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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【本について】難波先生より

2014-07-04 14:27:09 | 難波紘二先生
【本について】
 先日、「毎日」日曜日の読書欄「昨日読んだ文庫」で、経済学者伊東光晴がL.メチニコフ「回想の明治維新(岩波文庫,1987)と同「亡命ロシア人の見た明治維新」(講談社学術文庫, 1982)を取り上げていた。訳者はいずれも渡辺雅司。
 困るのは、伊東氏はわざわざ絶版の講談社学術文庫本を挙げながら、岩波文庫版との関係を説明していないことだ。私は幕末・明治期の外国人の日本見聞記は一級の歴史資料と思い、本を集めている。
 岩波文庫の長文の訳者解説を読みなおして、レフ・メチニコフには明治維新を論じた「明治維新論」と回想録「日本における2年間の勤務の想い出」とがあり、前者が講談社学術文庫に、後者が岩波文庫に収められていることがわかった。
 「講談社学術文庫・解説目録2003」を見るとすでに「品切れ」となっており、書誌情報が載っていない。メチニコフの「明治維新論」は150年も前に書かれたもので、その後の研究により時代遅れになっているかも知れないが、フランス革命論など革命直後に書かれた英国のE.バークやフランスのトクヴィルの著作には今でも見るべき点がある。「亡命ロシア人の見た明治維新」はいま古本で1500円の最低値が付いている。ぜひ再版してもらいたいものだ。
 メチニコフというと血球の貪食作用を発見し、「マクロファージ(大食細胞)」という命名を行った弟の動物学者エリが有名だ。彼には「炎症の比較解剖学(メチニコフ・炎症論)」(文光堂)、「近代医学の建設者たち」(岩波文庫)という本もある。彼の人生の要約はド・クライフ「微生物の狩人(2冊本)」(岩波文庫)の第7章で描かれているが、抱腹絶倒のエピソード満載である。ヨーグルトに長寿作用があり、ことに「ブルガリア菌」が有効だと言い始めたのも彼だ。
 幕末から明治10年頃までに思いがけない人物が日本に来ている。ロシアの革命家レフ・メチニコフもそうだが、幕末にはトロイ遺跡発掘で有名なシュリーマンも日本に来ている。

 前にPeter Boxall「1001 Books: You must read before you die」Universe, 2006という本を紹介したが、私が全部の書名をチェックする前に、早くも邦訳が出たのを新聞広告で知った。
 ピーター・ボクスオール編「世界の小説大百科:死ぬまでに読むべき1001冊の本」(彩流社)がそれだ。別宮貞徳の監訳となっているから読みやすいものだろうが、定価が15,750円だ。頁は960ページあり、アート紙でフルカラー。最近は図鑑タイプの豪華本の出版比率が増えてきたように思うがどうだろうか…
 養老孟司がまえ何かに「洋書の欠陥は、読む速度が落ちることと読み終わる前に翻訳が出てしまうことだ」と書いていたが、まさにそうなった。英語の重要性がいわれ、小学校から教えはじめたのに、広島市の大型書店に行っても、大学生協に行っても、洋書がまったく売られていない。あれは一体どういうわけだろうか。

 「産経」に渡部昇一「名著で読む世界史」(扶桑社)の広告が載っていた。13冊の中にヘロドトス「歴史」、カエサル「ガリア戦記」が入っているのは妥当だが、彼の自著「ドイツ参謀本部」(中公文庫)が入っているのには笑った。あれはゲリッツ・ワルター『ドイツ参謀本部興亡史』(学研M文庫)の原書からのパクリだと出て間もなく誰かが指摘していた。塩野七生「ローマ人の物語」を入れているのは、自著を入れたいためだろう。そうでないと目立ってしまう。
 塩野七生も本邦未訳のディオドロスやあまり知られていないポリュビオスから出典を明示しないで適当にパクっている。ローマ史などI.モンタネッリ『ローマの歴史』(中公文庫)の方がよほど傑作だ。

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