8/23(土)は久しぶりに一部青空がのぞいた。
芝生の庭を歩いて、生ゴミ捨て場まで用足しに行ったが、ふと土が浮いているのに気づいた。用を足しながら観察していると、端の地面がモクモクと動いている。「ミミズかな?」と終わって枯れ枝を拾い持ち上げてみると、中から黒いゴミムシが出てきた。拾いあげて転がしてみると、あわてて死んだふりをしている。

(ゴミムシと思ったが、いま写真を見るとエンマムシかもしれない。)
虫の周囲の砂粒が真土の構成成分で、ここは最近、家内が外から土を入れたので腐植土が少ない。掘り起こした土を見ると、スポンジ状である。
「そうか連日の雨で、膨らんだのか…」と思い、試しにゴミ焼き場の周囲の草を抜いてみると、やすやすと抜ける。普段だと引っ張らないといけないのが、つまむようにして抜ける。しかもオオバコなど、普段は苦労して引き抜くと、根に多量の土を抱え込んで抜けてくるのに、土が水で膨張しているから、白い根だけがスポット抜けてきて面白いし、普段の三倍は仕事がはかどる。
そういうわけで、石の炉の周囲の土の草と、勝手口と車庫入り口の間にある、黒いバラスを敷いた通路に生えている、オオバコをあらかた退治してしまった。
まことに「耕すに時あり、蒔くに時あり」である。
真土まで水を含んで、表土が濡れ膨らんで来ると、このように雑草を抜くのは楽になるのだが、一方で懸命の救出活動が続いている、広島市安佐南区八木地区を中心とした土砂災害現場では、ちょっと余分な雨が降れば、新たな土石流による二次災害の危険性が出てくるわけで、ちっとも喜べない。
物理学的にはどちらも同じ現象なのだが、スケールが違うと人間にとっての意味がまったく異なる。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140824ddm001040176000c.html
8/24「毎日」が<土砂災害の危険があるとされる場所が全国最多の3万1987カ所に上るが、測量や植生などの調査を経て警戒区域に指定された場所は1万1834カ所(37%)にとどまる。今回被害が大きかった地域のうち、警戒区域に指定されていたのは、広島市安佐北区の可部地区だけだった。… 警戒区域に指定されると、自治体は避難方法を定めた防災計画の策定を義務づけられ、土砂災害ハザードマップの公表を求められる。開発や不動産売買が制限され資産価値が下がるなど、住民に不利益も出る。自治体は指定に慎重にならざるを得ないのが現状だ。… 一方、国の砂防ダム整備も間に合わなかった。99年の土砂災害を受けて県内西部で整備が決まった28カ所の砂防ダム予定地のうち、八木地区に2カ所が含まれるなど、重要視されていた。にもかかわらず、いまだに一基も完成していない。工事の難しさと予算不足が主な原因といい、中国地方整備局は今後、八木地区を優先的に整備する方針。【稲生陽、小山由宇】>と、
すでに死者50名、不明38名を出した、この土砂災害について背景を報じている。
テーブル岩の下から生えているシダを引き抜いたが、これもスッと抜ける。ここは雨に濡れないから、クモが葉の表に8 x 5mm大の白い卵嚢を造っていた。写真を撮ろうとカメラを近づけたら、あわてて卵嚢に覆い被さった。脚が6本しか見えないが、これは左第2肢、右第4肢が欠損したためであろう。
オニグモの仲間と思われるが、正確な種同定はできない。どなたか専門家のご教示を願いたいものだ。
久しぶりに見る陽光に映えて、真っ白いクモの卵嚢はとても美しい。
このクモの糸は英語のクモ学の本ではsilkとあり、カイコの絹糸と同じようにフィブロインという球状タンパク分子がαらせん構造からβシート構造へと構造変換してできる、と書いてある。
つまりカイコは口から糸を吐きクモは尻から糸を出すが、糸の元になるタンパク質は同じ遺伝子がつくっており、糸を出す腺として発現している体節が異なっているだけである。
で英語ではこの腺を「絹腺(silk gland)」と呼んでいるが、日本のクモ学の本では「糸腺」となっており、カイコとクモで相同な腺であるという視点に乏しい。大崎茂芳『クモの糸のミステリー』(中公新書)にも、クモ学の大御所八木沼健夫を訪ねて話を聞いたら「日本の現状はどちらかといえば分類学的色彩がつよい」という印象を受けたとある。
私もそういう印象を受ける。
ポリペプチド鎖のアミノ酸配列が同じでも、それが正常のアルファらせんによる二次構造を呈する場合と、ベータ・シート構造による二次構造を示す場合では、物理学的な性状がまったく異なる。
狂牛病(海綿状脳症)の病因プリオンは、ベータ・シート構造を持つために、熱にもホルマリンにも耐性があり、生き残って感染性を発揮する。
アルツハイマー病の原因であるベータ・アミロイドは、原因は血中グルコースによる非特異的な糖化(グリコシレーション)ではないかといわれているが、ベータ・シート構造に富むのが特徴である。
クモ糸のタンパクは腺でつくられた時は、アルファらせん構造をしており水溶性だが、長い導管を紡糸器に運ばれる間に、塩素イオン、Naイオンを失い、リン酸基、水素イオンを取り込み、水分を失って、大部分のポリペプチド鎖にアルファ→ベータ(らせん→シート)構造への分子変容が生じる。
クモ糸が弾性に富み、かつ強靱なのは、ペプチド線維の中にらせん構造とシート構造が共存しているためである。クモ糸の炭化温度は400℃だという。これは新聞紙(291℃)、木炭(250~300℃)よりもはるかに発火温度が高い。(『理科年表』)
アルファらせん構造からβシート構造への分子変容が、このように急激に生理的に起こる例は他に知られておらず、クモ糸生成メカニズムの研究はプリオン病やアルツハイマー病の謎を明らかにする上でも参考になると思われる。しかし、比較動物学的な視点を欠いたクモ学独特な用語のために、他分野の研究者が取っつきにくいのは残念だと思う。
今回は、
1.書評=向田邦子「霊長類ヒト科動物図鑑」、
比類ない人間観察の随筆です。
2.「修復腎移植ものがたり」= 第2回「和霊神社」
この部分はフィクションですが、「病腎移植」事件そのものを解釈するためのメタファーとして設定しました。今回の次回の2回でエピソードが構成されます。
3.書き込みを読んで9=
「怖い糖質制限食」というMr.Sさんの書き込み(8/16,18:41)、
Unknown 8/18, 12:27さんの「スワヒリ語/マサイ語」についての書き込み、
など。
4.STAP事件、その後=主として「文藝春秋」「新潮45」9月号の記事から、
以上4つの話題を取り上げました。
芝生の庭を歩いて、生ゴミ捨て場まで用足しに行ったが、ふと土が浮いているのに気づいた。用を足しながら観察していると、端の地面がモクモクと動いている。「ミミズかな?」と終わって枯れ枝を拾い持ち上げてみると、中から黒いゴミムシが出てきた。拾いあげて転がしてみると、あわてて死んだふりをしている。

(ゴミムシと思ったが、いま写真を見るとエンマムシかもしれない。)
虫の周囲の砂粒が真土の構成成分で、ここは最近、家内が外から土を入れたので腐植土が少ない。掘り起こした土を見ると、スポンジ状である。
「そうか連日の雨で、膨らんだのか…」と思い、試しにゴミ焼き場の周囲の草を抜いてみると、やすやすと抜ける。普段だと引っ張らないといけないのが、つまむようにして抜ける。しかもオオバコなど、普段は苦労して引き抜くと、根に多量の土を抱え込んで抜けてくるのに、土が水で膨張しているから、白い根だけがスポット抜けてきて面白いし、普段の三倍は仕事がはかどる。
そういうわけで、石の炉の周囲の土の草と、勝手口と車庫入り口の間にある、黒いバラスを敷いた通路に生えている、オオバコをあらかた退治してしまった。
まことに「耕すに時あり、蒔くに時あり」である。
真土まで水を含んで、表土が濡れ膨らんで来ると、このように雑草を抜くのは楽になるのだが、一方で懸命の救出活動が続いている、広島市安佐南区八木地区を中心とした土砂災害現場では、ちょっと余分な雨が降れば、新たな土石流による二次災害の危険性が出てくるわけで、ちっとも喜べない。
物理学的にはどちらも同じ現象なのだが、スケールが違うと人間にとっての意味がまったく異なる。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140824ddm001040176000c.html
8/24「毎日」が<土砂災害の危険があるとされる場所が全国最多の3万1987カ所に上るが、測量や植生などの調査を経て警戒区域に指定された場所は1万1834カ所(37%)にとどまる。今回被害が大きかった地域のうち、警戒区域に指定されていたのは、広島市安佐北区の可部地区だけだった。… 警戒区域に指定されると、自治体は避難方法を定めた防災計画の策定を義務づけられ、土砂災害ハザードマップの公表を求められる。開発や不動産売買が制限され資産価値が下がるなど、住民に不利益も出る。自治体は指定に慎重にならざるを得ないのが現状だ。… 一方、国の砂防ダム整備も間に合わなかった。99年の土砂災害を受けて県内西部で整備が決まった28カ所の砂防ダム予定地のうち、八木地区に2カ所が含まれるなど、重要視されていた。にもかかわらず、いまだに一基も完成していない。工事の難しさと予算不足が主な原因といい、中国地方整備局は今後、八木地区を優先的に整備する方針。【稲生陽、小山由宇】>と、
すでに死者50名、不明38名を出した、この土砂災害について背景を報じている。
テーブル岩の下から生えているシダを引き抜いたが、これもスッと抜ける。ここは雨に濡れないから、クモが葉の表に8 x 5mm大の白い卵嚢を造っていた。写真を撮ろうとカメラを近づけたら、あわてて卵嚢に覆い被さった。脚が6本しか見えないが、これは左第2肢、右第4肢が欠損したためであろう。

オニグモの仲間と思われるが、正確な種同定はできない。どなたか専門家のご教示を願いたいものだ。
久しぶりに見る陽光に映えて、真っ白いクモの卵嚢はとても美しい。
このクモの糸は英語のクモ学の本ではsilkとあり、カイコの絹糸と同じようにフィブロインという球状タンパク分子がαらせん構造からβシート構造へと構造変換してできる、と書いてある。
つまりカイコは口から糸を吐きクモは尻から糸を出すが、糸の元になるタンパク質は同じ遺伝子がつくっており、糸を出す腺として発現している体節が異なっているだけである。
で英語ではこの腺を「絹腺(silk gland)」と呼んでいるが、日本のクモ学の本では「糸腺」となっており、カイコとクモで相同な腺であるという視点に乏しい。大崎茂芳『クモの糸のミステリー』(中公新書)にも、クモ学の大御所八木沼健夫を訪ねて話を聞いたら「日本の現状はどちらかといえば分類学的色彩がつよい」という印象を受けたとある。
私もそういう印象を受ける。
ポリペプチド鎖のアミノ酸配列が同じでも、それが正常のアルファらせんによる二次構造を呈する場合と、ベータ・シート構造による二次構造を示す場合では、物理学的な性状がまったく異なる。
狂牛病(海綿状脳症)の病因プリオンは、ベータ・シート構造を持つために、熱にもホルマリンにも耐性があり、生き残って感染性を発揮する。
アルツハイマー病の原因であるベータ・アミロイドは、原因は血中グルコースによる非特異的な糖化(グリコシレーション)ではないかといわれているが、ベータ・シート構造に富むのが特徴である。
クモ糸のタンパクは腺でつくられた時は、アルファらせん構造をしており水溶性だが、長い導管を紡糸器に運ばれる間に、塩素イオン、Naイオンを失い、リン酸基、水素イオンを取り込み、水分を失って、大部分のポリペプチド鎖にアルファ→ベータ(らせん→シート)構造への分子変容が生じる。
クモ糸が弾性に富み、かつ強靱なのは、ペプチド線維の中にらせん構造とシート構造が共存しているためである。クモ糸の炭化温度は400℃だという。これは新聞紙(291℃)、木炭(250~300℃)よりもはるかに発火温度が高い。(『理科年表』)
アルファらせん構造からβシート構造への分子変容が、このように急激に生理的に起こる例は他に知られておらず、クモ糸生成メカニズムの研究はプリオン病やアルツハイマー病の謎を明らかにする上でも参考になると思われる。しかし、比較動物学的な視点を欠いたクモ学独特な用語のために、他分野の研究者が取っつきにくいのは残念だと思う。
今回は、
1.書評=向田邦子「霊長類ヒト科動物図鑑」、
比類ない人間観察の随筆です。
2.「修復腎移植ものがたり」= 第2回「和霊神社」
この部分はフィクションですが、「病腎移植」事件そのものを解釈するためのメタファーとして設定しました。今回の次回の2回でエピソードが構成されます。
3.書き込みを読んで9=
「怖い糖質制限食」というMr.Sさんの書き込み(8/16,18:41)、
Unknown 8/18, 12:27さんの「スワヒリ語/マサイ語」についての書き込み、
など。
4.STAP事件、その後=主として「文藝春秋」「新潮45」9月号の記事から、
以上4つの話題を取り上げました。
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