ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【新聞いろいろ】難波先生より

2018-04-10 16:13:23 | 難波紘二先生
【新聞いろいろ】
 3月から読み始めた「朝日」がやっと一月を迎えた。昔この新聞をとっていたのだが、1989年に「沖縄サンゴ礁・KT書き込み」事件が起き、傷つけられた珊瑚の落書きが撮影記者の自作自演と知り、あきれ果てて取るのをやめ、「読売」に変えた記憶がある。
 2014/8の「慰安婦捏造」と「福島第一原発・吉田調書」報道の撤回・謝罪記事の際には、コンビニに朝日と読売を買いに行った。事件は当時の社長辞任にまで発展したが、新体勢でどのように紙面がよくなったのか関心があった。

 4/6(金)の紙面で、よい点をまず上げる。(「天敵」である産経記事と比較する。)
書く記事末尾に執筆記者の名前が記入されるようになった。執筆者名は記事の信用性とかかわるので、これはよい。しかし三面の「河野外相の訪韓、10〜11日で調整」という記事が署名なしで「ソウル」となっているのはいかがなものか。私などは「これは共同通信の記事を使ったのか?」と思ってしまう。

 「編集委員◯◯」と署名に肩書が付いたものがあるが、同姓同名の場合は別として、肩書はなしにしてもらいたいものだ。
 一~四面までに大きい記事なのに無署名のものが三本ある。
「東京五輪 種火まず東北へ」(一面)、「日報問題三つの問題点」(二面)「放送規制の撤廃 与党から慎重論」(四面)がそれだ。外信面(十一面)でもそれが目立つ。
 米西海岸で起きた「ヘリ墜落4人が死亡か」という記事の署名枠がなぜ「ワシントン」となっているのか?他記事の「ソウル」「モスクワ」「ブリュッセル、モスクワ」もなぜ記者の名がないのか?通信社の記事を利用しているからだろうか?
 それなら共同、時事、AFPなど情報の提供元を明記すべきだ。
 私は署名のない記事は「無責任」だと考えるから、まゆにツバをつけて読む。「朝日」も「従軍慰安婦」記事をすべて記者の署名入りでで書いていたら、あそこまで状況が悪化しなかっただろうと思う。
記者の「自己責任」が問われるからだ。

 社説は十二面にあり、しかも六段にわたる長文だからうんざりして読む気がしない。
 社説、コラムに西暦で年月日が印刷されるようになったのはよい。
「産経」は二面に2本の社説を載せている。1本は「キング師暗殺50年、今こそ<夢>を現実にせよ」というタイトルで、三段でコンパクトに、人種差別問題の解消を論じている。
 朝日は社説で取り上げていないが、「キング牧師、分断された夢」というタイトルで紙面1/3の大きさの「カレンダー記事」(日程に合わせた記事)を載せている。1960年代の前半に黒人の公民権運動の高まりをもたらしたのはマルチン・ルーサー・キング牧師だった。彼の有名な演説「私には夢がある( I have a dream)」は当時刊行されていた「朝日ソノラマ」(音声を小型のプラスティック・レコードに録音したもの)に入っており、英語で聴いて涙が出るほど感動した。

 彼が滞在中のテネシー州メンフィスのモーテルで、右派の白人青年により銃で暗殺されたのは、1968年4月4日だった。1975年、米留学中だった私は4月に長期休暇をもらい、ワシントンから南回りで米国一周の家族旅行をした。ミシシッピ川の左岸に面したメンフィス市に着いて、真っ先に行ったのが、キング牧師が暗殺された2階建ての長屋のようなモーテルだった。「この2階バルコニー兼通路のフェンスに向かって、立っているところを狙撃されたのだな」と思った。

 「朝日の」解説報道は不十分で、ネットで調べると、このモーテルは、今は「国立公民権博物館」になっており、モーテルの名前が「ロレイン・モーテル」だったこと、その306号室(キング牧師の滞在した部屋)を中心に元の建物が保存されていると分かった。
http://www.link-usa.jp/us-dictionaly/archives/2008/05/26_203759.html

 「朝日」の書評・読書欄も4月から今までの日曜から土曜日掲載に移行するという。これもよい。「日経」はすでに土曜日に移行している。「産経」は土曜日には編集者推薦の書評などを載せ、日曜日には普通の2ページ書評を載せているが、これも土曜日に一本化してほしいと思う。

<コラム> 「天声人語」も30本以上読んだが、「これはよい!」と切り抜きたくなるようなものがない。
 この日(4/6)の「天声人語」は、相撲の春巡業で舞鶴市長が土俵で昏倒し、観客の2人の女性看護師が心臓マッサージをした事件を、「土俵の女人禁制」の伝統とからめて取り上げている。
 この事件を社会面トップで大きく取り上げているが、問題の市長はクモ膜下出血で昏倒したようで、脳手術により意識回復したという。心臓マッサージが必要となるのはAEDがなく、心停止が続く場合だ。その際には、すでに脈拍も触れなくなっている。新聞報道では脈を測ったとか、無呼吸を確認したとかの情報がない。二人ともとっさに「何とかしたい」と思って、土俵に駈け上がったのであろう。
 私も昔、東京から下りの新幹線のなかで「急病人が出たので、医師の方がおられたら◯号車までおいでください」という車内アナウンスを聞き、しばらく待ったが誰も行かないので、病理学者なのに診に行ったことがある。
 中年の男性で典型的な「てんかん」の大発作で、床に倒れていて全身痙攣があった。乗務員に言ってタオルだったかハンカチだったかを持ってきてもらい、舌を噛まないように上下の顎の間を埋めた。
 乗務員としては最寄り駅に緊急停車の必要があるかどうかが、気になるようだったので、「大発作の後はぐったりしますが、別に異常は起こりません。本人が薬を持たず、飲んでいないようだったら、次の駅でおりて病院に行ってもらうとよいでしょう」と指示した。
 
 土俵に上がった二人の女性看護師の行為に意味があったかどうかは、まず医学的妥当性があったどうかを検証することが先だと思う。もし彼女らの行動が「思い込み」による「早とちり」だったとすれば、「天声人語」も早とちりのそしりを免れないだろう。

 かつて「天声人語」には名文家が広いうんちくを傾けて書いた、読み応えのあるリズム感のある文章が載った。「英和対訳・天声人語」という本まで出たし、大学入試の国語問題にも利用されたが、いまは面影も薄れた。

 「産経抄」は「天声人語」(この題は<上から目線>なので嫌いだ)よりも面白い。東京豊島区に2013年にできた貧困児童対象のNPO法人「子ども食堂」の紹介を、作家・故久世允彦「昭和恋々」から幼少時代の「お袋の味」と彼が演出したテレビドラマ「寺内貫太郎一家」の内容とからめて、独りぼっちの夕食を食べていた子供たちが集まる「子ども食堂」の「一番のごちそうもにぎわいだ。「必要としている子供がいる限り、運営を続けてもらいたい。」とエールを送る。読んでジーンと来る文章だ。
 こういうふうに良い話と好著を紹介してくれるのでありがたい。同時にこれは読者が実際にその本を読み、執筆者の筆に誤りがないかをチェックする「検証可能性」を提示している。それがないコラムはダメだと思う。

 4/6「日経」の「春秋」は「起承転結」のパラグラフが各7行、全28行で、アップルのスティーブ・ジョブズとウォズニアックの二人が初めて発明したのが、電話がタダでかけられる手のひらサイズの違法装置だったという話から始め、「ビカミング・スティーブジョブズ」というネタ本の紹介につなげ、転じてフェイスブックの創業者ザッカーバーグも「大人のつくった秩序を壊し、自由に情報をやりとりしたい」という思いが強かったが、個人情報の流出などの社会問題を引き起こしたと指摘して、結末ではユーチューブ本社での銃撃事件をとりあげ、ベンチャー企業が成熟する過程の問題を「人も企業も、自分らしさを保ちつつ大人になるのは難しい」と締めくくる。
 見事だと思う。
「産経」一面には「朝の詩(うた)」と「夜明けのエッセー」という読者投稿欄があり、ときどきよい詩や読ませる随筆が載っている。「朝日」一面には鷲田清一の「折々のことば」しかない。かつて大岡信「折々のうた」が載っていた欄だ。表題脇に1072という数字があるが、これが連載の回数だろう。「切ないから出てってください」、俳優の竹中直人の随筆集からとあるが、「臨床哲学」を提唱した人物がこの言葉を取り上げた面白さが私にはわからない。


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