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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【干支(えと)】難波先生より

2013-01-22 12:08:54 | 難波紘二先生
【干支(えと)】今年は巳年だ。「巳(み)」と「己(き)」は字を間違いやすい。特に人名に使われている場合、手紙の宛名書きに慎重にならざるをえない。巳の方は、「巳年」、「巳の刻」くらいしか使ったことがないが、己の字は「自己」、「利己」、「克己」など使用頻度がたかい。

 今年は巳年で私は年男。俗に「巳年は金に不自由しない」といわれるが、わが身をふり返り、事実とは相異している。「巳年は実がなる」というのは単純な語呂合わせだが、「金に不自由しない」がどこから来たか気になる。聞いても誰も教えてくれない。

 昔の暦には「歴注」という注釈があったそうだ。それには「干支、吉凶、七曜など」がそれぞれの日に当てられており(「大安吉日」がそれだろう)、その中に「巳・成る・金」と重なる日があったそうだ。これを「実の成る金」と解釈し、この日に金銀銭を紙に包んで使わずにおけば富む、という口承が生まれたのだそうだ。(「広辞苑」の「巳成る金」+「歴注」)
 これが「巳年は金に不自由しない」という伝説の出所。貯金しておけば、金に不自由しないのは当たり前。

 で、南方熊楠『十二支考(全3冊)』(東洋文庫)の「蛇に関する民俗と伝説」を見ると、93ページにわたり、1.名義、2.産地、3.身の大きさ、4.蛇の特質、5.蛇と方術、6.蛇の魅力、7.蛇と財宝、8.異様なる蛇ども、9.蛇の足、10.蛇の変化、11.蛇の効用、と微に入り細に入り詳しく書いてある。たった2頁の「名義」だけで、11冊の本が引用してあるから、全体では約500冊か。数える気にもならない。まあ、現代なら荒俣宏みたいな人だ。

 熊楠は晩年には『アラビアンナイト』の索引作りを始めたという。これは東洋文庫で全19冊あり、さすがの熊楠も索引なしでは憶えきれなかったとみえる。私は「東洋文庫特別展示販売」の時に、大学生協で平凡社の社員に「全巻揃いだね」と確認して12冊をまとめて買ったのに、実は13巻以後が欠本だった。いまだに全巻そろっていない。

 「アラビアンナイト」は王妃シェヘラザードが王様に首を刎ねられないように、毎夜面白い物語を続き物として語るので、王は次が聞きたくて首を刎ねることができない、という構造で、これが千と一夜続く。全体が一続きの物語なのだ。
 このため、話は劇中劇の構造をもっており、メインのストーリーから脇のストーリーへ、さらに枝分かれした物語へと、きわめて複雑に延々と続く。数学でいうと「フラクタル構造」か、入れ子の「ロシア人形」のようになっている。熊楠はこの構造を愛したに違いない。
 しかし私は熊楠の博覧強記を羨ましいとは思わない。あれは些末主義だ。

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