ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【オカルトNHK】難波先生より

2014-03-26 09:16:32 | 難波紘二先生
【オカルトNHK】
NHK会長の非常識ぶりにもあきれているが、現場はもっとひどい。土曜日のNスペ「超常現象」を見てそう思った。
 出生前記憶だの、前世の記憶だの、テレパシーだの、NHKは気でも狂ったのか?
 「奇跡の詩人」の放映があれほど批判されたのを忘れたのか。(あの時は視聴者のつよい要望にもかかわらず、再放送に応じず、担当ディレクターをどこかに飛ばして、尻尾切りをした。)

 本居宣長の「没後の門人」と称する神憑りの国学者平田篤胤は、前世の記憶のある人とか、誰かの生まれ変わりと称する人物や、「物の怪現象」に興味をもち、著書をいくつか書いている。金を使ってアメリカや英国に取材しなくても、平田篤胤本を検証するところからやってもらいたい。(平田篤胤「仙境異聞, 勝五郎再生記聞」, 岩波文庫, 2000)

 人の意識がニューロンの活動の結果として生まれ、それは神経回路の活動に0.5秒遅れて「意識される」ということは実験的に証明されている。(1985年、B.リベットの実験)
このことは我々の行動の大部分は無意識になされており、意識される行動はほんの一部だということを示している。
 
 普通のMRIは脳にある物質の静的な状態を検出するがfMRI(機能性MRI)は、酸素かブドウ糖を標識して、その消費度合いを検出し脳の活性部位を検出するだけで、意識そのものを見ているのではない。「意識そのもの」は物体に光が当たってできる影のようなものだから、それ自体は原理的に検出できない。この基本的知識が番組作製スタッフに欠けている。

 最後に、「ジョセフソン効果」でノーベル物理学賞(1973)をもらった英国のB.D.ジョセフソンを引っぱり出している。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/ブライアン・ジョゼフソン
 晩年にオカルトにはまった人物なら、ニュートンや「シャーロック・ホームズ」のコナン・ドイルをはじめ英国にはたくさんいる。ジョセフソンもそうだ。彼を引き合いに出すなど、権威主義もよいところだ。

 最大の問題は、脳細胞の電気的活動は実体で、これは脳波計でもfMRIでも捕らえられるが、活動しているのが聴覚領か視覚領かはわかっても、「意識されている」内容は本人にしかわからないということだ。しかも、意識は脳活動に0.5秒遅れて立ち現れる。物質でない「意識」が、どうして物質である脳細胞に作用できるのか?ある行為が意識された時には、すでにその行動は神経回路で開始されている。「意思」により行動が開始されるのではなく、行動により意思が生まれる。
 もし意識が脳細胞の電気的活動から独立して存在するというのなら、今の「脳死理論」が根底からひっくり返るだろう。非物質的存在である「意識」がどうやって他人の脳細胞に電気的に作用し得るのか、そこが一番の問題だが、番組は現象論のみでここを一切問題にしていない。

 日露戦争(1905)後の明治の末期に、催眠術だの「こっくりさん」だのという非科学的迷信が流行し、それに便乗してテレパシーの一種「千里眼」がもてはやされた時期がある。見ていて、ちっとも変わらないと思った。「全聾の作曲家事件」で謝罪し、「STAP細胞事件」では真夜中に「サイエンス・ゼロ」を放映してお茶を濁したくせに、また土曜日のゴールデンタイムにこんなNスペを流すとは一体何ごとだ。

 漱石の「三四郎」で、この国の行く末を心配する三四郎に、先生はこういう。「滅びるね」。
 本当にこの国は自壊するかもしれない。
(追記:日曜日の朝8時、2Ch掲示板を覗いたら、この番組を批判するスレがもうNo.6まで行っていた。8割方がNHKに批判的でほっとした。)
 http://hayabusa2.2ch.net/test/read.cgi/livenhk/1395492902/
 せめてR. ワイズマン「超常現象の科学」(文藝春秋, 2012)をちゃんと読むべきだったろう。
茂木健一郎や竹内勲がもてはやす、R.ペンローズ「ペンローズの<量子脳>理論」(ちくま学芸文庫, 2006)など「科学もどき」にすぎない。
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2 コメント

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Unknown (難波様)
2014-03-27 05:28:00
今回のSTAPで先生の慧眼を知り、糖質制限の医学的背景を教えていただき大変感謝しております。早速ピロリ菌の本3冊を読み、ました。ビフィズス菌ヨーグルトとブルガリアヨーグルトを沢山食べ、LG21,R1を時々食べることで長年のゲップグセが治りました。
霊的体験と宗教的神秘の世界は体験したものしかわからず、非常に多くの”証拠”があっても、多くの人は、見ても見ず、聞いても入らず、になります。知的能力とは関係ありません。
素人考えですが、シュレジンジャー方程式は虚数空間で記述され、多くの物理法則も虚数を使わずには導出できないと思います。ニューロンの電波は虚数空間にも拡がるはずで、これが死後記憶の物理的基礎なのではないかと想像されます。
物理的記述だけが実在とすれば、言語の意味というのは実在しないことになります。何故人間が数学を理解できるのか?自然科学の知見など大海の一滴にしかすぎません。
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自然科学教 (φρξ)
2014-03-26 16:43:40
難波様
 NHKスペシャル、私も夕食の片付けをしながら、少しだけ見ておりました。
 NHKがわざわざ取り上げるところまで、現象として確立されているものなのかを知りませんので、番組の意義についてはコメントする能力がありません。ただ、もうすこし観測(実験)の信頼性に関する情報が欲しいとは思いました。
 私自身は、内部無矛盾性や観測との整合性により検証されて成立してきた自然科学を大変美しいものと感じており、世界が説明できるという意味で”正しい”と思っています。
 一方、自然が人間を離れて存在する、世界はすべて自然界の法則に従って動いているとする、自然科学的世界観について、当然のことながら、人間にはその妥当性を論理的に証明することは出来ません。それゆえ、自然科学的世界観は宗教(哲学)であると思っています。
 難波様が、今回のNHK番組で紹介された現象について観測方法や再現性における疑念をご存じの上で批判されているのでしたら、それについて書いていただければ有り難かったです。そうではなく、これまでに確立された自然科学の知見からあり得ないとのお立場からでしたら、説明出来ない現象について少し鷹揚であられてもよいのではないでしょうか。
 匿名にて失礼致します。ご容赦下さい。
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