【アリストテレスの墓】難波先生より

【アリストテレスの墓】
　「まったく世の中、何がどう結びついているか分からないな…」と思っていると、5/28のCNNが「アリストテレスの墓が、生まれ故郷スタゲイラで発見された」という、にわかには信じられないニュースを報じた。
http://www.cnn.co.jp/fringe/35083366.html
　アリストテレス(BC384-322)はBC326年、アレクサンドロス大王の死後、アテネの学園リュケイオンを弟子にゆずり、エウボイア島のカルキスに引退した。４年後にカルキスで死んだので、墓は当然カルキスにあるとばかり思っていた。
　が、彼の遺言状を読みなおすと、スタゲイラ出身の後妻ヘルピリスに宛てて、「スタゲイラに住みたいなら、かの地にある父祖伝来の土地を与える」と書いており、遺族が墓地をスタゲイラに移したこともありえると知った。

　私は10年ほど前に、スタゲイラの遺跡を訪れたことがある。（地図１）　位置はテサロニケから南に延びるカルキディキ半島（その南端に３本指のよう突出した３つの半島がある）の東岸でエーゲ海に面している。目の前にタソス島が見えた。
　南端にある三本指状の半島の東側がアトス半島で、その突端にギリシア正教の聖地アトス山(2303m)があり、付け根の部分にはペルシア戦争の際にペルシア軍が開いた運河が残っている。
（地図１）
　各種の古代文献を基に自作した地図だが、地図上の「◯スタゲイラ」の位置より少し南に下がったところにオルファノス湾に向けて突出した小さな岬がある。（写真１）
　
（写真１：スタゲイラの遺跡と思われる位置）
　これはその岬を北側から撮影したもので、手前に山があり海岸から階段状の城壁と思われるものが、山頂まで達し、そこは平地になっていて集落があったと思われた。岬の上にも３箇所、古い集落遺跡ある。くの字状に走っている道路は現在の自動車道で、岬の反対側に出て、さらに小さな湾に沿って走り、アトス半島につながっている。
（写真２：スタゲイラの城壁）
　これは道路際から山頂まで続く「城壁」を撮影したもので手前は大きな四角の切石と小さい切石に板状やレンガ状の石を上手く組み合わせている。歩いて上まで登る時間がなかったが、上部の石垣は切石を斜めに組み合わせた構造で、建造時期が違う可能性があるな、と思った。

　CNNの記事は＜墓を発見したと主張しているのはギリシャ人考古学者のコンスタンティノス・シスマニディス氏。１９９０年からスタギラの遺跡を発掘調査し、２４００年前に作られたこの墓がアリストテレスのものだと裏付ける強力な証拠を入手したとしている。＞といしているが、「強力な証拠」について具体的な発表を期待したい。
　もしアリストテレスの墓と確証されれば、残る古代ギリシア最大の謎は「アレクサンドロス大王の墓所」の解明だろう。