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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【ジビエ】難波先生より

2015-12-21 15:04:32 | 難波紘二先生
【ジビエ】
 最近、この言葉をちょくちょく見かけるようになった。音から「地冷え」を連想し、「何だろう?」と思っていた。
 初めて「ふるさと納税」を申し込んだら、さっそく返礼品のカタログが届いて、その中に「ジビエの鹿、イノシシの肉加工品」というのがあった。チーズの代わりに「フロマージュ」というのもある。それでやっとフランス語のGibierのカタカナ音訳とわかった。
 滅多に使わないラルースの「絵入り仏・仏語辞典」を開くと、「Nom generarique des animaux que l’on chassse.」とあった。「人間が狩りをする動物の総称」という意味だ。つまりSauvageソヴァジ(野獣、野蛮人)とほぼ同義である。英語なら後者はサベッジになる。(G.オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫, 1972/2)では、「新世界」から連れてこられた青年の固有名詞として用いられている。)
 ブドウ酒は仏語でヴァン(Vin)、スペイン語とイタリア語でビーノ(Vino)、ギリシア語でオイノス(Oinos)だが、カタログには「ワイン、ワイナリー」が使われていた。今や田舎でも英語、フランス語と言葉が入り乱れている。

 寄付申込の手続きは意外に簡単だった。まず送られてきた振り込み用紙に記入し、郵便局で3万円を振り込んだ。手数料は無料だった。戻って寄付する自治体の担当課(「定住対策課ふるさと納税係」)に電話し、入金が終わったことを告げ、カタログの中の<ジビエ>製品について質問したら「3万円なら3品を送付可能」というので、フロマージュ・セット、しゃぶしゃぶ用豚肉セット、ジビエセット(鹿肉の薫製、イノシシ肉のウィンナー)の3品を希望した。
 ところで、田舎の景観をダメにしているのは、電柱・電線と獣害防止用の柵である。いまや人間が檻の中で生活している。だが国道から農道が分かれていて、入口にドアがないから動物は学習してそこから目的地に入る。(写真1)
 この農道はU字形をしていて南の山際をまわり、写真右側で再び国道につながり、サンサーラ駐車場の右手をへて、我が家へのサービス道につながる。この国道横断地点は、東側が急カーブになっていて、人間の交通事故と鹿・イノシシのはねられ事故の多発地点だ。私は山道を下って右折して国道に合流する時は、左側にも右側にも車がいないことを確認した後、いきなり右折して左車線に入らずに、加速するまで右車線を走ることにしている。
 バックミラーを確認すると左にいないと思っていても、3回に1回は猛スピードで後続車が現れる。こういう手合いは雪が凍結すると、カーブでスリップしてガードレールに激突する口だ。前はガードレールがなく、下の田んぼに突っ込んでいたが、何回かそういう事故がありやっと取り付けられた。

(写真1:自宅南山際の農道から北に国道を望む。)
 休耕田がめだつ両脇の田んぼの柵は途中で切れているから、山から降りてきた鹿やイノシシは、国道を横断してこの農道に入れば、やすやすと田んぼや野菜畑に到達できる。要するに柵は気休めにすぎない。
 正面左手の紅葉した樹の後には小さな丘があり、家が建っている。ここに独居老人が暮らしていたが、数年前に亡くなった。遺産は平屋の住宅と倉庫、それに丘の上を平地にして開拓した自宅前の野菜畑だろう。彼の一生はこの丘の上に自分の城(砦)を築くことに費やされたと思う。
 息子が二人いるが、いずれも家に寄りつかなかった。それでも30キロほど離れた町に住む息子のひとりが、土日にやってきて伸びた樹木の伐採や柵の設置などをする物音がしていた。ところが税制が変わり、空き家に課税されるようになると、借りてのない家は取り壊されることになったようだ。税制変更のせいか、最近空き家の取り壊しが目につくようになった。

 話がそれたが、獣害を防ぐには受け身の「防御柵」設置では原理的に無理で、狩猟と罠猟をさかんにして、イノシシと鹿の個体数を減らすのが一番だと主張してきた。マスカン・ハムの舛井さんにもそういう手紙を送った。期せずして「ジビエの食糧・商品化」を唱えていたわけだ。(回想録、舛井寛一「八十八(やそはち)からの伝言」文芸出版, 2014/3, 私家版は被差別に生まれた少年が、被爆して焼け野原の中から父と協力して食肉加工会社を発展させ、県猟友会長、広島ペンクラブ会長などを勤めた88年の人生を率直に語った、感動的な記録だ。)

 私は20年前ここに越してきた時、「鹿とイノシシの獣害は将来かならず大問題となる」と気づき、周辺の地形を調査後に、罠で捕獲した鹿を広い牧場で飼い、同時に観光農場として、鹿に餌をやるアトラクションで観客が来るような構想を立てた。
 三方を山に囲まれた原野があり、すぐ側には溜池もあり、水には不自由がない。おまけにこの「県民の森」公園から平地まで舗装林道がつながっている。ここは「鹿牧場に最高の立地だ」と確信して、本気で「観光・食肉用鹿牧場」を提案したが、当時は「鳥獣保護法」の規制が厳しく「株式会社設立案」に賛成してくれる地元民はいなかった。田舎では「今日は明日に続く」と皆思っていて、20年後のことなど誰も本気にしない。

 12/16「中国」の報道によると、2013年末に広島県には5万7800頭の野生鹿がいて、中国五県全体の2012年度の食害額は1億3200万円だという。(この記事に足りないのは、広島県の被害額が書いてないことだ。記者とデスクは何をやっているのか。)
 これを20年前にやっていれば、田舎の景観台なしという事態は防げた。広島県は2013年度までに、鹿の生息数を半減させるという。結構なことだが、多額の費用を使って(永久貸与で)農家に鉄柵を張り巡らさせたあげく、今度はそれを撤去する仕事が増えるだけのことになった。
 基本的には県知事も担当部局の役人も、現地をまったく視察しない点に問題がある。新潟県の道路は国道から県道・町道が直角に分岐はしない。車の速度にあわせて、無理なく左折・右折ができるように交差点にカーブをもたせてある。あれは田中角栄が、どぶ板選挙で自分の選挙区だけでなく、広く県内を回ったからである。同様に山口県の道路も立派だ。あれも県知事が県内の道路を自ら全部走破したからだ。
 広島県にもそういう自治体の長が必要だ。
 鹿とイノシシの問題は、基本的には「ジビエ産業」を活性化させ、害獣を珍味として食ってしまうことだ。私の「ふるさと納税」にはそれを支援する意味もある。「返礼品」が届いたら、「果実酒用焼酎の梅昆布茶入りお湯割り」を手にして、鹿肉の薫製とイノシシのウィンナーを味わってみたい。
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