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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【新聞報道など】難波先生より

2016-04-04 15:50:16 | 難波紘二先生
【新聞報道など】
「広島・中3冤罪指導死」事件についての論評をまとめ、新聞の論壇に投稿を試みた。
 地方紙からの反応はゼロ。全国紙ではMとAから拒否された。いずれも理由の説明がない。
 改めて各紙の「投稿欄」を確認すると、メール投稿を受け付けているのはS紙だけだとわかった。M紙などは指定された支局メルアドに投稿すると「デーモン」になって帰ってくる。ここは河内孝:「新聞社:破綻したビジネスモデル」(新潮新書, 2007/3)、幸田泉:「小説・新聞社販売局」(講談社, 2015/9)のモデルになっている新聞社だ。
 新聞社が「IT時代」に完全に取り残されていることを改めた確認した。

 ロンドン在住の相沢和江さんから、3/24付お手紙をいただいた。これも「広島・中3冤罪指導死」事件についての感想・意見だ。その前には2/22付で「マネシツグミ」(「アラバマ物語」の原題)についてのご意見を頂いたが、ご返事が出せないでいる。
 3/11「鹿鳴荘便り」の【広島中3自殺】という記事に対する異論だが、「法の不遡及」の原則について「この生徒が万引きをしたと誤って記録されたのが、中1の時ではなく、中3になってからだとしたらどうでしょう」と設問しておられる。資料としては「産経」のネット記事を2箇所で引用されている。(登録なしで自由に読めるのは「産経WEST」記事だけ)。
 相沢さんは「英国に在住し、人生の大部分をこの国で過ごしてきた者」だとあり、「自分の考えを人前ではっきりと述べる技能・意欲の面で、欧米人に比べ日本人が数段遅れていると感じることがしばしばある」と述べ、「少年が自己の無実をきっぱりと主張しなかったのが、自殺の原因」という主旨の意見を述べておられる。
 事実誤認がいくつかあるので、ここで【事件の概要】を説明する。

 2.事件の概要:事件は新聞報道だけでは要領を得ない。ネット情報や「週刊文春」3/24号等により再構成すると以下のようになる。
 この中学では例年は5月から進路指導が始まるが、この年は「新推薦基準」採用が問題となり7ヶ月も遅れた。同校は15年度に限って「1年時に遡って触法行為のある生徒は推薦しない」という新方針を、3年の学年主任須賀が校長に進言し、坂本校長が11月20日決定したとされる。学校は生徒にも父兄にも変更を周知しないまま、進路指導を開始した。
 その際、3年2組の生徒Aが「1年生の時にコンビニで万引きをした」という無実の理由で、担任篠永教諭から「志望する私立校には、学校として推薦できない」と指導された。Aは12月8日に予定された親・担任との「三者面談」に欠席、自宅で自殺しているのが発見された。
 この「Aの万引き行為」は、実際には同姓の生徒Bによるものが誤記されていたと即日判明した。
 この万引き事件についての記録資料における「生徒違い」は、1年時に学校の教師会議で何度も指摘されていたが、なぜか元データが修正されなかった。誤記録がなぜ生じ、なぜ訂正されなかったのか、その後なぜ修正記録フォルダが作成されたのか、事実関係を学校は公表していない。(少なくとも新聞報道にない。)
 生徒A、Bともに陸上部に所属しており、学年主任須賀は3年1組の担任で、同時に陸上部の顧問であり、万引き事件が起きた2013年には同中学に赴任していた。(つまり万引き生徒がBであることを知っていた?)もしそうなら、生徒Bの親と須賀との「特殊利害関係」なかったのか?
 2015年度の教員会議の議論で「1・2年時」の触法行為が問題になると考えた「進路査定会議」メンバーのD教諭が、11月12日、サーバにあったフォルダから「旧生徒指導資料」を印刷し、学年主任に渡した。サーバには別フォルダ「新指導資料」があり、これには同じ陸上部で実際に1年時に万引きした生徒Bの名前が含まれ、Aの名前はなかった。学年主任は推薦枠からはずれる19人の生徒を選りだし、6人の担任教諭に調査を命じた。(学年主任須賀は、少年Aの無実を知りながら、彼を「万引き犯」とした資料を少年Bの親との特殊利害のために、そのまま配布したのでないか?)
 新推薦基準の決定は11月20日に行われたので、3年2組担任篠永によるAへの正式な聞き取りは3回(11/26頃、12/4、12/7=自殺前日)しかなかった。いずれも廊下での立ち話で、担任によるメモ・生徒Aの釈明記録は残されていない。2組の担任は生徒Aが「万引きをした」と頭から思い込んでおり、「あ、はい」という返答を「万引きを認めた」と誤認し、推薦ができないと指導した。12月8日、生徒Aが自殺すると即日、なぜか「新指導資料」の存在が判明。
 学校は翌9日に「緊急全校集会」を開き、全生徒に「A君が急性心不全で死亡した」と虚偽の発表をした。さらに同月22日になって、校長が「新推薦基準」を撤回。死んだAを除く18名中15名に推薦を出すことにした。この中には1年時に実際に万引きをした生徒Bも含まれた。
(ゲームの途中でルールを変更し、死傷者が出たので旧ルールに戻った、というような話だ…)

 校長は2016年2月29日になって、やっと事件の「調査報告書」を作成した。
 3月7日、府中町教委が「少年Aの自殺」を公表(以後、担任篠永は「体調不良」として欠勤)。2016年度広島県での公立高校入試は、3月7-8日の日程だったので、試験の初日に報道された。
翌8日、学校と町教委が「保護者説明会」を開催。後、初めて記者会見した。

 これで問題は11/12にD教諭が、間違ったフォルダの中にあった「旧指導資料」を印刷配布したことにより発生したという事実関係になります。資料を頭から信じ切っている担任の篠永教諭が、十分な釈明の機会を与えず、生徒Aに一方的な「指導」を行った。絶望したAは「三者面談」を欠席し、自宅で自殺の道を選んだ。これなら非は誤プリントした教師Dと十分な本人陳述を聞かず一方的に「推薦できない」と判定した担任にあることになります。
 私はこういう「ヒューマンエラー」は起こりがちであり、それらの重複があってもシステムとして「フェイル・セーフ」を達成するにはどうしたらよいかを論じています。
 そこで「刑罰不遡及の原則」が貫かれていれば、3年時の11月になって採用された新指導基準が「1年時の非行」まで含めることは不法であり、この新ルールさえ採用されていなければ、A少年の非行について誤記があっても何ら「推薦基準」に問題はなかったはずだと主張しているのです。その場合、誤記は恐らく発見されることなく、資料庫に眠ることになったでしょう。
 この問題を「原理原則の無視」として取り上げないで、「マニュアルの不徹底」として教訓化すると、「指導死事件」(一種の「学校殺人」)は今後も続発するだろう、というのが私の意見です。小学生の時から「Show & Tell」(家庭から重要な品々を持参し、それについてPRする科目)というような授業があり、自己主張の鍛錬をする英米の教育と日本のそれとはまったく異なっているので、英国の事例で日本を批判することは、適切でないと私は思います。
 ①ここは欧米でなく日本であることを意識すること、②両親がつよく要望しておられるように大人(教師)の立場からでなく、「15歳の少年」の立場から事件をとらえること、この2点が事件の真相を解明し、再発を防ぐのに重要な視点となると思います。

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