がない
Gift who could value no-one inside (贈り物 誰にも価値がわからない 中には誰もいない)
And we could dance, dance, dance (そしてぼくらは踊れる 踊る 踊れ)
Dance to the radio (ラジオにあわせて踊れ)