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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【おがくず】難波先生より

2013-10-02 12:12:42 | 難波紘二先生
【おがくず】「21世紀最大の災害に対処するのにゴルフボールが足りない」ブルンバーグ系の「ビジネスウィーク」紙の見出しだ。Rakteem Katakey, James Paton and Yuriy Humber3氏の共著になっている。
 http://www.businessweek.com/news/2013-09-29/golf-balls-fall-short-coping-with-21st-century-disasters-energy
 <Diaper liner, sawdust, golf balls and shredded tires -- these are some of the items used to try and contain the oil and nuclear disasters that marked the end of this century’s first decade and the start of the second.(おむつカバー、おがくず、ゴルフボールに古タイヤ:これらが、21世紀最初の10年の終りと次の10年の境目に起きた、石油と原子力の大災害を封じ込めるのに用いられている物品だ。)

 Sawdust and absorbent polymer were employed to plug radioactive water leaks at Japan’s Fukushima atomic station after it was wrecked by an earthquake and tsunami in 2011. Didn’t work. BP Plc (BP/) tried golf balls and rubber scrap in 2010 to plug its Macondo well in the Gulf of Mexico in what became the biggest oil spill in U.S. history. Didn’t work, either.
 (おがくずと吸収性のポリマーは、2011年の津波により福島原発が破壊された後に起きた、放射能汚染水の漏水口を塞ぐのに用いられている。無効だ。
 BP(英国石油)は2010年にメキシコ湾のマコンド油田で発生した、米国史上最大の原油漏れを防ぐのに、ゴルフボールと古タイヤの断片を試した。これも無効だった。)


 Chucking diapers and golf balls at multibillion dollar calamities shows methods to deal with failure are primitive at best even as the global hunt for energy enters new frontiers of risk. Disasters beyond the coping abilities of a single company -- or even a country -- have prompted suggestions that a global body with military-scale technical resources is needed.>(数十億ドルにも及ぶ災害におむつやゴルフボールで立ち向かうというのは、地球規模でのエネルギー探索が危機の新たなフロンティアに入ろうとしているのに、事故に対する対策は原始的だというしかない。一つの会社あるいは一国の対処能力を超えた大災害が起きえるという事実は、軍隊規模の技術的資源をもつ、地球規模の組織ないし団体が必要だという提案に帰着せざるをえない。>



 この記事リードのメッセージは明瞭で、原発建設も大規模油田開発も一つの会社の資力と技術で行うことができるが、ひとたび大事故が起こったらもう1会社の手に負えなくなる。それどころか一国の経済・技術能力させも及ばない可能性があるということです。東京人はいまだに東電に福島原発事故に対処する資力と技術があると信じたいようだが、それは「ダチョウの平和」にすぎない。東電に金を貸している銀行が、破綻されたら融資金が回収できなくなるので、必死で倒産を食いとめようとしているにすぎない。東電は口実を付けては、小出しに国からの援助を引き出そうとしている。みな我々の税金である。


 東電は破綻したら従業員がみな辞めてしまい、福島の処理ができなくなる、と国民をおどしている。そういう脅しと目くらましに引っかかってはいけない。どう見ても、福島は東電の能力を超えている。このままずるずると会社を存続させたら、ちょうど柳条溝事件の処理に誤り、日中戦争の泥沼に引き込まれていったと同様の事態になり、国家が破滅するだろう。ビジネスウィークの記事は、福島事故が一電力会社の能力を超えたものだという認識のもとに書かれている。
 東電を破綻させて、再建を関西電力に委せたらよい。ただし条件がある。交流周波数の統一だ。これがないばかりに、東と西の電力が互いにサポートできない。


 ケタキー、ペイトン、ハンバー3氏の提案は、1966年にNHK・TVで放映された、サンダーバードが登場する「国際救助隊(International Rescue)」を想起させる。あれは21世紀半ばに時代設定されていた。医療、消火、土木などの専門家と機材を載せた超音速ロケット「サンダーバード」が、救援要請があるとただちに地球のどこへでも駆けつける。人形劇だったが、実に迫力があったし、ヒューマニティに溢れていた。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/サンダーバード_(テレビ番組)#.E3.82.B5.E3.83.B3.E3.83.80.E3.83.BC.E3.83.90.E3.83.BC.E3.83.89.E6.A9.9F



 「おがくず」の指摘には笑ってしまった。 1974年9月1日、日本初の原子力商船むつが、青森県大湊(現むつ)港を出港したがたちまち放射能漏れを起こした。むつは推進力を失い、大湊の住民から帰港を拒否され、太平洋上を漂流するハメになった。放射能漏れを防ぐ容易がなく、なんとホウ酸入りの水で米を炊き、おにぎりの壁をつくって放射能を防ごうとした。
 この月の末、私は初めてNIHに留学したが、新聞もテレビもこの話題に充ちていた。「どうしてライス・ボールで放射能が防げるのか?」、「日本は放射能の怖さを十分に知っているはずなのに、どうして事前に十分にチェックしなかったのか?」と質問攻めにあって、ずいぶん恥ずかしい思いをした。
 「むつ」は母港がなく、佐世保入港が決まるまで4年間洋上を漂流した。1991年にわずか10ヶ月の核動力実験航海をおこなっただけで、93年に原子炉は解体撤去されて、廃船となり火力エンジンの実験船「みらい」に生まれ変わった。
 
 「前車の轍(わだち)」とか「他山の石」というが、この国の人は歴史の教訓から学ぶということがないようだ。原爆慰霊碑には「過ちは二度と繰り返しませんから」と書いてあるが、「おにぎり」の次が「おがくず」とは開いた口がふさがらない。


 汚染水浄化装置ALPSからの排液を受けるタンクの排水口を、作業員が置き忘れたゴムマットが塞ぐという初歩的ミスが起こった。
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130929/dst13092916560005-n1.htm
 http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130930mog00m040002000c.html
 高濃度の放射能に汚染されている福島第一原発の現場で作業する労働者は、山谷の日雇いよりも知識も経験も乏しい。なにしろドライバーを右に廻すのか、左に廻すのかが分からないというし、「スパナ」という言葉を知らないそうだ。「高給」という広告に釣られて来たものの、中間業者に中抜きされて日給が1万円にも充たないという。


 労働者の質が低下し、志気も低いのは当たり前だし、単純ミスやポカが多発することは、現場監督がベテランなら十分承知して対策を考えるものだ。
 今回の事件は、手術場で患者の体内にガーゼを置き忘れて腹を締める事件に相当する。手術に際して使用したガーゼの枚数を記録し、回収した汚れたガーゼの枚数が一致することを確認すれば、ガーゼの置き忘れ事故は防げる。ミスは起こっても、システムがしっかりしていれば、医療事故には発展しない。


 それと同じで、東電はタンク内に作業員を入れるにあたり、持ち込んだ機材・道具の種類と数を事前に確認しておらず、出てきた時に各部材とも内部で消費したものを除いて、確実に回収したことを確認しなかった。安全管理の基本であるチェック・システムが作動していなかった。これが根本原因である。作業員のミスに還元してはいけないし、そういう報道をするメディアにも問題がある。このシステムの不備は東電の体質に起因するものであり、これからも何度も繰り返され、事故処理はますます遅延するだろう。
 東電の楽観的計画が一度でも期限内に達成されたことが、この2年半の間にあっただろうか?
 だから東電は破綻させるしかないのである。

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