ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【下流老人】難波先生より

2015-11-16 15:14:38 | 難波紘二先生
【下流老人】
 「日経」読書欄には、週替わりで本の種類(新書、単行本、漫画など)にベストセラー10点が紹介され、主なものには簡単な説明が付いている。11/1は新書が紹介されており、7位に、藤田孝典「下流老人:一億総老後崩壊の衝撃」 (朝日新書, 2015/6)が入っていた。書店では「週刊東洋経済」8/29号「下流老人」が、特別増刷されてよく売れている。こちらA4版の雑誌だから読みやすい。先日「啓文社」で買って来た。
 藤田の新書やNスペ取材班「老後破産」(新潮社, 2015/7)を読んで、定年後に生活破綻を来して「下流老人」(生活保護が必要なるレベルの生活に陥る)になるのには、共通のパタンがあり、1)定年後も現役時代と同じ収入があるものとして、高額の20〜30年ローンを組む、2)収入(フロー)に応じた生活の縮小ができない、3)そもそもストック(預貯金、有価証券、不動産)が少ない、4)会社人間が定年により社会から切り離されると、「孤独」によるストレスでがん、心臓病、脳出血・脳梗塞など重い病気を発症しやすくなり、いったん病気にかかると、預貯金を使い果たして、「下流老人」に転落するというものだ。すべての場合がそうではない(親の介護などの例もある)が、多いのは本人にとって「想定外の事態」が生じるというケースだ。

 新潮社の書籍広告の「売り文句」で、橋本治の著書「いつまでも若いと思うなよ」を認めた。団塊の世代で東大紛争の時に、「止めてくれるな、おっかさん、背中のイチョウが泣いている」という有名な立て看板の文句を書いた橋本治は、その後、東大国文科を卒業して作家となった。「桃尻娘」シリーズの軽い作品で知られている。
 「売り文句」に「自らの<貧・老・病>を赤裸々に告白」とあったので、さっそくアマゾンから取り寄せて目を通した。なるほど、これは上記の「老後破産」にちかい状況だ。
 1990年、「バブル破裂」直前に、41歳の橋本は新宿西口側の東京都庁に近い築20年のマンションに、30坪の事務所を賃貸していたが、持ち主に勧められて坪単価60万円、1億8000万円で買った。返済計画は1億6000万円を30年払いの月100万円払いのローン、残り2000万円を月50万円払いの4年間ローン。金利が書いてないが、年利7%を超えているだろう。
 「毎月150万円支払う生活を4年、毎月100万円を支払う生活を45歳から70歳まで」続けるという選択をしたわけだ。築30年の中古マンションを30年ローンで買ったら払い終わった時には、コンクリートビルの耐用年限が来て、建て替えが必要になるのに…。
 それに担保なしで1億8000万のローンを組んだので、満期額がそれに相当する生命保険にも入らされ保険料の月額が20万円だったという。どうして購入物件が担保にならなかったのだろう?(銀行はバブル破裂で物件がタダ同然になると、読んでいたのか?)
 で、マンションのオーナーになった彼は、2年任期の管理組合理事になり、理事長まで引き受けるハメに陥る。それと金稼ぎの執筆活動のストレスが溜まり、病気になってしまう。病気の一つは「脊柱管狭窄症」で脚の痛みと歩行障害が出た。
 もう一つは「顕微鏡的多発性血管炎」という難病だ。診断したのは「仕事場の近くある大学病院」とあるだけで、東京女子医大なのか、東京医大なのか、あるいは慶応大病院なのか、わからない。この病気は皮膚に来るので、皮膚生検が必要だが、それをやったかどうかも書いてない。セカンド・オピニオンを求めた気配もない。
 1948年生まれだから70歳までには後3年あるが、ローンの支払いがどうなったか、具体的な経済事情は書いてない。記述に内的整合性がなく、どこまで本当のことを書いているかもわからない。
 まあ、本人が「老い」を淡々と受け容れているので、それはそれでよいだろう。この人の生き方は常に感覚的、刹那主義的だ。
 つまるところ、あまり学ぶところがない本だ。「新潮新書」はいつまで、目次小見出しにページ番号をつけない方針を続けるつもりだろう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【ニトロ舌下錠】難波先生より | トップ | 11月16日(月)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事